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日本のデータサイエンティスト不足の現状とその打開策

背景

 現在、多くの会社が求人情報に多くのデータサイエンティストの募集が掲載されている。データの需要性が高まってきている為、企業にとってニーズ高まっていることを受けての求人公開という事になるがデータサイエンティストの育成には多大な時間を要することが以前のレポートから報告をされている。つまり、簡単には採用をすることができないという事になる。採用できないとなると育成という考え方になるが、育成の現状に関してレポートをまとめてみる事とする。

「データサイエンティストの各国の現状」のレポートはこちら
データサイエンスの各国の現状 〜日本〜
データサイエンスの各国の現状 〜中国〜
データサイエンスの各国の現状 〜米国〜


現状

 理想としては、産官学+サービスベンダー連携が理想とされている。

図1

(参照:https://eventregist.com/e/dsfesmid

 データサイエンティストの育成に関しては、前述の通り時間がかかるという課題がある。特に、最近の分野であるために社会人向けや短期養成といったコースを提供している企業が多い。


産官学それぞれの取り組み

 産官学のそれぞれの取り組みを見てみると、大きく3つの動きに大別される。

 ・データをオープンにする事によって解決策を得る手法
 ・企業独自で取り組みノウハウを得て手法を確立
 ・教育として取り組む方法

 主に産業界が状況を認識してさまざまな工夫が生まれている。官庁からの指針は経済産業省を中心に素晴らしいものが提示されているが、実行段階に移すまでには時間がかかっている印象であり、教育関連も一部で先進的な取り組みとして進んでいるが、全体的な取り組みとなるまでにはもう少し時間がかかりそうである。


【データをオープンにする事によって解決策を得る手法の事例】

 SIGNATEはデータサイエンティストの不足とデータサイエンティストの実践的な育成を兼ねた、デーサイエンティストのオープンプラットフォームを実現している。
登録会員は2021年1月時点で4万人を突破し、社会人73%、学生27%、半数以上が修士過程卒というプロフィールになっている。

 事例として、JR西日本がこのプラットフォームを活用して「着雪量予想」のコンペティションを行った際のインタビューがこちらの内容となる。
着雪量予測コンペティション:https://signate.jp/articles/competition-jrw-20210329


【企業独自で取り組みノウハウを得て手法を確立する事例】

 各企業が独自で必要性を認識して各社で取り組んだ結果をノウハウとしてまとめ、ビジネス展開を行なっている。


オージス総研
 オージス総研では、デジタルトランスフォーメーションを軸に「OGIS-Creation Style」としてその一部にデータサイエンティスト育成と関わりの深いプログラムが含まれている。イメージとしては、データは答えを導くための要素というスタンスをとっており、あくまでもビジネス課題の解決に主眼を置いた内容となっている特徴がある。

図2

図:OGIS-Creation Style(https://www.ogis-ri.co.jp/product/s104781.html

 これらのフレームを活用し、企業のデジタルトランスフォーメーション担当者に向けた研修トレーニングが開発されている。
(DX人材育成研修:https://www.ogis-ri.co.jp/learning/l106211.html


JFEスチール
 社内教育体制を整えて、350名のデータサイエンティストを養成し、体系立てて以下のような形でまとめている。

図3

(参照:https://www.jfe-steel.co.jp/release/2019/10/191017.html

 ガートナーが提唱するAugmented CustomerはDS利用者、シチズンデータサイエンティストはDS活用者と定義をしているように推測され、2019年度のプレスリリースでここまで取り組みが進んでいるという事は先進的な取り組みを既に行えている企業と考えられる。


三菱総研DCS
 「データ分析を定着させる7つの条件」を提唱。社内でのトレーニングで得た独自ノウハウの体系化に成功している。トレーニングの実績で体系化されたツールを営業ツールとしてウェブに展開、活用をしている。
https://www.dcs.co.jp/lp/analytics/


教育として取り組む方法
 教育機関の動きとしては、文部科学省と経済産業省が今年の2月に「数理、データサイエンス、AI教育認定プログラム」の検討が始まったばかりである。
(募集要項:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/suuri_datascience_ai/00002.htm

 現在、日本国内でデータサイエンティストを目指せる可能性がある大学として50校が存在する。
大学のリストは、以下のURLで参照できる。
(参照:http://scienceandtechnology.jp/archives/13026


まとめ

 データサイエンティストの育成に関して産官学の視点から見てきたが、産業界が主導で動いている事がよくわかる調査結果となった。産業界主導の中で多く見られたのは、組織全体にデータ活用の文化を形成することと、それを定着させる事が大切という内容が多く見られる。

 米国のレポートでは、育成に多くの時間(約10年)がかかる事が報告をされているように、専門的な知識が必要とされる分野である為、現在の知識や知識を活かしていくための工夫が見られる。

 今後、データサイエンティストは一般的な役割となってくる事は間違いない。組織に関わる全ての人がデータをただのKPIの一つと捉えず、事実や方向性を導き出す要素としてのエンジンになる状態はますます加速していくだろう。

 例えば、分業という考え方を取り入れれば、データサイエンストに関する全ての習得は難しくてもチーム化する事でデータサイエンスに関する取り組みを進めることが可能となり、さらにAIを活用した運用設計次第ではデータサイエンスの組織を企業の中に組み込むことは可能である。データをはじめとした情報を活用する事は組織運営に欠かせなくなってきているが、本レポートや関連レポートで現状を認識して取り組むことでビジネスの価値は上がるものと推測される。

次回は、米国のエキスパートより、米国の状況をご紹介いたします。