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5歳の息子が絵本を作った話

絵本作家になりたい?

少し前から、息子が何度か「絵本作家になりたい」と言うようになった。将来何をしたいかというのはこれまで何度か聞いたことがあった。「サッカー選手になる」とか「レーサーになる」とか「ゲームを売る人になる」とか言っていたことがあって、それと同じように一過性のものだろうなとは思っているけど、ひっかかることがあった。

絵本作家には、絵本を作れば今すぐにでもなれるし、逆に、絵本を作らなければ絶対になれない、ということ。

たった5歳の子どもの言うことだし、その子に対して「書かなきゃ絵本作家になれないよ!」なんて詰める気はない、けど・・・。私が息子に教えられる数少ないことって、そういう、「なりたい」と思った時にどういうスピード感でどう行動するのか、みたいなところじゃないんだろうか、となんとなく思ってはいた。

家の近くでZINE即売会が開かれるとたまたま知って、自分の楽しみのためにと申し込んでいたんだけど、自分の制作物が終わった後、ふと、それを思い出した。もしかして、これは息子に絵本を作らせて、売る、ところまで体験させられるチャンスなのでは?と・・・


ベッドの上でお話を紡ぐ

「そらとぶタクシー」というのは、以前息子が、「絵本作る!」と言って、表紙だけ書いていたものだ。車と人の絵、それから「そらとぶタクシー」の題字。すごいキャッチーなタイトルだと思った。それだけでワクワクさせるタイトルって、なかなか思いつかない、天才かもしれないと思った。でも、それは表紙だけで終わっていた。

そこで、夜寝る前にベッドの上で、息子に提案した。「そらとぶタクシーを絵本にして、イベントで売るのはどう?」と。息子は結構乗り気だった。そこで、その場でお話を考えてもらった。ベッドの上で、続きをうながし、スマホのメモ帳にお話をメモしていく。これがその時のメモ。

「そらとぶタクシー」ベッドの上でとったメモ

「タクシーに乗ってどこへ行ったのかな?」「そこには何があったのかな?」「それからどうなった?」・・・私はそんな感じで促しただけで、お話を作ってくれたので、面白いなあと思いながらメモをとった。合計4ページだ。絵を4枚、描いてもらえばいい。どうやって製本しようかな・・・そんなことを考えながら眠りについた。

描ききるエネルギー

絵を4枚描けば絵本ができるよ!とは伝えていた。昨日の夜はやる気だった。でも子供心と秋の空・・・次の日の朝には、「描けないかも・・・」と言い始めた。子供って、集中力がなくて、一つの絵を描ききることだって一苦労。ましてや同じストーリーのために4枚も絵を描くなんて、無理かもしれない。そうかー・・・無理か。。。

まあ、イベントには間に合わなくても、絵本を作り上げる体験はさせよう、そう思って、イラレでデータを作り始めた。絵は描いてくれたら、後で入れればいい。絵の入るところはグレーで塗りつぶして、文字だけ入れたデータを作った。

イラレで作った絵本作りのためのデータ

保育園から帰ってきた息子は、案の定、絵を描く気はないみたいだった。買ったばかりのポケモンのゲームをやりたいみたいだった。一応、「かかパソコンで絵本が印刷できるやつ作ったんだよー」と、上記のデータを見せた。このグレーのところに絵が入るんだよと説明した。すると・・・

楽しく絵を仕上げる息子

自分の考えたお話が活字になって画面に映し出されていることがすごく嬉しかったみたいで、絵本を作るというイメージが湧いたようで・・・「1枚だけ描こうかな」と机に向かってくれた。隣に座って、「こっちは何をかく?」「空も塗ったら?」「うまい!」などと言いながら描くのを見守ったら、なんと、その日のうちに4枚描きあげてしまった!!

息子の原画

すごい!やればできるんだな。私がこうやって付きっきりでそばについていれば・・・。いつも放置していてごめんね、と思ったのはまた別の話。

コンビニプリントで自家製本

息子が絵を描きあげてくれたので、もうこれは絶対に絵本を完成させなければいけない。「何冊作る?〇〇ちゃんの分と、〇〇の分と・・・5冊ぐらいかな?」と聞いたら、「10冊」との回答。絵が思いのほかうまく描けたのが満足だったみたい!

イラレのデータに息子の絵を入れ込み、コンビニでカラー印刷。ちなみにA3サイズ1.5枚で表紙を含め6ページ分なので、それだけで原価は150円。在宅ワークの昼休みに、せっせと家で、30枚分のカットをする私。100円ショップでトレペとマステを買ってきて、トレペをまたカットして原稿と束ね、ステープラーで留め、背にマステを貼る。完成だ・・・!(大変だった)

トレペが透けて表紙が見える仕様
ステープラー留めなので開きにくいがご愛嬌

保育園から帰ってきた息子に見せる。満足そうに、何度も読んでいる。よかった・・・頑張ってよかった・・・

何度も自分の絵本を読み聞かせてくれる息子

売れた!(みんな優しい)

即売会での値段は200円ということにした。(原価も200円ぐらいだけど)10冊作ったけど、1冊は保管用、1冊は見本用にしたので、在庫は8冊だ。売上は息子のお小遣いにして、好きなものを買わせよう。でも、きっと誰も買ってくれないだろうから、お客さんを仕込まないといけない。母親(祖母)と、姉(叔母)と、兄(叔父)家族に、買いに来てくださいとLINEで頼んだ。

そして、いよいよ当日・・・

ZINE即売会の様子

私のX(Twitter)やInstagramを見てきましたと言ってくれるフォロワーさんたち、そしてこの即売会で初めてお会いしたZINE好きの方たち、みなさん優しすぎる!「よくできていますね」「上手ですね」と言って、手に取って読んで、買ってくれた。もちろん、仕込んだお客さん(母・姉・兄家族)もきてくれて、息子は嬉しそうにしていた。(その他のほとんどの時間、switchでポケモンをしていたけどね)

息子の処女作は、なんと完売した!!!

・・・そう、自分の描いたものが知らない人に目の前で読んでもらって、感想を言われる喜び。それをお金を払ってまで買ってくれる喜び。息子よ!!!!!たっぷり感じてくれただろうか!!!!!!1600円は息子のお小遣いになる。お金をもらえることも嬉しいけど、お金を払いたくなるぐらい喜んでもらえたのが嬉しいよね、という話をした。

あとは子供次第

私はこのプロジェクト、非常に満足した。でも、息子は、どう思ったか知らない。私が息子に感じて欲しかったこと、やりたいと思ったことをすぐにできる喜び、アイデアを形にする喜び、最後まで作り上げる喜び、他の人にそれを見てもらう喜び、お金を払うぐらい喜んでもらえう喜び、自分で手に入れたお金で買い物をする喜び・・・一つぐらい覚えているかもしれないし、何も響いてないかもしれない。

「絵本作家になりたい」という気持ちも、そのうちすぐ忘れるかもしれない。でも、親は密かに、何か一つでも、心の隅に残せたらいいな、と画策するのだ・・・

おしまい

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