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小学校に情報科は必要か

私自身は、まだこの問いについての明確な答を持ち得ていないのですが、次期学習指導要領に向けて、これはかなり重要な論点になるのではないかと思っています。

それについて注目すべき発信があったので、紹介しつつ見ていきましょう。

New Education Expoでの、宮城教育大学附属小学校と印西市立原山小学校の取り組みを中心にした発表についての記事です。非常によくまとまっていて、両校がどういった取り組みをされているのかをつかむことができます。

また、みんなのコードからは、小学校だけでなく、中学・高校までの12年間の情報教育を見据えた提言も出てきています。

12年間の情報教育を体系的にまとめた提言になっており、異論はあるかもしれませんが、十分、議論の基礎になり得るものだと思っています。

ただし、本当に小学校に情報について教える科目をつくりたいのなら、避けては通れない議論があるはずですが、それに対する明確な答は得られませんでした。そう、「新しく教科をつくるなら、その分、どこを削るのか」です。

先の記事で該当する箇所を見てみましょう。まず、宮城教育大附属小について。

時間数は、低・中学年は年間20時間、高学年は年間35時間。各教科の時数から少しずつ情報科に割り当てているので、子供たちが学ぶ総時数が増えているわけではない。

次に印西市立原山小について。

なお、「情報探究科」の時数は低学年が年間70時間で、中学年、高学年は年間105時間。総合的な学習の時間と各教科から振り分けているので、子供にとって授業全体の時数が増えているわけではない。

どちらも総授業時数は増えていません。つまり既存の教科を削っているわけです。学校単位であればその調整は何とかできるかもしれません。しかし、国単位でやるとなったら(学習指導要領レベルとなったら)記事では、ライターの狩野さんがまとめの部分にこう書かれていました。

なお両校から指摘があった通り、情報科を独立した教科にする場合は、既存の他の教科の学習内容や時数を調整することが必須だ。教科ごとに「教えたい分量」を詰め込んで持ち寄るだけでは、子供の負担は増えるばかりだ。子供の負担の総量を教科を越えて点検し、子供にとって「無理なく身につく全体量」を見定めて調整する視点がほしい。

おっしゃることはもっともです。では、国語とか社会といった既存教科から「うちは精選してここを減らせますから情報でどうぞ。」といった提案が出るかといったら、まあ出ないでしょう。

本当に情報についての教科をつくりたいなら、例えば年間35時間確保したいなら、どうやってそれを確保すべきかも提言しなければ、それは本気とは言えないと私は思っています。

例えば。(例えば、と断っても、こんなこと書いたらあちこちから色々と飛んでくるかもしれませんが、非有識者なので書いちゃいますけど…)

「国語の情報に関わる部分は新設される情報科で全て引き受けますから国語から年間◯時間ください」
とか、
「算数の多角形のところ、プログラミング教育と絡めて情報で扱いますから算数から年間◯時間ください」
とか、
「書写の時間、半分ください。情報に係る内容の方が生成AI時代を生きる子どもたちには重要な能力です」
とか、
「熱中症警戒アラートが出て授業ができないことも多いですから、体育は6月から9月まで無しにしましょう。その分、情報科に年間◯時間ください」
とか。

何かが飛んでくる音が聞こえそうですが、でも、本当に小学校に情報に関わる教科を作りたいなら、そういう議論をしかけていかないと、本気だと思ってもらえないのではないでしょうか。

では、自分はそういう議論をしかけていくほど、小学校における情報科設立に熱心かというと、そこまでまだ思いきれていません。理由はいくつかあるのですが、もっとも大きい理由は「情報科ができたら、ICTに関することは全部情報科にお任せ。既存の教科では無理してICT使わないよ」という風になりはしないかな、というもの。

そんなことになるのだったら、既存の教科でどうICTを活用していくか、その中でどうICTについて教えていくかを考えた方がいいかな、と夢想するからです。

いずれにしても、これ、なかなか難しい問題であるように思います。とはいえ「こんな必要性があるから情報科が必要です!」と訴えるだけでは進展は望めないでしょう。「情報科が必要なのはわかるけどさ」で終わってしまうことは容易に想像がつきます。

打って出るか。静観するか。そろそろ考えないとな、と思うのでした。

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