アイマス鬼談百景「向かいの窓」

どうもっす、天ヶ瀬冬馬です

あまりこういう話をしたことはねぇっすけどプロデューサーが俺たちJupiterの事を知らない読者に名前を覚えてもらうイイ機会だからって参加させてもらいました

普段通りのしゃべりでいい?

そうっすか、なら遠慮なく


中学生の時の話だ

俺の通ってた学校にも例に漏れず                  "七不思議"ってのがあって

たまに女子たちが話題にしてたり、新聞部が記事を書いたりしてた

まぁよくある噂話だよ


でだ、男子ってのはバカなこと考えるだろ?

ある日、クラスのN(仮名)ってヤツが七不思議を使って度胸試しをしようって言い出しやがった

俺はそういうオカルトは信じてなかったし   そんなので男らしさを計るなんてくだらねぇって、断ったんだ


そしたらあのヤロウ

冬馬は怖いからやめるのかって俺を煽りやがった

そんな事を言われたら誰だって退けなくなる

だろ?


結局、Nと俺にクラスの男子3人が加わって

七不思議を全部試していくことになった


まぁ案の定というか拍子抜けというか

七不思議はどれも勘違いに尾ひれが付きまくったようなものばかりだったぜ


音楽室でベートーベンが泣いた、ってのは   ただの空調の水滴だったり


笑う人体模型ってのに至っては                       近くをトラックが走る振動で音を立ててただけの下らないオチだった

他のも全然大したことは無くて今じゃどんな噂だったのかすら覚えてねえ


そんな調子だったから6番目の不思議を試した頃には俺たちのテンションは下がりまくってて

さっさと切り上げてサッカーでもしようぜ   なんて話してた


そしてやってきた最後の不思議

それは新校舎の3階の一番北側の廊下だった

俺たちの学校は新校舎と旧校舎に別れていたんだが

新校舎の廊下の窓から旧校舎3階の窓にいる人と手を振りあっても何故か絶対にタイミングが合わなくなるらしい

というのが7番目の不思議の内容だった

俺たちが廊下についた頃、ちょうど旧校舎の廊下に人影が見えたので俺たちの内の一人が

「おーい!こっちに手を振ってくれー!」

と向かい側のヤツに声をかけてブンブン手を振った

向こうからしたら変な連中に写ったろうな

ソイツはすんなり手を振り返してくれたよ


だが、合わない

どちらも手の振り幅が大して変わってる訳でもないのに

どちらかが先走ったり、逆についていけなかったりする

妙な光景だった 

科学の授業で見た振り子みたいだった

そのうちにヘタクソ、とか、わざとやってるんじゃねーよ、とかヤジが飛んで

皆で交代で試すことになったが結果は変わらなかった

俺も手を振ってみたよ

だが、どんなに相手の動きをよく見て合わせようとしても

グニャリと腕が歪んでいるのかのようにタイミングがずれちまう

だんだん気持ちが悪くなってきて

誰も口には出さなかったが皆その場から離れたがってた

そんな時、Nが大きくヒラリと手を振ってみた

すると、その一振りには相手の手が綺麗に重なった

「なんだよ、普通に合うじゃん」

Nはカラカラと威勢よく声をあげて笑い        手を振り続けた

その間、ずっと手のタイミングは合ったままだった

それを見て皆ほっとしたのか

なんだよやっぱり偶然かよ、とか                   向かいのヤツが怖がらせようとしてたんじゃねーか、とか

それまでの嫌な空気が嘘みたいに笑いあってた


でも、やっぱり変だったんだぜ

Nのヤツはかなり激しく手を振り回してたのに向かいのアイツのタイミングは鏡みたいに完璧だった

それにアイツの顔、まるで仲間を見つけたみたいな嬉しそうな笑顔だったよ

それが顔に張り付いてピクリともしなかった



その2週間後、Nは学校に来なくなって

先生から転校したと聞かされた

理由は聞けなかった

                                         〜 向かいの窓 了 〜




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?