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<論文>市中肺炎のマネジメント(GW2020)

Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America
Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67.
doi: 10.1164/rccm.201908-1581ST.

今年もNEJMのJournal WatchからGuideline Watch 2020が出てました。

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今回はその中の市中肺炎ガイドラインのまとめです。

背景と目的
2007年の市中肺炎(CAP)ガイドラインの本アップデートでは、よりエビデンスに基づいたアプローチを採用し、初期診断から治療、フォローアップまでを対象とした16の管理質問が含まれている。

キーとなる推奨
<変更のない推奨事項>
・重症または疫学的危険因子のある患者にのみ、レジオネラおよび肺炎球菌の尿中抗原検査を実施する。
・誤嚥性肺炎で嫌気性菌カバーはルーチンに行わない。
・インフルエンザシーズンにはインフルエンザの検査と治療を行う。
<新ガイドラインでの追加事項>
・抗菌薬治療が5~7日を超えていない限り、画像上CAPと確定された患者の抗菌薬治療の開始または期間決定のために血清プロカルシトニンを使用してはならない。
・難治性の敗血症性ショックを併発している患者を除き、ルーチンでコルチコステロイドを投与してはならない。

変更点
・重症患者の喀痰培養と血液培養の採取に関する推奨事項が拡大され、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)または緑膿菌の経験的治療を受けている入院患者も含まれるようになった。
・アモキシシリンは健康な外来成人のための第一選択薬として追加された。マクロライド単剤は地域の肺炎球菌耐性が25%未満の外来患者に限定されるようになった。
・医療関連肺炎(HCAP)の概念が撤廃された。
・MRSAまたは緑膿菌に対する経験的治療は、地域で既知の危険因子がある場合にのみ推奨される。地域のデータが入手できない場合は、そのカバーを開始する前に、血液培養と喀痰培養を行い、治療継続の必要性を判断する必要がある。重症CAPに対しては、β-ラクタム薬とマクロライドの併用が、β-ラクタム薬とレスピラトリーキノロンの併用よりも望ましい。

コメント
著者らが指摘しているように、2007年のガイドラインでは、HCAP患者におけるMRSAおよび緑膿菌をルーチンに治療対象とすることが推奨されていたため、バンコマイシンや抗緑膿菌β-ラクタム薬の使用が著しく増加したが、臨床的には目立った利益は得られなかった。したがって、最も重要な変更点は、これらの病原体を治療すべき患者層を大幅に絞り込むことである。このガイドラインは、FDAによる最近の懸念を踏まえて、フルオロキノロン使用の問題を未解決のままにしており、CAPにますます関与しているインフルエンザ以外のウイルスの検査や管理については触れていない。


<感想>
ルーチンの尿中抗原検査(レジオネラは新しい検査が出ましたが),ルーチンの嫌気性菌カバー,安易なキノロン投与などは日本でも注意しないといけなと思います。



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