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『バーフバリ 王の凱旋』 が日本国内でヒットした理由を考える

 2017年、インド国内で公開された『バーフバリ 王の凱旋』は全世界で300億強の興行収入を突破。日本でも公開から1年程度のロングラン上映を記録し、2018年9月に興行収入は2.5億円を記録した。「圧倒的なインパクト」「アクションがはちゃめちゃ」「赤ちゃんの足をオデコにのせる」「バーフバリがカッコよすぎる」など言語化できない「良さ」はいっぱいある中でブーム・ヒットの理由を考えてみたい。

引用:https://style.nikkei.com/article/DGXMZO31246580R00C18A6000000?channel=DF160120183384

①圧倒的に直接的な愛情表現 ちょっとヤバい愛し方

バーフバリは2部作ともに主人公が愛した女性をとことん追い続け、守り続ける。母への愛とともに一人の女性をとことん愛する壮大なラブストーリーになっている。

『バーフバリ 伝説誕生』でのマヘンドラ・バーフバリ(シヴドゥ)
・滝の上から落ちてきたお面だけで惚れる
・逢うために滝を登り始める
・池の中からこっそりアヴァンティカの手にタトゥーを彫り始める
・滝で彼女の髪を洗い、木の実の汁でメイクを施してあげる

『バーフバリ 王の凱旋』でのアマレンドラ・バーフバリ
・あからさまに一目惚れする(この登場シーン好き)
・戦闘中もデーヴァセーナが気になってフラッシュバックしちゃう
・カッタッパが危険な目に遭っているのにボーッとしちゃう
・デーヴァセーナを辱める奴の首は斬り落としちゃう

 二人とも日本人にはないかなり直接的かつ一途な愛情表現の数々で女性に気持ちを伝えていく。このストレートな感情表現にヒットの要因があるような気がする。

②勧善懲悪なプロットと壮大なスケール感

引用:http://baahubali-movie.com/correlation.html

 2作目である『バーフバリ 王の凱旋』の中心は親を殺されたシヴドゥ(マヘンドラ)によるバラーラデーヴァへの復讐劇が描かれている。二部作で完全版にすると約300分を超える上映時間の中で「現代→過去→現代」と時間軸ずらし、回想シーンを交えながら描いている。そのため二部作を通してみると多くの伏線とその回収、積み重なっていく面白さとカタルシスに出会える。また、1作目ではカッタッパによる忠誠心がより詳しく描かれているため、「カッタッパのあのシーン」までたどり着いた時により大きな衝撃と悲哀を感じられる。

 ただ、2作目の王の凱旋だけを観ても十分に面白さの根幹が理解できるところがこの映画の素晴らしさ。特に2作目は「忠誠心」「母への愛」「復讐」というテーマの一貫性が際立っている。2作目から1作目へ戻って鑑賞しても面白さを享受できるようなプロットの作り方になっていることも大きい。わかりやすい勧善懲悪プロットと邦画にはない壮大なスケール感は日本で2作目から大きくヒットした理由の一つになるのではないか。

 海外に向けて国際公開された王の凱旋の上映時間が141分というのも一つポイントになりそう。完全版は167分。もちろん完全版も良いのだけれどやはり映画としては長いし躊躇してしまう。141分であれば多少敷居が下がるし、全体のテンポ感も国際版の方が良かったように感じた。インド国内のスタンダードに合わせずに上映したというところが英断だったように思う。

③ムーブメント・熱狂の渦が広まる映画体験

 近年のヒット映画をきっかけに映画館での観賞スタイルにも変化が見られる。「爆音上映」「応援上映」「絶叫上映」といった観客が上映中に声を出したり一緒に歌ったり、劇場の音を通常の数倍にして上映するなど新しいスタイルが流行している。一部の熱狂的なファンが繰り返し劇場を訪れ、鑑賞することから広まっているスタイルで、バーフバリの絶叫上映の原型にはインドでの上映ムーブメントがある。

 下記の動画は『バーフバリ 王の凱旋』の予告編上映時のインドの映画館の様子である。紙吹雪が舞い、絶叫する人々。

 「この熱狂ぶりを日本でも!」を発端に全国各地で「絶叫上映」が行われている。こういった動きは『劇場版 ラブライブ』『マッドマックス 怒りのデスロード』での応援上映・爆音上映やV8観賞(劇中で登場する「V8」に合わせて8回鑑賞すること)あたりからかなり強くなっているように思う。

熱狂的なファンによるSNSなどでの口コミ・複数回観賞報告(小さな渦)

映画評論家などによる拡散(渦の拡がり)

「爆音上映」「絶叫上映」などの実施
ファンによるコスプレやサイリウム持ち込み(熱狂の渦化)

新たな映画鑑賞の形式の流行(大きな熱狂の渦に)

 「複数回鑑賞するファン」によるSNSや口コミでの拡散で熱狂の渦が全体に広まっていく。それに合わせて「絶叫上映」「応援上映」といったただ観るだけではない映画鑑賞の新しい形というものが生まれつつある。同じ時間を共有する人々が劇中のコスプレをしたり、サイリウムを持ち込んで応援したり。こういうムーブメントが少しずつ大きくなっていき「熱狂の渦」が全国に広まっていったことがロングラン上映につながっている。時・場所の共有でコンテンツから新たなコミュニティやムーブメントが生まれて、エンターテイメントや映画体験そのものの形に新たな息吹が加わっていることは極めて素晴らしい動きだと思う。

そして熱狂は続く・・・

未見の方はまずは予告編を見て、このテンションのおかしさに触れていただきたい。Netflixオリジナルでのスピンオフドラマシリーズの制作も決まっているということでそちらも楽しみ!


■参考文献
バーフバリについてはお望月さんのnoteが熱狂的で素晴らしい!



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