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<論文>キノロンと大動脈瘤/解離

Association of Fluoroquinolones With the Risk of Aortic Aneurysm or Aortic Dissection
JAMA Intern Med. 2020 Sep 8.
doi: 10.1001/jamainternmed.2020.4199.

重要性
これまでの観察研究では、フルオロキノロンが大動脈瘤または大動脈解離と関連していることが示唆されているが、これらの研究では、適応やサーベイランスのバイアスによる交絡が生じている可能性がある。

目的
フルオロキノロンと大動脈瘤または大動脈解離(AA/AD)のリスクとの関連を評価するとともに、フルオロキノロンの適応による交絡の可能性や、サーベイランスの差によるバイアスを考慮に入れること。

デザイン、設定、参加者
米国の処方箋データベースを使用した観察コホート研究において、2つの組み合わせの1:1の傾向スコアマッチしたコホートを同定した:フルオロキノロンまたはアジスロマイシンによる治療を開始する3日前までに肺炎と診断された50歳以上の患者と、フルオロキノロンまたはトリメトプリム・スルファメトキサゾールを開始する3日前までに尿路感染症(UTI)と診断された50歳以上の患者。ハザード比(HR)と95%CIは85個のベースライン交絡因子をコントロールして推定された。二次解析では、フルオロキノロンとアモキシシリンを比較し、ベースラインの大動脈画像を考慮した場合と考慮しなかった場合の両方で、抗菌薬使用前のAA/ADの検出の違いを検討した。2003年1月1日から2015年9月30日までのデータベース内の患者のデータを解析した。データ解析は2019年7月23日から2020年7月6日まで実施した。

主要評価項目
治療開始後60日以内に発生したAA/ADによる入院。

結果
傾向スコアのマッチ後、患者の特徴は、肺炎コホートでは279,554人(平均[SD]年齢63.66[10.93]歳;女性149,976人[53.6%])、UTIコホートでは948,364人(平均[SD]年齢62.06[10.33]歳;女性823,667人[86.9%])でバランスが取れていた。フルオロキノロン(肺炎コホートではn=139,772組、UTIコホートではn=474,182組)は、アジスロマイシンと比較してAA/ADの発生率が高かった(HR 2.57;95%CI 1.36-4.86;発生率0.03%)が、トリメトプリム・スルファメトキサゾールと比較してAA/ADの発生率は増加しなかった(HR 0.99;95%CI 0.62-1.57;発生率 両群とも0.01%未満)。アモキシシリンを比較対象とした二次解析(n=3,976,162組)では、先行研究と一致する結果が得られた(HR 1.54;95%CI 1.33-1.79;発生率 両群とも<0.01%)。このコホート(n=542,649組)では、サーベイランスバイアスを考慮してベースラインのCTを必須とすると発生率が減少した(HR 1.13;95%CI 0.96-1.33;発生率 フルオロキノロン0.06%, アモキシシリン0.05%)。

結論と関連性
肺炎または尿路感染症の成人を対象としたこの全国規模のコホート研究の結果から、肺炎コホートではフルオロキノロンに関連したAA/ADの相対発生率が増加しているが、尿路感染症コホートでは増加しないことが示唆された。両コホートでは、AA/ADの絶対発生率は低かった(0.1%未満)。肺炎コホートで観察された相対発生率の上昇は、残留交絡因子またはサーベイランスバイアスによるものかもしれない。


<感想>
キノロンを使うような患者は,画像診断を受ける可能性が高い,大動脈疾患のリスクとなるような合併症を持っている可能性がある,などによりバイアスがかかるかもしれないというのは確かになという感じです。ただ,他にもキノロンの不都合はあるわけで,いずれにしても安易な処方は慎むべきだとは思います。なお,一応COIも見てみましたが関係のある企業はなさそうな感じでした。



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