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ブルースに追いつかれた日(さらば)

今、とりあえず落ち着こうと 僕は 
ハラも減ってないのにカレーを口にかき込んだ
心臓がずっと バクバクいってる
味がわかんない
気が付けば皿はカラッポだった

(水を渡しながら) 「あのー、ダイジョウブですか?」
ウン、ありがと、ありがと、オホン、

エー まず こないだGIGが、あったンだよね
新宿紅布

ぼくらは “いつもどおり” ロック・ショウを、やった
間違いなく「毛皮のマリーズ」のショウを、やってのけた
そして いつも観ててくれてるネモトさんが終演後 こう言った
「うーん 今日は60点だナー」
そしてまた いつも観ててくれてる紅布のモモちゃんはこう言った
「今日はベストライブじゃないの!? メチャクチャよかったョ」

気付かぬうちに
僕らは確実に ブルースに追いつかれてしまっていた
予想通りなんて まっぴらだ
毛皮のマリーズって知ってる?
僕はそんなもの知りたくもない
自分は知ってるってコトは 限界ってコトだからだ
たとえば 神様が僕にくれたプレゼントだ、毛皮ズは
僕の人生に用意された プレゼント
でも 包装紙の間から 中身がわかっちゃったから
もういらないよ そんなプレゼントは
つまんない もっとドキドキさせてくれョ
今まで僕らは 誰からも相手にされなかったから
自分達がどれくらいのバンドなのか知らなかった
比べる対象は ストーンズやフーだった
僕らストーンズとやれるかな? フーの後のステージで演奏できるかな?って
上だけ見てた
ひたすら ブルースに追いつかれないように

そして去年の冬あたりから 僕らの状況が変化しだす
たくさんの出会い
リリースが決定 友達が増えて お客さんも増えた
イベントの誘いが増え その筋では有名なバンドとたくさん共演した
僕らは前を見るようになった
気付けば背中には ブルースがベッタリ張り付いてた

よお ブルース ひさしぶりだナ?
ちっとも変わってねえじゃねえか
俺はもう二度と お前に会うことはねえと 思ってたゼ
ちくしょう
だけどな
昔みたいに 俺はナッシング・トゥ・ルーズじゃねえ
守るものが出来たンだョ
世界一のメンバーと フアンのみんなと
ホンモノのロックンロール

あの頃お前は 僕によくこう言った
「ソレは本当にお前が歌わなきゃいけない歌か?」
「お前の好きなキース・ナントカやナニガシ・ヒロトでいいじゃねえか」
ってな
黙れってンだ コレは俺 “たち” だけのソングだ
お前におあつらえ向きの曲を作ったよ

「嘘じゃない 俺が見たのは決して幻なんかじゃない
笑いたいならケッコー 今すぐ出ていけ」

そして これから (お前そっくりな顔で) 死ぬまでこの歌を歌ってやる
「I can't get No satisfuction 何をやってもつまんねーんだもん」
卒業式を目前に退学届け提出
僕は毛皮のマリーズなんか知らねぇ
飽きる予感は 飽きたのと一緒だ
この数ヶ月間 とても幸せでした
生まれて初めて ブルースから離れられた
LOVEに満ち溢れていた
どうもありがとう
涙が出てきました
僕はまた ブルースマンに戻ります

ビクビクしながら イライラしながら
毎日を うろつきます
……コレを読んで 「すわ 解散か? 活動休止か?」なんて思ってるチミ
ちゃんちゃらオカシイよ
毛皮のマリーズはな、 ロックンロールはな、
俺にとっちゃ呼吸や鼓動みたいなもんだ
24時間体制で ブルースが見張ってるのに
休めるワケがないだろ
俺はブルースも道連れに
毛皮のマリーズを誰も知らない領域まで引っ張り上げる
そんで もう一度
幸せだと心底から叫んでやる
ふざけんじゃねえ
俺は最高だ そうだろう?

(2006年6月6日)
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