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Helix Centre(ヘリックスセンター)

ヘリックスセンターとは

イギリスの首都ロンドンにロイヤルべビーが誕生したことでも有名なセント・メアリー病院があります。この病院の真ん中に、理系大学のインペリアル・カレッジ・ロンドンと美術大学のロイヤル・カレッジ・オブ・アートの共同事業としてHelix(ヘルスケアイノベーションエクスチェンジ)センターは立ち上げられました。

ヘリックスセンターの目標は、研究をエビデンスに基づくソリューションに変換することで、現実の医療問題に対処することです。様々なデザイン手法を用いて、問題を迅速に分析し、機会を想定し、解決策をプロトタイプ化します。

ヘリックスセンターでは、科学者、エンジニア、デザイナー、政策立案者、心理学者が医師、看護師、患者とともに新しいアイデアを探求し、プロトタイプの製品、プロセス、サービスへと共同開発しています。

日本医療デザインセンターでは、このヘリックスセンターの日本版を設立することを目標に精力的に活動しています。

この記事ではヘリックスセンターの業績を紹介することで、日本医療デザインセンターとして何ができるかを考察できればと考えております。本記事におけるヘリックスセンターの情報はこちらのweb siteをもとに記載しております。

※今後内部でワークショップを行いますので、それをもとに記事の加筆修正があるかもしれません。翻訳、要約の不備があればご指摘ください。

ヘリックスセンターの業績

ヘリックスセンターの過去の業績は大きく3つの分野で紹介されていました。

  1. 早期発見:新しい診断/スクリーニングツール

  2. 効果的な治療:デジタル臨床判断支援システム

  3. ホリスティックケア :ウェルエイジングのためのソリューション

これらについて個別にご紹介します。

早期発見:新しい診断/スクリーニングツール

病気の早期発見は、良好な健康状態をもたらす可能性と医療システムの効率性の両方を向上させます。 科学技術の進歩により、手頃な価格の家庭用診断・スクリーニングツールが高価な検査機器と同等の精度を持つようになり、 病院や診療所への出向く回数を減らすことができる様になります。

大腸がん検診の受診率向上

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英国では毎年41000人以上の方が大腸がんと診断されています。
大腸がん検診の受診率は58%にとどまっており、特にリスクの高い層での受診率が低いのです。
そのため、より多くの人が検診を受けるようにデザインしました。
そのプロダクトが、簡単に検体を採取できる「うんちキャッチャー」です。

https://helixcentre.com/project-bowel-health

新たな診断技術

自宅でできる簡易検査キット

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”画期的な科学とデジタルデザインの融合により、研究室を家庭へ”
セルフリーバイオセンサーは新たな診断技術として注目されています。
感染症や病気の特定のバイオマーカーの存在に反応するタンパク質を作ることで、唾液や尿などのサンプルを用いて検出が可能となり、低コストで家庭でも診断が可能となります。

https://helixcentre.com/project-diagnostics

効果的な治療 :デジタル臨床判断支援システム

急性期医療は複雑であり、さらに複雑化しています。
現場の医療従事者は、適切な患者さんに適切な処置を適切なタイミングで行うことができる様な、なるべく簡便なデジタルツールを必要としています。 私たちの仕事は、ベストプラクティスと臨床データに関する進化した知識を、 現場で複雑な判断を下す臨床医の手に届けることを目的としています。 私たちは、患者さんを治療するために複数のソースからデータやガイダンスを必要とする病院の学際的なチームと密接に連携しています。

Hark:クリニカルコミュニケーションプラットフォーム

タスク管理・共有アプリ

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より安全で生産性の高い病院を目指し、スマートフォンを用いた臨床タスク管理、共有アプリを開発しました。
患者に関する重要な情報を、必要な時に主治医に直接届けることができます。

https://helixcentre.com/project-hark

ReSPECT:緊急時でも個人に合わせた医療を

救急領域におけるDNAR確認フォーム

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イギリスでは、死亡者の約半数が病院で亡くなっています。
救急医療における終末期医療に関する課題は、より広い議論につながると考えました。
患者のために特定の臨床判断を行うために使用されるDNACPR(Do Not Attempt Cardiopulmonary Resuscitation)フォームが問題視となっていました。
終末期における課題のひとつは、臨床医が難しい会話をするためのトレーニングをほとんど受けていないことでした。

そこで各関連機関(蘇生協議会や王立医師会、王立看護大学など30以上の国家機関)と協力し生命維持治療に関する難しい会話の実施と記録の方法を再設計したのです。
開発したのは、医療従事者と患者、その家族との会話を改善したフォームです。
あるコンサルタントは、携帯電話やポケットに入るような簡単なものを教えてほしいと述べていました。
この新しいデジタルツールは、医療従事者が新しいプロセスについて学ぶことを可能にしました。

https://helixcentre.com/project-respect

複雑な薬を子供に投与する

急性期における小児の薬液量管理システム

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小児救急のための臨床判断支援システムの開発
小児に安全に薬を投与するには、医師や看護師が一連の難しい計算をしなければいけません。
重篤な患者をケアする際の緊急環境は、しばしば真夜中です。
そういった環境では複雑な計算の信頼性は非常に低くなってしまいます。
私たちは、現場の医療従事者が、最新かつ最も包括的な薬物情報を指先で操作し、デジタルツールで活用できるようにすべきだと考えました。

臨床医が緊迫した状況でも安全に薬を準備・投与できるようシステムを開発しました。
これにより、子どもたちに適した薬物の安全な投与量と投与方法を決定することができます。
また、これをより現実的なものにするため王立薬剤師会と英国国立フォーミュラリーと共同で「ライブデータベース」を構築しました。

https://helixcentre.com/project-emergency-medication

ホリスティックケア :ウェルエイジングのためのソリューション

健康な生活を送るということは、運動や食事、薬だけではありません。家族や友人、地域社会との強い結びつきがある人は、より健康で幸せな人生を送る傾向があるという証拠が増えつつあります。同様に、質の高いケアも、家族や介護者、地域に根ざした献身的な医療従事者との関係や相互作用の質によって推進されるのです。

認知症ラボ

スマートホームなどのデジタル支援システム

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認知症研究および認知症ケアにおける人間中心設計:

英国で認知症の有病率は増加しています。

認知症には有効な治療法がないため、主に医療の枠組みの外側で対処されていますが、 政府の支援により、認知症と闘うための治療法や社会的革新を見出す資金が増えています。

スマートホーム、機械学習、そしてインターネット対応技術による在宅勤務がもたらす新しいパラダイムは、適切な層が利用できるようになれば、より良いケアが可能となります。

介護者に対する対応も含めた、より孤立した人々に届く、デジタルと「現実世界」のコミュニティ支援のハイブリッドなアプローチを生み出すことに重点を置いて活動しています。

https://helixcentre.com/project-dementia-care

オントラック

アップルウォッチを用いたアプリ

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行動とデータの深い理解を通じて、神経リハビリテーションのためのスケーラブルでエビデンスに基づいたソリューションの開発:
腕の障害は、脳卒中患者にとって最も一般的な障害です。
回復には早期の集中的なリハビリテーションの実施が不可欠ですが、 伸び悩むサービスや何百時間にも及ぶ孤立した反復練習というハードルが困難になっています。
これをアップルウォッチを用いたリハビリツールでサポートします。

https://helixcentre.com/project-ontrack

子どもたちのホスピスケア

新しい子ども向けホスピスのための製品、サービス、体験のプロトタイピング

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医療の進歩で、より多くの子どもが病気を克服し、成人まで生きられるようになりましたが、残念ながらそうではない子どももいます。
そういった小児患者に対する緩和ケアは、生活の質を向上させることに重点を置いています。
イタリアのセラニョーリ財団が開発中の子ども向けホスピスは、専門家によるケアの方法を変え、家族とのケア体験を大きく向上させます。
具体的には 2つのプロトタイプを開発しました。

「コネクテッド・ガーデン」
自然の中で過ごすことを非常に重視していることが判明しました。
子どもたちや若者、家族が希望すれば自然の中で過ごすことができることを重視。
自然の中に身を置くことで、穏やかな気持ちや感謝の気持ちを呼び起こします。

「キアラ」
AIを搭載したチャットボットが、両親をホスピスに呼び込むのに役立ちます。
適切なタイミングで適切なサポートを受けるために必要と思われる情報を提供します。

https://helixcentre.com/project-childrens-hospice

死ぬまで元気に暮らす

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~個人、家族、専門家とともに、未来のホスピスケアをデザインする~

ホスピスは、英国で最も専門的で経験豊かな終末期医療を提供しています。
地域サービスや病院からホスピスへの紹介が少なすぎるため、患者は恩恵を受けられません。
寄り添う介護者の能力を高めることで、ケアの質を向上させる大きな機会があります。

https://helixcentre.com/project-live-well

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

オンラインACP支援サービス

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~すべての人のために 難しい話をスムーズにするデジタルサービス~

英国で毎年約50万人が死亡し、半数は病院で亡くなっています。
しかし、入院を希望する人はわずか8%しかいません。
ACPの作成は、医療を患者の希望に沿うようにするために非常に効果的ですが、入院している人の5%しかACPを持っていないのです。

家族や介護者、開業医と共有できる計画を作成することができるようにしたいと考えました。
臨床医には時間がないため、診療所や病院から家庭へと移したいと考えました。 

「アンバーケアプラン」
ACPのプロセスを簡単にする「アンバーケアプラン」は誰もが自宅で快適に行えるように設計されていました。
終末期について考え、計画するためのAI搭載のチャットボットでした。
2年間運用され2019にサービスが終了しましたが、「 AMBER CARE PLAN」は非常にインパクトがありました。
最年少のユーザーは18歳、最高齢は91歳と、幅広い層に訴求したと。
ほとんどの方が携帯電話を利用してプランを作成し、価値を実証できました。

https://helixcentre.com/project-advance-care-plans


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