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惨劇のだいたいは台所

無題

「圧縮しています」
液晶が
1秒に満たない速度で映した言葉は
わたしを圧縮するには充分だった
だれかは歌を圧縮し
ひとに追えない速さで歌いはじめた
ミュージックツールの時代
会話を諦めた笑顔で
意味の圧縮
望遠鏡に潰れるほど近い未来だ
研ぎ澄ましたことばすら
痩せ細り
省略
奪われた、言語野
圧縮されてなぞれない本質を
ことばのかたまりを
共通の言語のように
違う星からやってきた顔で
(だれもみな「ひとり」という惑星だ)
(話すことをだれが許すのだろう)
削除しますか、と
記憶
圧縮されて、ゆく
要領よくいきるのだから

指で打って詩人は言う
伝えることすら諦めた声音で


眠れずにパケを追い焚きならぬ追い眠剤を投入しているがどうせこれも気休めなのだろうなとどこかで諦観していた。
タピオカが再び流行る世界があるのならふたなりがもう一度流行る世界が来たっていい気がするけどここまで書いてふたなりが流行っていたセカイはそれすなわち青かった私の脳内だと思い至り苦笑い。

夜明け特有の湿り気を残した地蔵尊の供花に五月の終わりを感じて、なんとなく家へダッシュしセンチメンタルちゃんこと飼い猫を撫でまわして輝かしき未来を見据えた見知らぬ子供の安否を頼んだりしてみる。
それから大人になってしまったなぁと思い、なんとなくそのお地蔵様の見守る交差点の向こう側の母親の元へ走り去る最中、煽り運転中のプリウスに撥ねられて血を流す8歳児を猫の毛に噎せながら思い浮かべてみる。

なんと稚拙だろう、なんて王道だろう、なろう小説じゃないか、0点だ、落第だ、モンティホールをしたり顔で出してくる漫画ぐらいクソだ、と反省して上級国民に置き換えてみる。いや違う違う違う、そうじゃないだろ。なにがそうじゃないだろ、だお前がxぬべきだ噛むな、噛むな猫2号、そうこれはソースか醤油かの話ではないだろう。嗚呼、死んでしまったのは私の頭ではないか、困った、こいつの消費期限はもうとうに時効だった。

明朝の吹く風は湿度を纏っていても、まだ涼しくてこのまま何処へなりとも行ける気にさせてしまう。何処へ、なんて野暮なことは言わせないでくれよ、たいした場所じゃない。

結局何処へも行くことが出来ず思索、いつから何故こんな風に彷徨っているのかを問うてしまって何も為さずに部屋へ帰ることも解っているのだけれど、25になってしまった私にはそれが経験的に知れてしまったのだけれど、という敗北に屈するわけにはいかない。
情念の死を見送る耽美さはそれはそれで綺麗だけれど、余所でやればいい、誰かがやればいい、それはもうきっと私の仕事じゃあない。

夕暮れの満員電車から見送る在りし日の坂道も信号待ちで並ぶ二人乗りの少年達も狂ったゲインで掻き鳴らすジャズコーラスも、それはもう私の仕事じゃあないんだよ。

誰が決めたの?と数学の出来ない彼女は揶揄うようにして笑う、嘲るように嗤う。

過ぎ去りし日の落とす影だと知れていた。そしてそれは紛いもない幻想だ。

ポリエステルで作られた青い花、燃やしてみれば有害ガスを放って灰にもなれない紛い物。

そんなものを大事そうに抱えて、死んでいくのでしょう?

ああ薔薇、純粋なる矛盾。

誤魔化すなよ。おやすみなさい。

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