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<論文>アイルランドの小児ライム病

The clinical presentation, treatment and outcome of serologically confirmed paediatric Lyme disease in the Republic of Ireland over a 5-year period: a retrospective cohort study
Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2020 Oct 11.
doi: 10.1007/s10096-020-04064-7

アブストラクト
ライム病(LD)はヨーロッパで最も一般的なダニ媒介疾患である。ヨーロッパの小児を対象とした人口ベースの研究はほとんど行われていない。本研究では、アイルランド共和国で血清学的に確認された小児のライム病の発生率、臨床症状、治療法、転帰を5年間にわたって評価することを目的とした。ボレリア・ブルグドルフェリの血清学的検査を行っている認定検査機関の記録をレトロスペクティブにレビューした。ライム病血清学的検査で陽性となった小児および青年の臨床医に送り状を配布した。臨床症状、治療、転帰に関するデータが求められた。臨床例の分類には、更新されたNICEガイドラインを使用した。B.burgdorferiの血清検査は2908検体で実施された。63人(2.2%)の小児が2段階陽性であり、粗年間罹患率は1.15/100,000であった。55人(87%)の送り状が返却され、47人がLDの臨床および検査基準を満たしていた。27人(57%)は非局所症状(遊走性紅斑/インフルエンザ様症状)を呈し、20人(43%)は局所症状(脳神経病変11、中枢神経病変8、関節炎1)を呈した。発症時の年齢中央値は8.2歳(2.5~17.9歳)であった。17人(36%)は海外でLDを発症した。残りの30人のうち25人(83%)はアイルランドの西・北西部で感染した。アイルランド共和国では、血清学的に確認された小児のLDは比較的まれである。検査を受けた小児の98%は血清陰性であった。血清陽性例のうち40%は臨床所見だけで診断できた。神経学的症状(40%)が一般的であった。データが得られたほぼすべての症例(97%)で症状が完全に消失していた。

2段階陽性:①ELISA法 ②イムノブロット法(いずれもIgM・IgG)

Discussionから抜粋
・ライム病は二峰性の年齢分布:5~14歳の小児と高齢者
・ほとんどが夏と秋に診断
・遊走性紅斑があれば血清検査は必須ではない
・遊走性紅斑のある半数でダニ咬傷の病歴なし
・頭頸部の遊走性紅斑は神経症状と関連があるかもしれない
・ペア血清が有用だが先に経験的治療を開始する必要あり
・神経症状が多いのは優勢種のB.gariniiの神経指向性を反映か
・米国ではB.Burgdorferi sensu strictoが優勢で関節炎が欧州より多め
・血清偽陽性で最終診断関節リウマチが少数あり
・ライム関節炎の典型例:
  90%が膝(非対称性)
  症状は疼痛よりも腫脹と可動域制限
  期間は数か月から数年
・関節炎の補助診断として関節液のPCRがある
・蜂窩織炎の鑑別が困難な場合は黄色ブドウ球菌を念頭に治療
・小児髄膜炎例で治療法は未確立だが通常使用される薬剤が有効か


NICEのライム病ガイドライン

診断・治療ふくめてとてもまとまっています。遊走性紅斑の写真集もあり参考になります。


<感想>
最近はアウトドア指向により,キャンプのみならず山林の土地購入者も増えているなんて聞きます。ライム病といえば北海道のイメージですが,山林への立ち入り(特に未開拓地)が増えると,もしかしたらダニ関連疾患も増えるかもしれません。



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