国会終盤の6月16日未明に無理矢理成立させた「土地規制法」は、とんでもない法律だ!!

 新型コロナ・ウィルスの報道に紛れて、またもや、菅政権の「災害資本主義」ぶりがあからさまになる法律が、通常国会最終版に成立させられた。以下、朝日新聞 2021年6月17日の記事を引用する。

「住民を広く規制」消えぬ懸念
土地規制法成立
 自衛隊基地周辺などの土地の利用を規制する法律が16日未明、成立した。政府は、外国資本が安全保障上重要な地域の土地を購入していることへの「不安」を理由に挙げるが、条文の規定はあいまいで広く住民に規制がかかる恐れがある。一連の審議では、与党推薦の参考人からも懸念が示されたが数の力で押し切った。           

課題 ・対象区域があいまい
    リストを示さないまま
   ・調査内容があいまい
    個人の「思想信条」まで調べられる恐れ
   ・罰則対象があいまい
    「機能阻害行為」の詳細が分からない
    条文規定あいまいなまま

 「不安とリスクが立法事実という法律はなかなかないよな」
 16日午前2時半すぎ、同法の成立を見届けた内閣府幹部は、こう周囲に漏らした。
15日夜の最後の委員会審議でも、法律の必要性や正当性を根拠づける「立法事実」を問われた小此木八郎領土問題担当相が、「不安は雲をつかむようなもので、まずは調査しようという目的」と苦しい答弁を強いられていた。
 同法は安倍政権が「安全保障等の観点」を理由に昨年7月の「骨太の方針」で打ち出したもので、それを引き継いだ菅政権が今国会に提出。自民党保守派が強く成立を求めていた。
 安全保障上の観点から一定の規制をする必要性については多くの与野党が認めているが、問題は基地周辺などの住民に広く規制をかける政府がまとめた法律の中身だ。
 与党の公明党も当初。「大半の方々は純粋に土地取引をしている。もっと他の方法はないか検討していく必要がある」 (北側一雄副代表)と主張。提出は政府提出法案の期限を超えた3月26日にずれこんだ。
 国会審議では、条文のあいまいさが次々と浮き彫りになった。
 まず、規制の対象地域だ。新法では「重要施設」の周囲キロや国境離島を「注視区域に指定し、土地や建物の利用状況を調べ、持ち主を調査できる。司令部機能がある自衛隊基地など、特に重要な地域は「特別注視区域」とし、一定面積以上の土地や建物を売買する際、事前に氏名や利用目的の届け出が義務になる。ただ、政府は検討している対象地域のリストの開示を拒んだ。どこに住む市民が調査の対象になる可能性があるのか明らかにしなかった。
 一方で、原子力発電所や自衛隊が共有する空港などを想定する重要インフラ施設の対象については、内閣官房審議官が「柔軟かつ迅速に検討を続ける」と述べ、鉄道や放送局などへの拡大にも「将来的にありうる」と含みを持たせた。
 次に、調査の範囲もあいまいだ。具体的な内容は、成立後のこれから政府が「政令」で決めるため、国会審議では詳細が明らかにならないままだった。
 小此木氏は「思想・信条などに係る情報収集は想定していない」と説明した。ただ、内閣官房審議官は「条文の規定では排除されない」と答弁し、可能性を否定しなかった。野党側は「基地や原発に反対する住民が常時監視される可能性がある」と指摘した。
 また、罰則の対象になる行為も定かではない。
 同法では、重要施設の機能を妨害するような違反があれば、勧告や命令が出され、従わなければ懲役を含む刑事罰が科せられる。
 しかし、条文には具体的な「機能阻害行為」は例示されず、成立後に政府が閣議決定する基本方針で示されることになっている。
 立憲の木戸口英司氏は16日未明の参院本会議で「政府は『機動的』と表現するが、あまりに白紙委任的な法案でとても賛成できない」と批判した。
 こうした新法のあいまいさには、参院内閣委で14日に行われた参考人質疑で、政府の有識者会議に参加し、与党が推薦した参考人までもが、「条文案を読むだけでは様々な臆測が広がる恐れがあることを痛感した」と発言。3人の参考人がそろって懸念があることを指摘した。
 その一人である弁護士の馬奈木厳太郎(まなぎ いずたろう)氏は「政府丸投げ法案を成立させるようであれば、国会は何のためにあるのかという話になる」と疑問を投げかけた。
  (鬼原民幸、小手川太朗)

馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう)
1975年、福岡県生まれ。弁護士。自由法曹団、全国公害弁護団連絡会議事務局次長。福島第一原発事故後、原告約4000名が国と東京電力を被告として起こした、。”原状回復”・”被害の全体救済”・”脱原発”を求める「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発
訴訟(「生業訴訟」)の弁護団事務局長を務めている。著書(共著)に、『あなたの福島原発訴訟』『国と東電の罪を問う』『福島を切り捨てるのですか』(以上、かもがわ出版)など。福島原発事故後自死された農家を描いたドキュメンタリー映画『大地を受け継ぐ』(井上淳一監督)の企画も務めた。


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