花山院の出家(大鏡):現代語訳とくわしい解説(解説動画付き)・・・井出進学塾〔富士宮教材開発〕
こんにちは、井出進学塾(富士宮教材開発)です。
今回は、「花山院の出家(大鏡)」を扱います。
解説動画は、一番最初に試しにとったものなので、私としてはダメダメで恥ずかしいくらいです。
特に最初の方は、もうすこし細かく分けてとるべきでした。
動画は、リンク先のユーチューブページでご覧いただけます。
それぞれ、再生時間ものせておきます。
また、もう一度見る場合は左下の「もう一度見るボタン」を押してください。パソコンでご覧の方は、カーソルキーの「←」ボタンで15秒巻き戻し、「→」ボタンで15秒早送りができます。
タイトル後の時間は、動画再生時間です。こちらにも、解説動画のリンクを貼っておきます。(パソコンで、ご利用の方は別タグで開かれるので、こちらの方が使いやすいかもしれません。)
0(導入) 6分33秒
本文に入る前に出典など背景を確認します。
『大鏡(おおかがみ)』からの出典です。
『大鏡』は歴史書で、摂関政治で有名な藤原氏の全盛期を扱っています。
紀伝体といい、人物ごとにその活躍を追う形でまとめられています。
権力者である藤原氏をもてはやすのではなく、「批判的」というのが特徴です。
1(第1段) 19分41秒
第1段を扱います。教科書をお手元に置いて、いっしょに本文を写しながら説明を聞いてください。
用言の活用や助動詞の意味・活用などは入っているだろう、という前提で説明はすすめています。
危うい方は文法書などお手元に置いて、ポーズ・巻き戻しなどしながら聞いてください。辞書もお手元に置いておいた方がいいでしょう。
〔取り扱い個所〕
原文
『次の帝、花山院の天皇と申しき。冷泉院の第一の皇子なり。御母、贈皇后宮懐子と申す。太政大臣伊尹の大臣の第一の御娘なり。この帝、安和元年戊辰十月二十六日丙子、母方の御祖父の一条の家にて生まれさせたまふとあるは、世尊寺のことにや。その日は、冷泉院の御時の大嘗会の御禊あり。同じ二年八月十三日、春宮に立ちたまふ、御年二歳。天元五年二月十九日、御元服、御年十五。永観二年甲申八月二十八日、位につかせたまふ、御年十七。寛和二年丙戌六月二十二日の夜、あさましくさぶらひしことは、人にも知らせさせたまはで、みそかに花山寺におはしまして、御出家入道させたまへりしこそ、御年十九。世を保たせたまふこと二年。その後二十二年おはしましき。』
現代語訳
「次の天皇は、花山院の天皇(花山天皇)と申しました。冷泉院の第一皇子です。母は、皇后宮(と死後に尊称を与えられた)懐子です。
(懐子は)太政大臣の伊尹様の長女様でありました。花山天皇ですが、安和元年戊辰十月二十六日深夜、母方の祖父の一条の家でお生まれになったとありますが、これは世尊寺のことでございましょうか。その日は冷泉院が、天皇に即位して最初の新嘗祭である大嘗会の、(大嘗会の前に行う)みそぎの儀式がありました。安和二年の八月十三日、(花山院は第一皇位継承者である)春宮になります、このとき二才であられました。天元五年二月十九日に元服、このとき十五歳。永観二年八月二十八日、天皇に即位されました、こととき十七歳です。寛和二年六月二十二日の夜、とてもびっくりすることでありますが、人に知られないようになさって、ひそかに花山寺にお行きになって、御出家なさってしまいました、このとき十九歳です。天皇として世を治めなさっていたのが二年。その後、二十二年、御存命でありました。
1.5(人物関係の確認) 4分16秒
第2段に入る前に、登場人物の関係などを確認します。
「外戚」がキーワードでしたよね。
2(第2段落) 14分25秒
第2段に入ります。同じく、基本的な文法事項は入っている、という前提で説明はすすめますので、あやうい方は文法書などお手元に置いて、いっしょに教科書本文をうつしていきましょう。
「き」と「けり」の違いが、けっこうポイントですね。
〔取り扱い個所〕
原文
『あはれなることは、下りおはしましける夜は、藤壺の上の御局の小戸より出でさせたまひけるに、有明の月のいみじく明かかりければ、「顕証にこそありけれ。いかがすべからむ。」とおおせられけるを、「さりとて、止まらせたまふべきやうはべらず。神璽・宝剣渡りたまひぬるには。」と、粟田殿の騒がし申したまひけるは、まだ帝出でさせおはしまさざりける先に、手づから取りて、春宮の御方に渡したてまつりてたまひてければ、帰り入らせたまはむことはあるまじく思して、しか申させたまひけるとぞ。』
現代語訳
『しみじみと心を動かされることとしましては、(花山天皇が)ご退位されました夜は、藤壺の上の御局の戸口よりお出なさったそうですが、有明の月(明け方の月)がたいそう明るかったので、「目立ってしまうではないか。どうしたらよいのだろう。」おっしゃられるのを「そうかといって、(御出家なさるのを)やめるようなことがあってよいはずもございません。(天皇であることのあかしである三種の神器の)神璽・宝剣は(次に天皇になる予定である春宮様にすでに)お渡りになっているからには(もう遅いです)。」と、粟田殿が騒がしく申し上げなさったのは、まだ花山天皇がお出ましになられる前に、自ら(神璽・宝剣を)とって、春宮様の方へお渡し申しなさっていたからで、(花山天皇が出家をとりやめて)お帰りなさることはあってはならないことと思いなさって、そのように申し上げたということです。』
☆補足
「有明の月」はこの場合「明るくはっきりした月」と、とっているところも多いです。ここら辺になると、専門家の研究レベルの内容なのでどちらでもいいです。学校の授業に合わせてください。
3-1(第3段落-1) 4分13秒
〔取り扱い個所〕
原文
『さやけき影を、まばゆく思しめしつるときに、・・・』
現代語訳
『清々しく明るい月の光を、(花山天皇は)(出家するのに人目を避ける必要があるのに、月が明るすぎると困ってしまうので)まぶしいとお思いなさっていたときに、・・・』
3-2(第3段落ー2) 3分46秒
〔取り扱い個所〕
原文
『・・・月の顔にむら雲のかかりて、少し暗がりゆきければ、「わが出家は成就するなりけり。」とおおせられて、・・・』
現代語訳
『・・・月に雲がかかりまして、少し暗くなってきましたので、(花山天皇は)「私の出家は、成し遂げられるのであるなあ。」とおっしゃられて・・・』
3-3(第3段落-3) 3分30秒
原文
『・・・歩み出でさせたまふほどに、弘徽殿女御の御文の、日ごろ破り残して御身を放たず御覧じけるを思しめし出でて、「しばし。」とて、・・・』
現代語訳
『・・・歩いて出ていこうとなさったときです、(花山天皇は)(特に愛情を持っていた女御であり前年に妊娠中に亡くなってしまった)弘徽殿女御の手紙で、長い間破らずに残し、肌身離さずそばに置いてご覧になっていたものを、思い出しなされて、「ちょっと待ってくれ。」といって、・・・』
3-4(第3段落-4) 1分29秒
〔取り扱い個所〕
原文
『・・・取りに入りおはしましけるほどぞかし、粟田殿の、・・・』
現代語訳
『・・・(その手紙を)取りに戻ろうとしたまさにその時のことです。粟田殿が・・・』
3-5(第3段落-5) 3分42秒
〔取り扱い個所〕
原文
『・・・「いかにかくは思しめしならせおはしましぬるぞ。ただいま過ぎば、おのづから障りも出でまうで来なむ。」と、そら泣きしたまひけるは。』
現代語訳
『・・・「どうしてこのように(手紙を取りに戻るなんて)お思いになられてしまったのでしょうか。今を逃してしまうと、自然と(人目を避けて出ていくのにも)差し障りが出てきてしまうに違いありません。」と、ウソ泣きしたのは。』
次の安倍晴明が出てくる段落は省略します。
5-1(第5段落ー1) 1分07秒
〔取り扱い個所〕
原文
『花山寺におはしまし着きて、御髪おろさせたまひて後にぞ、粟田殿は、・・・』
現代語訳
『花山寺にお着きになられて、髪を下ろし(出家なさった)後のことです、粟田殿が・・・』
5-2(第5段落-2) 3分29秒
〔取り扱い個所〕
原文
『「まかり出でて、大臣にも、変わらぬ姿、いま一度見え、かくと案内申して、必ず参りはべらん。」と申したまひければ、「朕をば謀るなりけり。」とてこそ、泣かせたまひけれ。』
現代語訳
『「この場を離れさせていただいて、(私の父の)大臣に、(出家前の今までと)変わらない姿を、もう一度みせて、(出家することになった)事情をお伝えして、必ずここに戻ってまいりましょう。」と(粟田殿が)申し上げたところ、(花山院は)「私をだましたのだな。」といって、お泣きになってしまった。』
5-3(第5段落ー3) 3分11秒
原文
『あはれに悲しきことなりな。日ごろ、よく、御弟子にてさぶらわむと契りて、すかし申したまひけむが恐ろしさよ。』
現代語訳
『こちらの心が大きく動かされるほど悲しいことでありますなあ。数日来、よく、(粟田殿は、花山天皇と自分もいっしょに出家して、花山院の)弟子として仕えましょうと約束していて、その約束を破り申し上げられたであろうとしたと考えられますので、とても恐ろしいことです。』
5-4(第5段落ー4) 5分55秒
原文
『東三条殿は、もしさることやしたまふと、危ふさに、さるべくおとなしき人々、なにがしかがしといふいみじき源氏の武者たちをこそ、御送りに添へられたりけれ。京のほどは隠れて、堤のわたりよりぞうち出でまゐりける。』
現代語訳
『(粟田殿の父の)東三条殿は、万一、粟田殿が出家しなさることになったらと心配に思って、しかるべき思慮分別のある人々や、だれそれという立派な源氏の武者たちを、見送り(護衛)につけられていました。その人たちは、京の中では隠れていて、堤(を超えて京の郊外に入ってから)姿を出し申したそうです。』
5-5(第5段落ー5) 4分52秒
原文
『寺などにては、もし押して人などやなしたてまつるとて、一尺ばかりの刀どもを抜きかけてぞ守り申しける。』
現代語訳
『花山寺に入っては、万一、人などを使って無理やり(粟田殿を)出家させてしまうこともあるかもしれないとし、(武者たちに)一尺ほどの刀を抜きかけてお守り申し上げていました。』
以上です。ありがとうございました。
コメントなど、いただけると、とてもうれしいです。
執筆:井出進学塾(富士宮教材開発) 代表 井出真歩
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