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腐れ外道の城3-2

「そうだ!本田はこの平野を治める領主を次々に変えておる。十兵衛様の前の領主も領主に付き、七年ほどで突如べつの土地へ22BB移らされた、我が井藤家も平野に移り五年、唐突に土地替えを命じられた。本田は平野に何か長居させたくない訳があるに違いない!」
 それまで広間をグルグルと歩き回っていた井藤十兵衛の足がピタリと止まった。
「儂は・・・儂は降伏などせぬぞ」
十兵衛は何かを決心したように、深く息を吐き、言葉を続けた。
「我等には、清親様がおる・・・清親様は、いざとなれば、我等の後ろ盾になって下さるといっておる」
 「清親(きよちか)」とは、本田清親のことであり、樋野をい治める本田家の分家に当たり、井藤十兵衛が平野の領主を命じられる前から、分家の本田家とは親しく、平野の土地も僅かに、分家の本田の領地と接している為、頻繁に交流している。
 なので、十兵衛はこの度の決起を計る前から、本田清親と書状のやりとりをしており、後詰め、つまり井藤家が平野城に籠城した場合、援軍を出すと約束を交わしていたのである。
 しかし、そのような事情など、この場に集まっている重臣達は知っている上で、不安を隠しきれずいるのだ。
 何故重臣達が、清親との約束に対し不安視しているのか、その後の会話に如実に表れたいる。
「清親様清親様と申されますが、あの御方が我等をどれほど重きにおいておるか、私はいささか疑問ですな」
「確かに、本田清親は信用にたる人物ではない、ですが、後詰めの約束を交わした書面を見るに、清親は分家で収まっておるのに嫌気がさしておるようだ、さすれば。此度の我等の動き、清親は、本田の本家を奪う好機と考えておるに相違なかろう」
「否!本田清親は後詰めとは言っておらん!後ろ盾になると申しておるのだ、つまり、悪いようにはせぬから戦うだけ戦えと、戦の成り行きを見て、自らはどちらへでも転べるように高みの見物を決め込んでおるのだ」
「先ほど、清親の本家への不満を利用すると申したが、あの男そのような甘い男なのか?我等が清親の思うように利用されておるのではないのか?」
「わしもそう思う、実際に清親は我等が砦を築き、本田家に背いた時から今まで、何の動きも見せておらぬではないか!」


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