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養育費と養育時間:子どもに利益をもたらすための組合せの改善

 この記事は、アメリカ合衆国保健福祉省(HHS)の「Child Support and Parenting Time: Improving Coordination to Benefit Children」を翻訳したものです。
 HHSはアメリカの政府機関の1つで、日本の旧厚生省に相当し、全てのアメリカ人の健康を保護し、重要な社会事業を提供することを目的としています。

子どものウェルビーイングと家族の自立の促進
養育費履行強制庁
子ども家庭局
アメリカ合衆国保健福祉省

養育費ファクトシートシリーズ第13弾
養育費と養育時間:子どもに利益をもたらすための組合せの改善

 両親と前向きな時間を過ごすことは、子どもの幸福を促進し、養育費支払いの改善につながります。未婚の親は、養育時間命令に関する支援を体系的に受けることができないため、州および地方の養育費制度は、このサービス格差の解消を目指してきました。このファクトシートでは、養育費命令と育児時間の取決めを組合せている州と郡を取り上げています。養育時間に取り組む際、ファミリーバイオレンスの保護措置は常に重要な要素です。

養育費と養育時間命令の関連性

 社会保障法第Ⅳ章D編に基づいて認可された養育費制度は、父権の確立、非監護親の居所特定、養育費命令の確立と履行強制によって、子どもと離れて暮らす親が子どもに対する経済的義務を確実に果たせるようにする上で重要な役割を果たしています。養育費制度は、子どもの4人に1人、貧しい子どもの半数にサービスを提供しており、両親を含む多くの家族の生活に長期間にわたって影響を及ぼしています。養育費制度は、家族中心のサービスを提供することにより、親同士の関係および親と子の関係を支援します。この支援は、子どものウェルビーイングと安定した養育費の支払いの両方にとって極めて重要です。
 子どものウェルビーイングは、両親からの積極的かつ一貫した感情的支援と経済的支援によって向上します。両親の両方が子どもの生活に積極的に関わり、子どもを養い、両親の仲が良く、家庭内虐待や暴力がない場合、子どもはより良い生活を送ることができます。養育費の受給は、幼児の認知発達の向上や年長児の学業成績の向上など、子どものウェルビーイングの向上と関連しています。父親の関与は、子どもの社会的行動、認知的行動、そして学業的行動をポジティブな形で著しく向上させます。例えば、父親が関与している子どもは、幼少期と青年期の両方において、より大きな精神的安定、より少ない抑うつ、より僅かな行動問題を示しています。但し、ドメスティックバイオレンスの保護措置は、親が養育計画を立てるのを支援するプログラムに不可欠です。
 調査によると、経済的支援と精神的支援は相互に関連しています。即ち、子どもに関与している監護権のない父親は養育費を支払う可能性が高く、養育費を支払う監護権のない父親は子どもの生活に関与し続ける可能性が高いのです。国勢調査局のデータでも、監護と訪問の取決めをしている親は、養育費を受け取る可能性が高いことが一貫して示されています¹。 また、監護下にない子どもとの親の接触を改善するために考案されたプログラムも、養育費支払いの向上に関連しています。例えば、州の「面会と訪問」プログラムの参加者を対象とした幾つかの研究では、養育時間が改善されると、養育費の支払いが増加することが示されています²。
 現在、出生時に両親が結婚していなかった子どもの養育時間について、家族が取決めをするための体系的で効率的な仕組みはありません。離婚する親の多くは、家庭裁判所での離婚手続きの一環として、養育時間の責任を定めます。しかし、養育費制度とその他の家族法制度は別個のものであることが多く、未婚の親は養育費と養育時間の問題を解決するために複数の、しばしば重複する法的手続きに参加する必要があります³。州または地方の裁判所制度は、子育てに関する紛争を解決する方法を提供しますが、通常、これには親が別の法的手続きを開始する必要があります。そして、複数の法的義務や責任を明確にするために、経済的に余裕のない多くの家庭は、法的代理人の恩恵を受けることなく、複雑な法制度を利用しなければなりません。養育費プログラムはこのギャップを埋めるために、往々にして、裁判所や面会と訪問プログラムと連携して活動を始めています。
 養育費と養育時間は、通常、異なる州法によって管理される別の権利ですが、養育時間は、養育費の確立にとって重要な要素です。養育費機関は、養育費のガイドライン額を効果的かつ正確に計算するために、通常、養育時間の取り決めに関する情報を必要とします。これは、多くの州において、養育費の計算が、子どもがそれぞれの親と過ごす時間によって左右されることが多いためです。
 養育費の計算と養育時間の量の両方を同じプロセスの一部として扱うことは、効率を高め、複数の行政プロセスや司法プロセスに関与することによる両親の負担を軽減することができます。養育時間に関する構造化された正式なアプローチは、両親の共同養育関係の管理に役立ち、養育時間の取決めに関する対立、あいまいさ、予測不可能性、不確実性を軽減し、養育費の遵守を高めることができます。子どもは、両方の親と安全で前向きで一貫した接触を持つことで利益を得ることができます。
 ファミリーバイオレンスを経験した家族を安全に支援することは、養育時間プログラムにとって不可欠です。非監護親の多くは暴力や虐待をしませんが、親が子どもと過ごす時間を増やす戦略を実施する際には、安全が優先されます。これは、非監護親が関与する機会が増えることで、ファミリーバイオレンスが増加する可能性を含む課題やリスクが生じる可能性があるためでもあります。ファミリーバイオレンスには様々な形態があり、家庭内の特徴やパターンを認識することは、子どもにとって安全で実行可能な養育時間の機会を策定する上で重要です。また、ファミリーバイオレンスを経験した親に力を与え、その意思を尊重することも重要です。養育時間が適切でない場合もあれば、監視付き訪問が有用かつ適切な代替策となる場合もあります。
この満たされていないサービスのニーズを満たすために、養育費プログラムは、特に子どもの出生時に結婚しておらず、そのため、離婚手続きを通じて養育時間の援助を受けることができなかった親に対して、最初の養育費命令で養育時間の合意を結ぶ機会を提供する連携と戦略の開発に着手しています。更に、州および地方の養育費支援機関が養育時間戦略を開発、試行、評価する機会を提供するために、OCSEは、養育費支援プログラムの対象となる子どもの養育時間命令を確立するための安全で効率的かつ効果的なプロセスを構築する方法について詳しく学ぶために、「子どものための養育時間の機会」パイロット補助成プログラムを設立しました。パイロットプログラムの詳細については、関連ファクトシートをご覧ください⁴。

養育時間を確立するための既存の養育費プログラム構成要素の例

 一握りの州は、後述するように、最初の養育費命令に養育時間の合意を組み込む養育費プログラムの取組みを行っています⁵。プロジェクトの多くは、両親がすでに時間の分割に同意している場合、子育ての取決めを後日のために残しておくことに焦点を当てています。ドメスティックバイオレンスに対する保護措置は、これらのプログラムの重要な部分を占めています。
 これらのプログラムの多くは、裁判所や他の機関との連携によって支えられています。州の養育費プログラムは、社会保障法第Ⅳ章D編の下で提供される養育費プログラムのマッチング資金と他の資金源によって、家族中心のサービスを提供しています。このような他の資金源には、OCSEからの競争力のある助成金や、州の面会訪問会助成金が含まれています。また、他の組織と提携し、他の資金源から提供されるサービスを利用する場合もあります。

ミシガン州

 ミシガン州では、「裁判所の友(FOC)」プログラムおよびメディエーション・サービスを通じて、養育時間の確立を支援しています。養育計画は、最初の養育費命令と同時に定めるのが一般的です。裁判所が、養育時間が適切であると判断した場合、FOCは親の訪問や子どもとの面会を監督、促進する役割を担っています。これには、メディエーション、監視付き訪問、監護権および養育費の履行強制、養育時間の遵守などの機能を提供することが含まれています。
 ミシガン州では、最も一般的な養育時間の取決めに関連する問題に対処するために、FOCの職員と親が使用するための提案や推奨事項を提供する養育時間ガイドラインのマニュアルを提供しています⁶。親がFOCの助けを借りて、養育時間に関する懸念に対処するための動議を提出し、審理を予定することもできます。ミシガン州は、これらの機能の実行を支援するべく、確実にこれらの問題を適切に特定し、対処するため、職員に広範なドメスティックバイオレンス・スクリーニングと研修⁷を提供しています。

テキサス州

 養育時間の取り決めを養育費命令に組み込む、恐らく最も標準化された州全体のプログラムはテキサス州のプログラムです。テキサス家族法に従い、現在、養育時間の取決めは最初の養育費命令で定められているため、養育費命令を受けた親は、「子の引取り命令」と呼ばれる養育時間命令も受けます。テキサス州では、ドメスティックバイオレンスの申立てのある事件では特別な議定書が定められていますが、そのような事件は行政的より寧ろ司法的に判断されるためです。ドメスティックバイオレンス・アドボケイトとの協力により、テキサス州の養育費プログラムは、ドメスティックバイオレンスの被害者が安全に養育費命令や養育時間命令を定められるように、強力なドメスティックバイオレンス保護措置を備えています。これには、養育費を安全に取得するための専用ウェブサイトや、州全体の養育費ドメスティックバイオレンス研修の取り組みが含まれています⁸。テキサス州では、弁護士が養育時間や養育費に関する法的情報や支援を無料で提供する全国的に有名なホットライン⁹、子どもと親が彼らのスケジュールを作成するのに役立つシールカレンダー¹⁰、親のためのバイリンガルのウェブサイト¹¹など、共同養育に関する親を支援する多くの機会を提供しています。

 養育時間の取決めを養育費命令に含めるプログラムの中には、州全体より寧ろ、郡や地域レベルで運営されているものもあります。以下は、地域のプログラムの例です。

カリフォルニア州オレンジ郡

 カリフォルニア州には、家庭裁判所で本人訴訟する人に無料で法的支援を提供する州レベルの「家族法ファシリテーター・プログラム」が存在します¹²。オレンジ郡では、家族法ファシリテーター局は、養育時間について親を支援することができます¹³。家族法ファシリテーターは、顧客に一般的な法律情報を提供し、裁判所の書式や法的提出物について個別に支援します。弁護士が直接代理を務めることはありませんが、同局は養育時間や養育費に関する情報を持っており、法的な紹介をすることもあります。

ミネソタ州ヘネピン郡

 ヘネピン郡は、父子関係、扶養、養育時間を定める専門の「共同養育親」法廷を運営しています¹⁴。ヘネピン郡の養育費履行強制部門はこの裁判所のパートナーであり、養育計画は最終的に裁判所命令の一部となります¹⁵。ドメスティックバイオレンス団体もこの専門裁判所のパートナーであり、ドメスティックバイオレンス・アドボケーターが全ての法廷審理に出席しています¹⁶。裁判所は、親に子育て教育ワークショップへの参加を義務付け、個別の事案管理とメディエーション・サービスを提供しています。

 上記のプログラムに加えて、サウスカロライナ州、コネチカット州、ハワイ州、オハイオ州、及びテネシー州の一部の司法区における幾つかの郡のように、少数の州や郡の養育費機関が、養育時間命令の組合せを、しばしば特定の資格基準を持つプログラムを通じて、支援しています。ノースダコタ州のように、養育プログラムが親に養育時間に関する情報をオンラインで提供している州もあります¹⁷。その他の州では、法的サービス提供者を紹介したり、養育時間の問題に関する法的支援に関する情報を提供したりしています¹⁸。

参考文献

1. アメリカ国勢調査局報告書「監護権を有する母親と父親とその養育費」: 2009 (発行2011.12), 以下のアドレスで入手可能 at: http://www.census.gov/prod/2011pubs/p60-240.pdf.
2. アメリカ保健社会福祉省監察総監室の報告書「面会と訪問助成プログラムの有効性」, OEI-05-02-00300 (2002),以下のアドレスで入手可能: http://oig.hhs.gov/oei/reports/oei-05-02-00300.pdf. この研究では、4つの州でメディエーション・プログラムに参加した非監護親において、訪問と養育費の遵守の両方が増加したことが判明した。この研究では、メディエーション・サービスを受けた後、毎月の養育費の支払いが1件あたり$56上がったと推定している。別の研究では、様々なタイプの面会と訪問プログラムに参加した非監護親の3分の1から2分の1が、プログラム参加後に親子の接触が増加したと報告している政策研究センター報告書「養育費と訪問プログラム:参加者のアウトカム」:以下のアドレスから入手可能http://www.acf.hhs.gov/programs/css/resource/report-on-child-access-and-visitation-programs-participant-outcomes
3. 養育時間とは、一般的に、子どもが各親と過ごす時間のうち、裁判所が定めた時間のことを指します。
4. 「子どものための養育時間の機会裁量的助成金」OCSEファクトシート
5. 現行法では、州は第Ⅳ章D編の資金を養育時間サービスの支払いに充てることはできない。
6. http://courts.mi.gov/Administration/SCAO/Resources/Documents/Publications/Manuals/focb/pt_gdlns.pdf
7. http://courts.mi.gov/education/mji/Publications/Documents/FOC-DV.pdf
8. http://www.tcfv.org/resources/get-child-support-safely
9. https://www.oag.state.tx.us/cs/access/
10. https://www.oag.state.tx.us/AG_Publications/pdfs/calendar_visitation_web.pdf
11. http://www.lanwt.org/txaccess/
12. http://www.courts.ca.gov/selfhelp-facilitators.htm
13. http://www.occourts.org/directory/family/facilitator.html
14. http://co-parentcourt.org/
15.http://co-parentcourt.org/vertical/sites/{EE8EBA77-CE3F-47D9-B208-CC6DB2DA3187}/uploads/CPC_Parenting_Plan_ Template_2012.pdf
16.http://co-parentcourt.org/index.asp?Type=B_PR&SEC={96EAAD20-B0D0-4D0E-AC5F-BD5D4798E4D3}
17. http://www.nd.gov/dhs/services/childsupport/parents/visitation/
18.http://www.acf.hhs.gov/programs/css/resource/access-to-justice-innovations

2013年7月

[訳者注]OSCE Organization for Security and Cooperation in Europe
欧州安全保障協力機構のこと。OSCEは、ヨーロッパ、中央アジア、アメリカから57カ国が参加する世界最大の地域安全保障機構で、バンクーバーからウラジオストクまで広がる地域に包括的かつ協力的な安全保障をもたらす。

(了)

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