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自然豊かな島が核ゴミの最終処分場に?狙いはお金?

香苗:絵馬、対馬って行ったことある?

絵馬:ない!でも行ってみたいと思ってた。友達が旅行して、お魚がとっても美味しくて人もとってもあたたかかったと言って、お勧めしてもらったことがある!

香苗:こんな場所よ。美しいよね。

香苗:日本の離島って自然豊かで人の温もりもあって、それぞれの特性もあって、とっても素敵だよね。その対馬に、仲良い友達が住んでるんだけどさ、この間久しぶりに話す機会があって色々聞いてみたら、対馬が「核ゴミの最終処分場」の話で大きく揺れてるんだって。

絵馬:最終処分・・・?なになに?

香苗:原子力発電をすると核のごみが出るでしょ?それを長期間、安全に保管して処理する場所のことを、最終処分場っていうらしいの。核ゴミを固体にしてガラスなどの材料に封じ込める方法とかがあるみたい。

絵馬:ほうほう。それが対馬とどう関係するって?

香苗:NUMO(ニューモ)っていう、国から委託を受けて最終処分事業をやっている組織(※)があるのね。そのNUMOが、核ゴミの最終処分場の場所を探していて、対馬もその候補地の一つなんだって。友達は、そのことについてすごく不安を感じていて・・・

(※)原子力発電環境整備機構(Nuclear Waste Management Organization of Japan)。略称NUMO(ニューモ)。https://www.numo.or.jp/

絵馬:核のゴミって言われると初めて聞いてもネガティブな印象しかないけど、ちなみにそのお友達はどういうことを言ってたの?

香苗:まず、安全性への不安があると。核ゴミってなんと10万年間も保存しなければいけないんだって!先すぎて気が遠くなるわ。そして何かあった時にこの長期的な責任を誰が持つのか、不透明な部分があるんだって。

絵馬:自分が住んでいる土地だと考えたら、自分の世代だけでなく、子供や孫やその先も大丈夫?って思ってしまうね。あと、対馬って自然が美しいイメージがあったから、対馬のブランドとか自然との共存とか、島の価値が低下するんじゃないかなと、思った。

香苗:まさにそうなの。対馬は自然環境が美しく、観光地としても有名。そこに核ゴミ最終処分場ができるかも、という話が出てきただけで、既に、「おたくの米は買いません」と言われている農家さんとかももう出てきているって話。

絵馬:風評被害もいいとこ!

香苗:そして何より友達が心配してたのは、「分断」が生まれ始めていること。賛成派と反対派で意見が対立していて、対立がエスカレートすることをすごく心配してた。賛成派も反対派も、それぞれの立場で対馬のことを思って意見を決めているらしい。そんななか、実際に、「あの店は賛成派だから行かない」というような話も聞くとか。

絵馬:何も争いがなかったところにこういう問題が来て、分断が生まれるのか… しかもお互い対馬のことを考えてなのか… とても悲しいことだね…
ちょっと待って。同じような分断の問題が北海道でも起きてるんだけど!

『最大のねらいは、調査で得られる「交付金」です。国は、文献調査を受け入れれば最大20億円、概要調査に進めばさらに70億円を交付することにしています。次の段階に進まなくても返還の必要はありません。』
『片岡町長が反対の声を押し切ってでも応募に踏み切ったのには、町の厳しい現実があります。寿都町の主力産業、漁業は年々水揚げが減少。20年前、4,000人だった人口は2,800人まで減りました。自治体として、全国で初めて導入した風力発電。年間4億円の収益を生んできましたが、2年後には国の優遇制度が終わり、大きく減ることになります。片岡町長は、交付金で町が潤えば住民の理解も進むと考えていました。

“核のごみ”と住民の分断~私たちに問いかけるのは~」NHKクローズアップ現代 2021年12月2日(木)より

香苗:わ、ほんとだ!対馬でも、まずはNUMOは調査を始めたいらしい。自治体の許可がないと調査はできないらしいけど、友達によるとNUMOの人が現地にやってきて理解を求める説明会やチラシ配りをしたり、さらには地元の議員さんや一般の人を青森の六ヶ所村(※)に視察に無料で招待もしていて、かなり積極的に動いているんだって。
(※)使用済み核燃料の再処理工場の建設地

絵馬: 無料の視察旅行に、返さなくていい20億円。お金あるねえ…どこからお金出てるの?

香苗:NUMOのウェブサイトによると・・・げっ!市民の電気料金じゃん!

『最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所等の運転実績に応じた金額を、毎年、拠出金という形で、電力会社等からNUMOへ納付されています。この拠出金については、電力会社を通じて、電気料金の一部として、お客さまにご負担いただいています。拠出金の納付は、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が施行された2000年度より開始されました。2022年度の拠出金額は、366億円、累計で11,567億円となっています。』

原子力発電環境整備機構(NUMO)Webサイト「拠出金」より


絵馬:わ・・・本当だ・・・。視察旅行とか手厚い対応を受けてしまうと客観的な判断が難しくなったりすると思うけど、実際どうなんだろう。

香苗:実際視察に行った人は、NUMOと最終処理場計画に良いイメージを持って帰ってくるって。議会には賛成派が多く、議会を通過する見込みだとか。最終決定者は市長らしいけど。対馬の市民は反対派もNUMOの説明会に参加してて、友人も質問したりしているらしいけど、いい話はしっかりしてくれるけど、悪い話ははぐらかされることが多かったって言って悲しんでた。

絵馬:NUMOの幹部の方は、経済産業省の方と、学者さんと、元電力会社の方々だね。

(出典:原子力発電環境整備機構(NUMO)Webサイト「組織情報」(役員)https://www.numo.or.jp/about_numo/soshiki/index.html)

絵馬:電力会社が市民から集めたお金について、国や電力会社関係の方が使い道を決めて、それで市民の意見が揺らいだり、分断が起きてるんだ。さらに文献調査だけやってお金だけもらってプイッと無視するなんて、日本人の感覚だとやりづらいよね。

香苗:そんななか、お金をもらうことだけが対馬の未来を救う道ではないし、唯一無二の魅力をもとに対馬を立て直すビジョンを描こうと、若い人たちが動いているみたい。

絵馬:それいいね!この話って、日本の地方で起きていることの縮図のような気がする。実際北海道で2021年に既に起きていたことと全く同じ問題が対馬に2年遅れて起こっている訳だし。わたしたちが拠出した税金やその他のお金がどう使われているか。長い歴史でなにが大事にされてきたのか、これからの長い未来で何を守っていくべきなのかを、本気で考えて、責任を持った選択ができているか。地方ごとに問題は違っても、このあたりは共通しているよね。

香苗:そう思う。自分の住む土地や地元の問題にちゃんと興味を持って動かないと、自分達の生活も、納めたお金の使われ方も、そして未来も、知らない間に決まってしまう。それって怖いね。

絵馬:何事も「明日は我が身」。友達の話から大事なことを学んだよ。教えてくれてありがとう香苗!そのお友達のために何かできることがあったら教えてね!


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