菅政権のやり方は、ナオミ・クラインの言う「ショック・ドクトリン」(災害資本主義)である
5月に入ってから「国民投票法案」「デジタル法案」というわれわれの生活に直結する重要法案が次々と可決された。これは、新型コロナによる非常事態宣言拡大という「災害」に多くの人々が目を奪われている隙を突いた災害時の例外を恒常化する行為である。
緊急事態特別措置法制定時から、野党第一党の立憲民主党は、新型コロナという災害に対応するためという非常時の例外的対応ということで、政府の権限を強化する道を邁進している。
以下、5月12日(木)朝日新聞より引用する。
特に「デジタル法案」については、63本の新法や改正案が一つに束ねられたため、国会提出後に要綱などに計45カ所の誤りが発覚するなど「突貫工事」の弊害を露呈させた。
国会審議も、通常の重要法案なら、新年度予算が成立した後に審議入りするのが慣例なのに、「デジタル庁」の9月創設に間に合わせるため、予算成立前に審議入りするという異例の展開となった。
質疑では、マイナンバーと預貯金口座をひもづけることで災害時に口座照会ができるようになる法案をめぐり、立憲の小沼巧氏が「過去10年、法案がなくて困った事例はどの程度あるのか」と質問政府側は「東日本大震災の時にはあった」とあいまいな説明しかできず、「なぜこの法律が必要なのか疑問。立法事実がない」と指摘した。
衆議院内閣委での審議は27時間25分だけ。衆院通過時には、野党や日本弁護士連合会などが指摘していた個人情報保護の強化など、政府への注文として28項目もの付帯決議が付いた。参院内閣委員会で審議時間も5日間で約25時間しかなかった。
参院で審議入りした4月14日、米軍横田基地(東京都)をめぐる訴訟の原告団の名前や生年月日、年齢、職業などが、「匿名加工」して民間への提供対象になっていた問題が発覚。防衛
省は提供対象から外すよう方針の転換を迫られた。
問題を指摘した共産の田村智子氏は「国民への監視、市民活動の萎縮につながる」と批判。このほか、国立大学の入試の点数や授業料免除者のリストなども提供対象になっていた。
田村氏は「本人同意なき利活用をさらに大規模に促進することは、個人情報保護、プライバシー権の保護を後退させる」とし、改正法案では個人の権利の保障が不十分だと指摘した。
そもそも個人情報を一人ひとりが主体的にコントロールできるのかといった根本的な問題についても議論は不十分なままだった。