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悟り系カルト被害者との対話

毒親持ちで鬱病の既往歴がある上に、偽覚者・伊勢の菊理姫(以下、伊勢菊理)に騙されて、全財産を奪われた茶柱さん。

今はかなり回復しましたが、私と出会った2020年頃は、伊勢菊理の事を思い出すと過呼吸になったり、全身の力が抜けて立てなくなるので、貯金を切り崩しながら療養生活を送っていました。


鬱病からスピリチュアルへ


※以下、管理人=管 茶柱さん=茶


管「まず、悟りというものに関心を持つようになった経緯と、直接の理由を教えてください。」

茶「中学生の頃から生き辛さを感じていて、就職してから鬱病になりました。心療内科でカウンセリングを受けたり、健康関連の雑誌を読んだりしている内にスピリチュアルに関心を持ち始め、悟りに興味の対象が移っていきました。」


管「その時に読んだ健康関連の雑誌のタイトルを教えてください。」

茶「ゆほびか、壮快、などですね。いわゆる民間療法的な記事だけでなく、工学博士の五日市剛さんや、スピ系カウンセラーのインタビュー記事が載る事もあるんです。ありがとうと言えば人生が変わるという話も、その雑誌で知りました。」


管「なるほど。」

茶「私には姉が居るのですが、姉もメンタルに問題を抱えているので、斎藤一人さんや、小林正観さんの本を集めているんですよ。その本を貸してもらった時から本格的にスピに嵌りました。スピに関しては、私より姉の方が熱心かも知れません。」


管「雑誌で情報収集を行い、気になった方の本を読むという感じですか?」

茶「本当に苦しかったので、あまり深く考えず、手あたり次第に本や雑誌を読んでいました。とにかく楽になる事を実践しようと思って、ありがとうと言ってみたり、地獄言葉を言わず、天国言葉を言うようにしていました。」


管「地獄言葉に天国言葉ですか。それは初めて知りました。」

茶「地獄言葉を言ってしまった時は、キャンセルと言えば無かった事に出来るそうです。雑誌や本で紹介されている方法には、感謝の言葉や行動で示すと言う共通点がありました。でも、それらの方法を実践していく内に、自分の本心を抑え込むような気持が出て来ました。」


管「どういう事でしょうか?」

茶「生き辛さや、怒りや、苦しみを、ありがとうという言葉で抑え込む形になってしまったんです。吐き出せる場所があったり、私の話に関心を持ってくれる人が居れば別だったのかも知れませんけどね。それで、これは違う、自分に合ってないと思うようになりました。」


管「なるほど。」

茶「無理矢理ありがとうと言っていると、何でこんな事を言わなければならないのかと、余計に怒りが湧いてくるんです。それで余計に苦しくなりました。」


管「確かに、ありがとうというだけでは何も解決しませんし、振る舞いだけ変えても仕方がないですよね。」

茶「ゆほびかには、付録として音楽CDや、動画のDVDなどもついてくるんです。それがまたスピっぽくて。」


管「そこはオカルト雑誌の月刊ムーに通じる所がありますね。私もムーの付録を集めていた時期があります。」

茶「他には、自己啓発の本田健さんや、海外スピ本の翻訳を行っている山川夫妻や、精神科医の越智啓子さんの特集記事もありました。その人達と交流している人の中には、覚醒したと言っている人も居るんです。」


管「段々話が怪しくなってきましたね・・・。でも、流石に覚醒者の特集記事はありませんか。」

茶「流石にそれは無かったですね。私は心身の不調から仕事が安定しないので、金銭面の不安もあるんです。お金が無いのは、すごく恐い事です。本田健さんはお金の儲け方の話をされるのですが、興味を持ったのはその為です。スピ系は金運の話もしますし、トータルで不安の解消法を教えてくれるんです。」


管「敢えて悪く言うなら、不安ビジネスですよね。こんな事も知らないんですかと煽って来て、これがあれば安心と売りつけてくる。」

茶「効果がある人と、出ない人が居ますよね。効果があった人がうらやましいし、自分も効果を出したいし、人生で成功もしたいです。」


管「うーん、気持ちは分からなくもないですが・・・。」

茶「かなりお金も使いましたが、私の場合は残念ながら、あまり効果が出ませんでした。」



スピから離れても・・・。

管「キツいですね、それは。」

茶「それで一旦、スピからは離れたんです。他の楽しい事を探そうとして、SNSのスポーツ系コミュニティに入った事もあるのですけど、生き辛さは変わりませんでした。会社の寮から出て一人暮らしをする事も考えましたが、実行に移す勇気がなく、実家に戻りました。でも、家族と居るのも苦痛なんです。」


管「居場所がないですね・・・。」

茶「それでも薬の力を借りながら、少しづつ回復していきました。最初は洗濯物をたたむ気力さえ無かったのですが、次第に犬の散歩にいけるくらいには回復していきました。というか、回復の為に出来る事を無理矢理やっていった感じです。」


管「なるほど。」

茶「体力をつける為に水泳をしましたし、声が小さいので発声練習やボイトレなどにも行きました。心療内科で話を聞いて貰えたのも良かったです。親の圧があったのでバイトにも行きました。全ては正社員になって社会復帰する為です。」


管「頑張りましたね。」

茶「頑張りはしたんですけど何をやっても上手くいかないし、家庭の問題もあって何度も転職する事になるんです。それで心身ともにボロボロになり、この生き辛さの原因を知ったり、解決したくなりました。でも、一人では無理と思い、退行催眠や認知療法のカウンセリングに頼った事もあります。」


管「うわぁ・・・。」

茶「薬と努力で鬱は寛解しましたが、生き辛さの原因や、仕事が上手く行かない理由は分からないままです。私としては、その原因を突き止めたかったのに。」


管「なるほど。」

茶「病院やスピでは何も変わらないと思い知らされました。その時は気持ちが楽になったような気がしても、結局は納得できない部分が残ったり、根本解決には至らずに終わるんです。」


管「それらは全て、対症療法みたいなものですからね。」

茶「深い所と言うか、生き辛さの真の原因を知りたいんです。」



生き辛さから悟り系スピリチュアルへ

管「根治が望みなのですね。生き辛さの真の原因と、悟りや真理が関係していると考えたのですか?」

茶「そうです。生き辛さについてネットで色々調べているうちに、本も出している有名ブロガーの雲黒斎さんを知りました。彼のブログの記事の記事で覚醒についての知識を得て、悟りこそが答えかも知れないと思うようになりました。」


管「なるほど。」

茶「コメント欄に書き込みをしている人の中には、悟った人?も居たようですし、悟れば自分も楽になって、生き辛さも解消するのかなと思いました。」


管「ふむ。」

茶「それまで何をやってもダメだったし、生き辛くて苦しかったんです。私の苦しさは、一般的な苦しみとは少し違ったので、分かり合える人も居ませんでした。でも、悟り系の人達とは、自分と似た様な所があると思ったんです。」


管「確かに。スピリチュアル・ジプシーが最後に行き着くのが、悟り系という面はあると思います。」

茶「他の悟り系のブログも読みました。そこには具体的なメソッドや修行法の紹介があったので、少しだけやってみた事もあります。スピ系とは違って、悟り系は地に足がついている気がしました。自分の力で生きられる。本当の自分を知る事が出来るかもしれないと思いました。」


管「ほほう。」

茶「でも、ダメでした。何も変わらなかったんです。結局、悟り系もスピと同じで、ワンネスとか、ノンデュアリティなどのフワフワとした言葉で人を気持ちよくさせたり、こんな事を知っている自分は凄いと錯覚させるような要素があって、むしろ危険だと思いました。」


管「そうですか。」

茶「スピ系セミナー(ランチ会)にしても、お金だけ払ってその場限りなんです。そういう所に行っている人達も、何処か気持ち悪い人が多かったですし。」


管「私はそういうセミナーに参加した事が無いので、詳しく教えていただけませんか?」

茶「スピ系の人同士のコラボイベントがあるんです。占いや、カウンセリング、各種メソッドなどを仕事にしている人達が開催するもので、リッチな気分を味わう為に高級なランチをセッティングしたりするんです。」


管「楽しそうですね。女性向けなのかな?」

茶「確かに女性はランチ・カフェが大好物ですし、非日常を味わいたい人にとっては良いイベントだと思います。こうやって集客しているんですよ。一人の力じゃ難しいと思ったらコラボ。それはスピ系も悟り系も一緒です。」


管「うーむ。」

茶「そういうイベントに参加すると、こういう所を見つけられたり、ここに居られる自分は凄いんだ、他の人達とは違うんだ、悟りに近いんだ、御縁があるんだと錯覚するんです。」


管「宗教みたいですね。」

茶「スピ系はとにかく気持ちよくしてくれるので、驕り高ぶってしまいそうになるんです。アセンションの流行もありましたし、スピと悟りの融合の話を読んでいると、自分も悟れるような気がしてくるんです。でも、何故かハマり切れない部分があったので、自分に合う人を探し続けました。そして、ついにこれはと思える人のブログを見つけたんです。」


管「それが例の悟り系カルトのブログですか。」

茶「そうです。本人が亡くなっているので、今はもうそのブログも残っていませんが。」


伊勢菊理との出会い

管「そのブログのタイトルを聞いてもよろしいですか?」

茶「”風と空と星-伊勢の菊理姫”です。」


管「伊勢の菊理姫ですか。あまり聞かない名前ですね。その名義で有名な覚者や、向禅師とのコラボをしていたのですか?」

茶「そうです。覚醒者としての活動期間が4年と短かいので、知名度は低いと思います。他にも覚醒女史とか伊勢菊理という名前で、複数のブログを運営していました。」


管「なるほど。伊勢菊理は悟りを体験した覚醒者であり、あなたの師であるとの事ですが、師の悟りを今でも信じていますか?」

茶「それがよく分からないんです。悟っているように思える部分もあれば、とてもそうは見えない部分もあって・・・。もし師が本当に悟っていたなら、信じ続けなければ悟りへの道が絶たれるような気がして怖いんです。」


管「ならば伊勢菊理が悟っているか否かを見極めてみましょう。次にお会いする時に、手元にある伊勢の菊理姫についての資料を持ってきていただけますか?」

茶「はい、わかりました。よろしくお願いします。」



伊勢菊理の覚醒?

管「おひさしぶりです。伊勢の菊理姫(以下、伊勢菊理)についての資料は持ってきていただけましたか?」

茶「おひさしぶりです。資料の内容は、主に伊勢菊理のブログからの抜粋と、向禅師と禅道場を開催した時のものになります。」


管「では、拝見させていただきます。これを見ながら色々と質問をしていきますね。」

茶「はい、わかりました。」


管「・・・えーと、伊勢菊理は悟る前に小林正観氏のイベントに行ったり、阿部敏郎さんのトークライブに参加したり、瞑想の伝授を受けたりしていたのですか?」

茶「はい。私と出会う前の話なので、詳しい事は分かりませんけど。」


管「その後、伊勢菊理は広島の宮島にある祠で真剣に祈り、私なるものは要らない、心身を全て捧げると誓ったと書いてありますね。」

茶「賢者テラさんも同じような経験をされていたようで、とても共感する部分があったと言っていました。」


管「それで・・・その後に不思議な出会いがあり、その人を全身全霊で助けなければならなくなった。それでその時に神様が願いを叶えてくれて、神様が私を使ってくれているのだと思った・・・ですか。ふむふむ。」

茶「テラさんの著書を読んで、目覚め・覚醒とはそのような事の後に起きるのかなと思った・・・と言っていました。」


管「うーん、私は放下着(ほうげじゃく)やサレンダー(降伏)とかには詳しくないのですが、ちょっと強引な解釈に思えますね。」

茶「放下着、サレンダーって何ですか?」


管「執着心を断つという意味で、生きる為の戦いや努力を放棄したり、何もかも喜んで捨て去る事を悟りへの道だと説く人も居るんですよ。」

茶「執着心を断つのは良い事では無いのですか?」


管「悪党がのさばる人間社会に属しながら、あらゆる執着心を断とうとすれば、容赦なくこき使われたり、何もかも奪われるのがオチです。それは自殺と同じですよ。放棄や降伏の道を歩むなら、出家修行者になるか、隠遁生活に入ってからにするべきです。」

茶「そうですか・・・。」


管「伊勢菊理は自らの体験から、全身全霊を神に差し出し、何もかも明け渡す事で自我の喪失が起きると考えていたようですね。」

茶「確かに、あなたのものは実はあなたのものでは無い、お金も含めて全ては神のもの、大いなるものの為にある、みたいな事は良く言っていました。」


管「危ない考え方ですね。一つ間違うと、他人の財産を奪う事に抵抗が無くなるような気がします。」

茶「後で詳しくお話ししますけど、伊勢菊理は私のお金を遠慮なく使い込んでいました。」


管「ええぇ!?」

茶「お金には興味が無いけれど、ビジネスにはお金がかかると言っていました。知井道通さんがFXをやっていたと知って、伊勢菊理自身も活動資金を得る為にやろうとしたのですが、元手が少なすぎて出来なかったんです。その為にネットも繋いで準備までしていたのに。」


管「伊勢菊理はビジネスに力を入れていたんですか? でも、その割には見通しが甘い所がありますよね。」

茶「ある化粧水と出会って、その販売に人生を賭けていました。でも、当時は覚醒のショックがまだ残っていたので単純作業しか出来ず、やむを得ず派遣で働いていたと言っていました。」



伊勢菊理の覚醒体験と、その内容

管「その覚醒のショックについて詳しく教えていただけますか?」

茶「ガーンと頭を殴られたようなショックが続いて、落ち着くまでに一年ほどかかったと言っていました。その後も派遣先で使う機械と自分が一体になってしまうという体験もあったそうです。」


管「どういう時に、覚醒の体験が起きたのかは聞いていますか?」

茶「伊勢菊理が阿部敏郎さんのイベントに参加した時に、その化粧水の開発者と出会って話をしたそうです。その開発者が話の流れで、世界は自分が作っているというような事を言ったそうです。その話が腑に落ちた瞬間、全部自分でやっていたと悟ったと聞きました。」


管「世界は自分が作っている、全部自分でやっていた・・・つまり、絶対無の悟りですか。」

茶「そうです、絶対無です! 伊勢菊理のブログでは、宇宙すら何も無いとか、宇宙を突き抜けたと言っていました。私はその言葉に強く惹かれたんです。」


管「・・・あれ? 別の資料には、知井道通氏のツアーの準備をしている時に、全て幻想で自作自演だったと一瞬にして理解したと書いてありますけど?」

茶「伊勢菊理の話には統合性が無いので、話を纏めたくても出来ないんです。悟っているからこそ、意図的にそうしていたのかなと思っていたのですが、どうも自分の事を深く知られたくないようでした。私にも実年齢を隠していたくらいですから。」


管「弟子に対しても真実を隠すとは。秘密主義の人だったんですかね。」

茶「行く先々でトラブルを起こしていた人なので、その所為かと・・・。」


管「それはさておき・・・資料を読み込んでいくと、細かい矛盾が見えてきますね。例えば、絶対無と悟った筈なのに、意識が全てを作っているという話は理解できないと言ったりとか。」

茶「それは矛盾した話なのですか?」


管「ややこしい話なので後で纏めて説明しますが、見落とす訳にはいかない重要な部分です。尤も、こういう話だけでは、悟りの真贋は判断出来ませんけどね。トータルで見ないと。」

茶「伊勢菊理は、覚醒の瞬間から何もかもが曖昧になって、自分が何を話しているのかも分からなくなった、その後どうやって帰ったかも憶えていないとも言っていました。また、覚醒するという事は、生まれ変わる事で、全く新しい人間の誕生だとも言っていました。こういう話は重要ですか?」


管「そうですね。体験の詳細というか、本人しか知らない悟りの裏話みたいな部分が大事なので、重要な判断材料だと言えます。」

茶「そういえば、覚醒する前は職場や家族との関係が上手く行かなくて、人生に絶望していたと言っていました。それを何とかしたくてスピや悟り系のセミナーなどで散財し、借金を作ったとも聞きました。」


管「悟りの前段階に、苦しみと絶望から真実を渇望するという過程があるのですが、覚醒前の伊勢菊理もそれなりに苦しんでいたみたいですね。」

茶「派遣は人間関係のトラブルの所為で続けられなくなりましたが、それと並行して化粧水の販売もしていたそうです。伊勢菊理は、化粧水ビジネスを大きくする為の資金が欲しかったんです。そしてこれらの出来事もまた、神の采配だと言っていました。」


管「神の采配ですか?」

茶「派遣を辞めた後、パートタイムの面接にも行ったそうです。でも、面接の最中に急に体調が悪くなって嘔吐したり、急に勤務先が倒産するなどの偶然が何度かあって、自分には化粧水の販売しかない、神の采配通りに生きるべきだと思うようになったと言っていました。」


管「うーん、そんな事を言ってたんですか。」

茶「例えば、アトピーで悩んでいる方が、化粧水の力で治ったらどうなるのか? 病気の影響で抱え込んでいた悪い想念が消えたらどう変わるのか? 健康になったら本当にやりたい事をやれるようになって、それを極めていく内に、真の自分を知って覚醒が起こるのではないか? これが伊勢菊理の考え方でした。」


管「アトピーって、化粧水で治るものなんですか?」

茶「薬事法の関係で化粧水として販売していただけで、実際には様々な怪我や病気に効く商品だったんです。元々私も健康や美容に関心があったものですから、伊勢菊理の考え方に共感してしまって・・・。」


管「ひょっとして、その化粧水が切っ掛けで、伊勢菊理と関わる事になったのでは?」

茶「はい、そうです。」



伊勢菊理と茶柱さんの関係

管「伊勢菊理との出会いについて、具体的に教えていただけますか?」

茶「伊勢菊理のブログを読んで興味を持ち、メールのやり取りをしたり、向禅師の禅道場で合ったりするうちに、向こうからの連絡が増えて来たんです。最初は向こうが相談に乗ると言っていたのですが、次第に私が相談に乗る事が多くなっていきました。」


管「え? 自称覚者の相談に乗っていたのですか? 普通、逆でしょう?」

茶「ただ風邪を引いただけなのに死んでしまうとか、同情を引くような事を言って来るんです。それも電話やメールで、一日に何度も。私自身、色々と辛い経験をしてきているので、ほっとけなかったんです。」


管「何か、人を絡め取ろうとする邪悪な意図を感じますね。ヤバいなぁ・・・。」

茶「私の都合などお構いなしでメールや電話をして来るので、正直、辟易していました。でも、私の方にも色々と苦しい事情があったので、拒絶しきれなかったんです。それで押し切られる形で弟子にされてしまい、化粧水の販売を手伝う事になりました。知り合いの方には弟子とは言わず、押しかけ社員だと言っていました。」


管「押しかけ社員ですか? かなり事実と異なる事を言われていますよね?」

茶「これが伊勢菊理の常套手段なんです。複数の人格を演じて、人を騙して利用するんです。意図的に聞き間違えて人を責めたり、当たり前のように揚げ足を取ったりするんです。言質は取っていると言われて威圧された事もあります。でも、出会ったばかりの頃は、こんな人だとは知らなくて、混乱してしまって・・・。」


管「分かります。本当に邪悪な人間と出会うと、あまりにぶっ飛んだ思考について行けず、何も言葉が出て来なくなるものですよ。慣れていないと言い返す事さえ出来ません。私もそういう人間を三人ほど知っています。まあ、そのうちの一人は、私の父親ですけど。」

茶「そうなんですか? それはそれで怖すぎです・・・。」


管「話を戻しましょう。弟子として扱われるようになってからの話をお聞かせください。」

茶「伊勢菊理は化粧水の販売の他に、知井道通さんの伊勢参拝ツアーを企画したり、伊勢に雲黒斎さんや賢者テラさんを呼んでイベントをしたり、やまがみてるおさんと一緒に悟りのワークをするなどのスピ系ビジネスも手掛けていました。私も彼らのブログを読んでいたので、伊勢菊理がそういう人達と話をしたり、コラボイベントをしたりするのは流石だと思いました。」


管「向禅師の今ここ禅道場in二見の主催をしたのも、伊勢菊理ですよね。」

茶「私はイベントで人を集めて化粧水を売る為だったと考えていますが、伊勢菊理は決して本心を語らなかったので、向禅師とコラボをした理由は分かりません。イベント自体はいつも赤字でしたが、伊勢菊理はお金の為に動いている訳じゃないと言い張っていました。」


管「ふむ。」

茶「化粧水を多くの人達に使ってもらって、一人でも多くの人に、悩みや、悪い想念から解放されて欲しい。その為に行動していると口癖のように言っていました。でも、思っていたほど売れなかったので、最後の方は販売に興味を失くしていました。」


管「化粧水ビジネスは失敗でしたか。それは仕方ないと思いますけど、神に使われていると主張したり、色々と手伝ってくれる弟子も居るのに、途中で興味を失くして投げ出すのは理解出来ません。余りにも無責任だし、いい加減過ぎるでしょう。」

茶「伊勢菊理は精神的に不安定な所があって、妙に飽きっぽかったり、つまらない事で怒り狂って全てを投げ出したり、物を壊したりするんです。突然、人が変わったかと思うと酷い暴言を吐いたり、時には暴力を振るう事もありました。」


管「本当に雑な人ですねぇ・・・。」

茶「そうかと思えば、子供みたいな面を見せたり、親みたいになったり、友達になったり、人格がコロコロ入れ替わるんです。まるで多重人格みたいでした。でも、それは悟りの影響でそうなったものと思うようにしていました。当時は、人知を超えた所に居る人だから、と思うようにしていたんです。」


管「うーん・・・。」

茶「本人も不安定さを自覚していましたが、悟って自我が無くなると、神としか言えない大いなるものに使われるのだと言っていました。私は伊勢菊理から何度も叩かれましたが、それを自分の意志でやっていないと言い張るんです。私だって手が痛いんだとか言って・・・。」


管「何ですかそれ。どういう理屈なのかサッパリ分かりませんが。」

茶「一族的に霊感が強いから仕方が無いと言っていました。確か、お姉さんもそうだとか。他にも、真理に迫ったような話を聞くとゾクゾクするとも言っていました。」


管「いや、誰でも悟りによって脳内お花畑になる時期はありますし、他者が紡ぎ出す真理の言葉に激しく反応する事もあります。でも、神や何かから使役されたり、己の意志とは関係なく手足が勝手に動くなどという事はありません。その話はおかしいです。」

茶「私もおかしいとは思っていたんです。でも、伊勢菊理は私を目覚めさせる為に、理不尽と分かっていながら強いショックを与えていると言っていました。私も化粧水の販売で人々の役に立ちたいという思いがあったものですから、酷い扱いだとは思いながらも弟子の立場に甘んじてしまいました。」


管「お気の毒ですが、そういう心理の事を合理化と言います。オウム信者達が、浅原彰晃の奇行を正当化していたのと何も変わりません。」

茶「・・・私は宗教に騙されるタイプではないと思っていたので、ショックです。」


管「それと、悟って1年かそこらの人では、指導者など務まりません。悟りについて語るのと、他人を悟りに導くのとでは、難易度が全然違いますから。」

茶「・・・伊勢菊理は、いつも自分の名前を隠したがっていました。ビジネス用の口座も他人名義のものでしたし、私が来てからは私の口座を使っていました。被害者ぶって色々な人達から資金援助を取り付けて、金融公庫などの公的な手段を使おうとしなかったんです!」


管「まさか、それは脱税の為ですか?」

茶「そうです! 伊勢菊理は化粧水ビジネスの為に、私や資金援助をしてくださった方々を利用したんです。私を弟子にしたのも社員として扱いたくなかったからですし、会社としての届けも出してもいませんでした!」


管「雇用契約や、お給料はどうなっていたんですか?」

茶「そんなものはありません。最初に私が資金提供で100万円出したのですが、そのお金の使い道は教えてもらえませんでした。化粧水が売れたら収益を配分すると言われたので、それまで我慢するしかないと思って耐えました。でも、化粧水は売れなかったんです。」


管「お金を出すだけで終わってしまったんですね・・・。」

茶「結局、資金が足らなくて私が働きに出たのですが、それでもお金が足らなくて、私が住んでいたアパートから出るしかなくなりました。その事を伊勢菊理に伝えると、伊勢菊理の一族が所有する旧家に連れていかれました。」


管「ふむ・・・。」

茶「連れていかれたのは、もう人が住んでいない廃屋でした。キッチンやお風呂も使えなくて、掃除もされていない、物置同然の状態でした。でも、弟子なんだから師を支えるのは当たり前、居候しているのだからお金を出すのも当たり前、師の足を引っ張るような真似だけはするなと言われました。」


管「その扱いに対して、苦情や文句を言いましたか?」

茶「もちろん色々言いましたが、その度に邪魔をするなと怒鳴られて暴力を振るわれました。どうなっても今よりはマシと思って逃げようとした事もありますが、既にお金は出し切っていましたし、親の制止を振り切って伊勢菊理の下に行ったので頼る事も出来ません。何処にも居場所が無くて、廃屋から出るに出られなくて、やがて自暴自棄的に、伊勢菊理に人生を捧げるしかないと思い込むようになりました。」


管「そんなバカな。」

茶「伊勢菊理は、私の事を神が用意した駒だと言っていました。駒の打ち手である神と師は同一の存在で、師を裏切ったら駒に過ぎない弟子の人生は終わる、絶対に幸せになどなれないと脅されました。でも、周囲の人達には弟子の面倒を見てやってるとか、共同経営者だと言って、良い顔をするんです。」


管「はぁ・・・。」

茶「私をアゴで使う様子を見て、伊勢菊理の人間性に疑問を感じる人は多かったです。中には私の為に注意してくれた人も居ましたが、伊勢菊理から酷くないよな?と同意を求められたので、つい頷いてしまいました。その後で、注意されたのは私の所為だという事で、メチャクチャに怒られました。」


管「・・・。」

茶「例えビジネス上の話であっても、誰かに相談するような真似は許されませんでした。全てにおいて伊勢菊理の指示を仰がなくてはならなかったんです。でも、指示通りに行動しても役立たずと罵られたり、私にはもう行く所が無いと知っていながら縁を切るとか、縁を切った後は誰にも分からないように復讐してやると脅されたりしました。」


管「孤立化と情報の遮断は、洗脳のテクニックですよ。質が悪い。」

茶「伊勢菊理には、衝動的に何かに飛びつくクセがありました。でも、長期的な展望は無いんです。全ては神のものだからという思い込みだけがあって、ビジネスの才能は皆無でした。化粧水にしても全然売れていないのに、世界に届ける為に工場を作って人を雇えたらいいなとか言うんです。思いを心の中で育てる事が出来なくて、何でもその場で口にしてしまう人でした。」


管「そうですか・・・。」

茶「いつも化粧水は神のもの、神の現れであり、伊勢菊理は神に使われているだけなのだと言っていました。連続して資金援助を受けられた事があって、その時はみんな私になりたがると言っていました。私はすっごく優しくて、すっごく頭が良いけど、すっごく冷酷な面もあるとも言っていました。」


管「狂気の世界観としか言いようが無いですね。」

茶「伊勢菊理には散財癖もあって、お金が無いのに毎日カフェに行き、一回の食事で凄い量を食べていました。私はそれも覚醒の影響で不安定になった心身を安定させるのに必要な事だと思ったんです。因みに、本人は石油でも飲めると言っていました。」


管「ハッタリです。悟ったって石油は飲めません。」

茶「伊勢菊理は話術が巧みで、息を吐くように嘘を吐いていました。嘘を吐いて自分を大きく見せる事と、被害者ぶって助けなきゃと思わせるのだけは上手かったんです。それに私も騙されました。」


管「嘘吐きの正体に気付く事自体、なかなかに難しい事ですからね。況してや、その正体を暴いたり、対峙するとなると大事です。嘘吐きがその場しのぎの思い付きで行動すれば、いつか必ず行き詰ります。その時に他人を利用したり、身代わりにして切り抜けようとするから厄介なんですよ。」

茶「伊勢菊理は、借金だけを残してガンで亡くなりました。私は介護をして、最後を看取り、共同経営者の責任として借金を返済しました。大変でしたが、やり切りました。でも、私は心身ともにボロボロになりました。お金が無いのに働く事も出来ません。私は何の為に頑張ったのかと考えると泣けてきます。」



対談の総括

管「そろそろ話を纏めましょう。まず伊勢菊理が本物の覚者か否かの判断ですが、私は偽覚者と断定します。」

茶「その理由を聞かせていただけますか?」


管「伊勢菊理は、世界は自分が作っている、全部自分でやっていた、宇宙すら何も無い、全て幻想で自作自演だと言っています。言葉自体は絶対無を表現する悟りの言葉なのですが、頻繁に悟り系スピリチュアルのイベントに参加していた人だという点を考慮する必要があります。」

茶「ただの知ったかぶりだった、という事ですか?」


管「何らかの理由で衝撃的な体験をしたり、不思議な体験をすると、その出来事を理解しようとして他の知識・情報と強引に結びつけて、勝手な勘違いや思い込みをしてしまうのが人の性(さが)です。そしてその傾向は、精神を病んでいたり、情緒的に未熟な人により多く見られます。」

茶「伊勢菊理には幼稚な所があり、人間性にも問題がありました。」


管「精神世界には、坐禅瞑想で神秘体験をして悟りを開いたと短絡的に思い込み、カルト化した指導者なんて腐るほど居ますよ。伊勢菊理の場合は絶対無の悟りなので、絶対無の概念をどれだけ理解しているかを調べる必要がありますが、既に故人なので過去の資料から判断するしかありません。」

茶「だから資料を持ってくるようにと仰ったのですね。」


管「最も参考になったのは、向禅師との対談です。音声の録音がありますし、文字起こしもしてあるので、とても助かりました。対談は全体的に向禅師のリードで進んでいますが、伊勢菊理はどうにか化粧水ビジネスの方向に持っていこうとしている為、微妙に話が噛み合っていません。」

茶「伊勢菊理は、自分の方が境地が上だと言って、向禅師を見下していました。」


管「とんでもない! 伊勢菊理は向禅師が説く無垢の概念を理解出来ずに流していますし、絶対無と言う割には、何かを絶対視する傾向もあります。先ほどの意識が全てを作っているという話にしても、何かを絶対視している内は分からない話ですし、そもそも絶対無とは相対無の対義語に過ぎないものです。」

茶「えっ!? 絶対無は真理では無いのですか?!」


管「此(これ)あれば彼がありという縁起説の通り、真理は迷いと共に生じるものであって、何物にも依らず独立単体で存在している訳ではありません。したがって、迷いが滅すれば真理もまた滅します。迷いや真理が生じる前の静寂こそが、悟りそのものであり涅槃なのです。」

茶「・・・良く分かりません。」


管「理解出来たら大変ですよ。何せ、理解を越えた話なのですから。厳密には、理解する前の世界の話なのですけど。」

茶「????」


管「それはさておき。絶対無を悟った場合の内面の変化についてですが、まず他の知識・情報と強引に結びつけて、勝手な勘違いや思い込みをする人間特有の悪癖が殆ど無くなります。この悪癖は肉体の認識能力に由来するものであり、悟るとその影響を受け難くなるのです。」

茶「どういう事でしょうか?」


管「人体と意識の分離が起きるのですよ。我々は肉体を自分だと思い込んで自己同一化しているのですが、悟るとその呪縛が解けるのです。その結果として認知の歪みや囚われが少なくなり、智慧が現れてきます。言動に現れない悟りなど無価値です。」

茶「・・・そうなんですね。」


管「人間は情緒的に成熟すると、強引な結び付けや思い込みをしなくなりますが、これは自己客観視と人生経験の産物であって、例えるなら認識能力の補正です。悟りは認識能力の無効・貫通による直知なので、本質的に違います。」

茶「・・・そういうものなんですね。」


管「理解しようとせず、体に通すだけで良いですよ。むしろ、そうしてください。単に私はこういう言い回しが好きなだけですし、私の話を正しいと信じる必要もありません。」

茶「そうですか・・・。」


管「絶対無の悟りを語る者は、割と居ます。そして道半ばの未熟者は、絶対無の悟りが真理そのものであるかのように語るのが常です。悟後の修行は円に例えられ、一周回って迷いも悟りも無い所に戻り、言葉では表現出来ない静寂に住するようになって、やっと一段落です。悟り終わって悟り無しです。」

茶「はぁ、そうですか・・・。」


管「また、悟ったからと言って、いきなり人格が完成する訳ではありません。悟りの体験は本物でも、人間としてはクズな輩も普通に居ます。今後は覚者だからと言って、即座に信用するような真似は慎みましょう。もちろん私の事も信用しなくて結構です。」

茶「はい。気を付けます。」


管「お話や資料を見る限りでは、伊勢菊理の言動には絶対無が現れていませんし、絶対無がもたらす大楽と自由についても言及していません。」

茶「そういえば、伊勢菊理は悟って楽になったとは言っていないような・・・。」


管「百歩譲って本物の覚者だったとしても道半ばの未熟者ですし、人間的にも指導者の器ではありません。ビジネスの世界にしても、いい加減な事を言う嘘吐きが生き残れるほど甘くは無いですよ。」

茶「そうですね、本当にそう思います。」


管「悟りを経験した事の無い人には、他人が悟っているかの判断など出来ません。私からすれば、伊勢菊理は覚醒などしていない勘違いさんに過ぎませんけど、それをいくら説明した所で誰にも理解する事は出来ないでしょう。」

茶「確かに、悟りの話は訳が分かりませんでした。」


管「悟りの真贋はさておいて、いち起業家として見ても、伊勢菊理は危険人物と考えて間違いありません。そして、世の中には多種多様な危険人物が犇めいています。今回の事は手痛い教訓として学び、二度と騙されないように気を付けてください。」

茶「・・・はい。」


管「悟り系カルトは厄介な存在です。心理カウンセラー、脱カルトカウンセラー、スピリチュアルカウンセラー、霊能者、占い師、いずれの手にも負えません。もし、伊勢菊理があと一年でも長生きしていたら、あなたは骨までしゃぶり尽されて、再起不能になっていた可能性が高いです。」

茶「本当にギリギリでした。・・・あの、一つ聞いてもよろしいですか?」


管「何でしょうか?」

茶「伊勢菊理は亡くなる前に、凄まじい生への執着を見せました。これは悟っていなかった事の証明になりますか?」


管「それは死をどう捉えているかの話になりますね。絶対無の悟りだと、死への恐怖が残っていてもおかしく無いですけど、そういう所だけでは悟りの真贋は見分けられません。」

茶「そうですか・・・。」


管「他に何かありますか?」

茶「伊勢菊理は、自己正当化と、責任転嫁と、悪口だけの人でした。そうと分かってもまだ、私の中には伊勢菊理を本物の覚者だと思いたがっている部分があります。何故、あんな人物を信じてしまったのかと悔しくて、悲しくて、やり切れません。」


管「覚者=人格者のイメージがありますし、毒親持ちはどうしても脇が甘くなりますからね。でも、伊勢菊理はもう居ないし、借金も返済しているのですから、あなたの人生はこれからですよ。」

茶「はい。頑張ります。ありがとうございました。」


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