しまね留学について思うこと


「大人の役目」の一つに,「子供たちの目標となれる生き方をする」という部分があると思います。それは,子供たちに「社会に出て頑張る」って大変だけど,こんな良いこともあるぞ!というところを見せたり,このオッサンは,普段はそれほど大した大人に見えないけれど,いざというときには「何か格好いいなぁ…。こんな大人にだったらオレでもなれるかも」とか,このオバちゃんは,いちいち口うるさいけれど,いないと何だか寂しいんだよね。「私も将来こんなオバちゃんになれたら良いな」といった生き方をすることなのではないかと思うのです。

 それと「しまね留学」に何の関係があるのか?と思うでしょう。実は大ありなんです。

 東京などの大都市では,人や物,さらに情報が溢れています。そして,その中に「個」が埋もれてしまっているのではないかと感じるのです。日常生活の中で,自分の「存在感」というのを感じられていますか?

 世の中が進歩するに従って,便利なものが出現し,それによって「暮らしやすく」なっていると感じるかもしれません。でも,それは本当にそうなのでしょうか?個人的に考えるのは,売れるもの・便利なものというのが,「『実際に』人と関わらなくても生活できるもの」なのではないかということです。その最たるものがインターネット,そしてそれを活用できるスマートフォンではないでしょうか?今やスマホさえあれば,誰とも関わらずに生きていけるのではないかと思えるほどです。でもここで考えてほしいのは,社会に出て生活するということは,「社交性を身につける」ということでもあるということです。人との関わりが上手に出来ない人間(大人も子供も)が,そういう社会で上手く生きていけるのでしょうか?

 個人的には,人と関わることが生きていく上で最も面倒くさく難しく,しかし最も楽しいものではないかと思います。そして人は誰でも,どこかに面倒くさくて難しいものを避けたがる部分を持っているはずです。でもその面倒くさくて難しい部分を「楽しいもの」に変えていく術こそが「社会性」ではないのでしょうか?

 そして,そういう社会性を身につける時期の一つが「学生時代」であると思うのです。もっと人との直接的な関わりをその学生時代に経験できたらより良いのではないか?そう思うわけです。「特に地方には興味はない」と
いう子供たちもいると思いますが,そういう子供たちはそのまま都市部で高校に通えば良いわけですが,そうではない子供たちに「こんな選択肢もあるよ」ということを伝えることは,決して悪いことではないはずです。

 現在,恐らく各地方公共団体の中学校では,様々な高校の先生方を呼んで,その高校の魅力を語る場を設けていると思います。ただ,情報社会となった現在では,子供たちがその学校の「レベル」というのを,ある程度,予め知っていたりするため,「この高校は自分の学力では難しい」とか「ここは悪くなさそうだけど,ちょっとレベルが合わない」という冷めた目で見てしまうこともあると思うのです。
 そういう彼らに「島根県(しまね留学)」という,彼らの斜め上を行く提案をされたら,子供たちはどのような反応を見せるでしょうか?個人的には,それまでとは若干目の輝きが違ってくる子も出てくるのではないかと
思うのです。

 しまね留学の魅力の一つは,上で述べた「社会性を身につける」という部分です。まず,寮生活の中で他学年の人たちとコミュニケーションをとらなければいけないということです。寮生活には,ルールもあります。そして様々なことをするために,当番制で仕事をしなければいけいないことだってあります。休みの日も,家でグダグダ寝ているなんてことは出来ないのです。しかし,そういう経験をすることで,規則正しい生活も出来るように
なり,みんなと協力しなければいけない部分もきちんと学べるはずだと思います。また,自分が上級生になれば下級生の面倒を見なければならず,それによってリーダー性も身につけられるようになるはずです。これも都市で
は身につけられにくい部分ではないでしょうか?

 また,都市と違って地元の人たちとも日常的に会話をせざるを得ないという状況があるのです。都市の子供たちは,普段あまり身近な大人との会話をすることはないと思います。あるとすれば,学校の先生たちでしょうか。
そうなると,「先生と生徒」という関係になってしまい,子供たちにとって大事な会話が出来ていないように思います。もっと「人と人」という部分での会話が,自分の将来について考えるためには大切ではないでしょうか?
例えば「○○さんは何で今の職業をしているんですか?」という話が出来たり,それについてもきちんと答えてくれる大人がいると思うのです。島根県には,そういう会話が出来る土壌があると思います。

 また,島根県には,余りある大自然という魅力があります。思い切り走り回れる広い山野や,大きな声で叫ぶことが出来るド田舎感だってもの凄い魅力です。部活で思いっきり体を動かしたいとか,吹奏楽部等で大きな音を出したいときには,絶対に島根県の方が良いに決まっています。東京では見られない満天の星空や,方言だって身につけられます(笑)。

 そして,学校にも非常に魅力があるのです。学校の先生がメチャクチャ良いんです。当然,島根県全部がそうだとは言いませんが,先生たちが子供たちを教える努力を惜しまないということです。都市部の先生たちは,自分が
思うままに子供たちを教えることが出来にくい環境にいると思います。クラスの生徒数もそうですし,学習塾に通うのが当たり前になっているため,ある意味で分業化されてしまっているのかもしれません。都市部の高校に
ありがちな,「○○先生の授業が分かりにくい」という子供たちの言葉が圧倒的に少ないのです。それは,地域に密着している学校が多いため,高校にも地域の「目」が入ってくる上に,先生方が日々子供たちに寄り添っている
ことで,子供たちの分からない部分を意識できているからなのではないかと思うのです。

 何となく,島根県の良いことのようなことばかりを書いてみましたが,当然のことながら,悪いこともあるわけです。まずは「利便性」。島根県では「不便性」でしょうか(笑)。コンビニが隣町なんてこともあります。スマホの電波が届かない場所や車でなければ行けない場所だらけです。季節によっては通学が難しくなる地域だってあります。
 次に,「遊興施設の少なさ」。都市部のようにデパートやモールなんて殆どありません。だから,みんな部活に邁進するしかないのですが,そういう部分を期待してきてはいけません。
 最後に「虫」。都市部より虫が多いしデカい。自然が多いから仕方ありません。慣れるまで諦めましょう。

 以上,ツラツラと書きましたが,島根県というか地方には,大人たちに心の余裕があることが一番ではないかと思います。そういう余裕を持った大人たちの中で,子供たちは育てられた経験をすることが出来たら,とても
素晴らしいと思うわけです。



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