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<論文>抗菌薬アレルギーの誤った記録

Inappropriate Antibiotic Allergy Documentation in Health Records: A Qualitative Study on Family Physicians’ and Pharmacists’ Experiences
Ann Fam Med. 2020 Jul; 18(4): 326–333.
doi: 10.1370/afm.2537

目的
患者のカルテ等に記載されている抗菌薬アレルギーの90%は、実際は、IgEによって媒介される生命を脅かす可能性のあるI型アレルギーではないという仮説が立てられている。薬剤アレルギーと区別されるかどうかは、第二選択薬や広域抗菌薬が使用されることにより薬剤耐性を高めるため重要である。このような不適切な文書化の原因についてはエビデンスが不足している。文書化を改善することを目的とした介入を開発するために、我々はこの分野における家庭医および薬剤師の経験を調査した。

方法
我々は、合目的的サンプリングと自然主義的アプローチに基づいて、フォーカスグループディスカッションを用いて、家庭医と薬剤師を対象とした質的研究を実施した。議論は録音され、口頭で書き起こされ、継続的比較分析法を用いて重複して分析された。

結果
家庭医34名、薬剤師10名を対象に4回のフォーカスグループディスカッションを実施したところ、3つの主要なテーマが浮かび上がった。
(1)不適切な抗菌薬アレルギーの文書化の問題の大きさと認識
(2)問題の発生源
(3)問題への取り組み

の3つであった。参加者は、不適切な文書による記録の汚染の重大さが、現在の文書化に対する懐疑心につながっていると指摘した。主な阻害要因は電子カルテシステムと電子通信である。さらに、家庭医と薬剤師は抗菌薬アレルギーに関する知識が不十分であると考えており、不適切なアレルギー文書化を是正し、今後の適切な文書化を促進するためのツールを求めている。

結論
家庭医と薬剤師は、文書化された抗菌薬アレルギーが実際に正しいものであることはほとんどないと認識している。電子カルテの障壁やコミュニケーションの障壁、さらには知識や促進ツールの不足が、不適切に文書化された多数の抗菌薬アレルギーの主な原因であり、したがって今後の文書化改善の対象となる。

<感想>
電子カルテに赤字で大きく「●●アレルギー禁!」なんて書いてあったりしますよね。電子カルテのシステムの問題もあれば、そもそも医療者の知識不足もある、という反省させられる内容ではないでしょうか。ちなみに、ペニシリンアレルギーについては以下の論文がよくまとまっています。

Penicillin Allergy
N Engl J Med 2019; 381:2338-2351
doi: 10.1056/NEJMra1807761



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