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24年6月20日付 朝刊「国の指示権拡大 改正地方自治法成立」の恐ろしい意味とはなにか?

第1章 災害の違和感~立ち止まれますか?
災害ショックドクトリン   危険な閣議決定はこっそりと

 1月17日。
 政府が月末に始まる国会に出す、ある法案の中身が公表されました。
 その名も、「地方自治法改正案」。
 政府が「緊急事態」と判断したら、「閣議決定」一つで、地方自治体から主権を奪い、速やかに国の指揮下に置くというルールです。
 都道府県は、国の指示に従わなければならず、方針が決められる際には、必要資料なども出さなければなりません。
 今回の地震で、〈初動が遅い〉〈ボランテイアに来るなと県が過剰に拒否したことで、被災地に物資が十分届いていない〉〈知事の動きがとても悪い〉など、政府の対応に国民の不満とストレスが最高潮に高まったタイミングを見計らって、出てきたような法改正でした。

2024年6月20日 朝日新聞

地方自治法改正案のポイント

●非常時であれば、個別法に規定がなくても、国が自治体に必要な指示ができる
●閣議決定を経るのが条件
●自治体は指示に応じる法的義務を負う

●国が非常時への対処方針を検討する際、自治体に資料の提出を求められる

 出典・共同通信2024年1月17日付

「緊急時に、国の統制力をしっかり強め、行政の混乱を防ぐために改正しました」
 知り合いの経営者にこの話をすると、彼はこういいました。
「政府の判断はやむないね。あんなに初動が遅いと、助かるものも助からないんだから。
いまだに被災者が体育館に雑魚寝している映像を見ると気の毒でならない。維新にべったりのあの知事は、万博で頭がいっぱいだそうじゃないか(次また他の地域で地震が起きたら、国が指揮をとつてすぐ対応できるようにしておくしかないだろう」
 本当にそうでしょうか?
 たしかに国連の報告書によると、日本は地震の規模、発率ともに世界4位の災害大国です。日本に住んでいる限り、能登の惨事は他人事ではありません。
 でもここで、 一旦立ち止まってみましょう。
 政府が急に〈法改正〉を言い出した時は、まず、今の法律が、どうなつているかをチェックしてみて下さい。
 案の定、〈災害対策基本法〉第108条の3に、国は緊急事態の時、国民に協力を要求できる、とちゃんと書いてあるではないですか。
 わざわざ今このタイミングで、「緊急事態に国からの指示に従う」ことを義務化する必要はありません。
 なのにあえて、それをやる。「違和感」のアラームが鳴りはじめます。
 次に〈地方自治法〉の方を見てなると、第245条の2に、「法律がなければ、国または都道府県は自治体に関与できない」と書いてありますから、国と地方は、そもそも上下ではなく、対等な関係のはずですね。
「能登半島地震」のどさくさに便乗し、閣議決定一つだけで、地方向治体に政府のいうことを開かせる法改正をするのは、 一体何のためでしょう?
 これはまさに、岸田総理の悲願である、「憲法改正」の中の「緊急事態条項」の地ならし、地方から外堀を埋めてゆく作戦に他なりません。
 権力を中央に集中させ、憲法92条が定める地方自治の柱を根底から揺るがし、日本という国のあり方を変えてしまう危険な法改正です。
 ちなみに閣議決定というのは、内閣が「基本的な方針」を会議で決めるだけ、野党から反対意見が出るわけでもなく、とっても手軽で簡単です。
 えっ、そんな重要なルール変更なら、なぜ誰も騒がないの?
 答えは、国会審議をしていないからです。
 そのせいで、中継もされず、話題にもならず、国民のほとんどが、気がついていません。
 思い出して下さい。

 パンデミックやウクライナ紛争など衝撃的なニュースの陰で、いくつもの重要法案が静かに通過していたように、私たち国民にとって重要な法律ほど、知らないうちに通されてしまう、この国のパターンを。
 ここまで読んで、あっ、と気がついた読者もいるでしょう。
 地方自治法改正の中身が公表された日、テレビのコメンテーターもSNSも
国民感情も、ある別なニュースにジャックされ、それどころではなかったことに。
 パーティ券の売り上げをキックバックされた安倍派幹部議員7人が、不起訴にされたというビッグニュースに、国民は激怒していたからです。
 ワイドショーは検察への批判コメントで盛り上がり、スポーツ紙の見出しもこれ一色。さらにこの日に『週刊文春』が、『ダウンタウン松本人志の性加害スキャンダル』第3砲を公開しており、地方自治法改正など、ネットの話題にすらなりませんでした。
 今国会で設置予定の「憲法改正条文案起草機関」で創設される「緊急事態条項」は、 一体誰の悲願だったでしょうか?
 1月30日に行なった通常国会の施政方針演説で、総理はしつかりと顔をあげ、自分の言葉で、力強くこう訴えていたのです。
「自分の総裁任期中に、憲法改正を実現したい」
 そしてその1か月後、改正地方自治法が閣議決定されたのでした。今後、緊急事態条項、そして憲法改正への道筋がどうつくられていくのか、注視していかなければなりません。


地震・雷・火事・オヤジ。それでも「原発」は安全ですか?
能登地震のニュースの後、海外の友人たちが次々にこう問い合わせてきました。

もしも緊急事態になったら?

*災害の時=災害対策基本法、警察法、自衛隊法で対処可能。
*テロ発生時=国民保護法、事態対処法という極めて強力な法制度あり。

*内乱や戦争発生時=自衛隊法や国民保護法、および外交で対処。

*感染症蔓延=新型インフルエンザ対策特別処置法、感染症法、検疫法で
 対処可能。

◎堤未果オフィス作成


2024年6月20日 朝日新聞


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