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ギアレシオアプローチ

走行力学-1

クロスレシオの考え方を変える
ギアレシオアプローチ

チューニングメニューのひとつにギアレシオを変更するというものがある。
では、ギアレシオとは何か。そのチューニングとは何か。
それは効果があるのか。と、いうことを追いかけてみたい。

ギアレシオのおさらい

ギアレシオとは、ミッションのギアやデファレンシャル(デフ)のギアが噛み合わされるギアの比率(ギア比)のこと。たとえば、一次減速比(ギアレシオ)が3.0の場合、エンジン回転数が6,000rpmであれば、ミッションには2,000rpmでつたえられ、二次減速比が2.0の場合、タイヤに1,000rpmで伝えられるということになる。
 一次減速比とはクランクシャフトの回転をミッションに伝える際の減速比で、二次減速比とはデフから駆動輪に伝えられる回転数となる。
 ミッションは、インプットシャフトとアウトプットシャフトの回転数の差でスピードを変える、または、エンジンを低回転化して速度を維持するわけだが、これらのシャフトに歯数の異なるギアがあり、その噛み合わせで回転数を変えるというわけだ。よく「4速直結」などという言葉を聞くことがあるが、これは、インプットシャフトとアウトプットシャフトが同じ歯数のギアということを差している。つまり、一次減速で減速された回転数がミッションの出口の回転数という状態のことだ。
 このギアレシオと並んで使われる言葉に「ファイナル」というものがある。これは、ミッション内のギアのことではなく、デファレンシャル(デフ)の中のギア比のこととなる。
 FR車を例に簡単に述べると(FF車でもRR車でもプロペラシャフトの有無はあるが同じ考え方)、ミッションから伝えられる回転数は、プロペラシャフトを経由してピニオンギアに伝えられ、さらに、リングギアによる最後の減速を経てドライブシャフトへと伝えられる。
 このピニオンギアとリングギアは、ミッションのインプットシャフトとアウトプットシャフトと同様に、入側と出側を担っているわけだ。したがって、ピニオンギアとリングギアのギアセットが文字通り「ファイナル」ギアということになる。ギアレシオチューニングのほとんどの場合が、このファイナルのギアレシオ変更を指している。
 前述の計算を用いてみよう。仮にファイナルギアを5.0、つまり、ピニオンギア10枚、リングギア50枚の歯を持つギアとする。一次減速によって設定された2,000rpmは、ファイナルによる二次減速を経て400rpmで、ドライブシャフトへ伝えられ、その回転数でタイヤが回るということになるわけだ。
 一般的にギアレシオチューンをファイナルで行うのは、ミッションコストよりデフ内のギアコストの方が低いと言うことにある。
 ファイナルギアレシオの変更メリットは、コストだけでなく、ミッションギアのどのギアを使用するのかを指定することができ、コースやエンジンに合わせた設定が可能となるということがある。
 ここで忘れてはならないのはタイヤの存在だ。この外径もまたギア比と同様に働くので、メカニカル的なギア比変更よりタイヤ外径の変更を優先する場合ことも考慮したい。ただし、本稿ではタイヤまで含めると複雑になるので、ギアについてのみ考えることとする。

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