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財政破綻についての見解のまとめ 藤巻健史氏

2 財政破綻が起こるとすれば、何を引き金にいつ起こるのか

この章では、まずは財政破綻・ハイパーインフレの危機があるという有識者(著名な方や研究者)の見解を見ていきます。

〇 藤巻健史 元モルガン銀行東京支店長兼日本代表、日本の財政危機について著書やSNSで最も多く発信している一人

私は日銀がいつかは債務超過になり、日本経済が大混乱すると訴えてきた。それが現実になろうとしている。
 国の借金は約1100兆円で、経済規模を示すGDP比で見ると約240%。財政が悪化している米国でも約110%。日本の経済規模では借金を返すのは無理だ。
 日銀が異次元の金融緩和をして事実上の財政ファイナンスをしてきたことで、これだけの借金が可能になった。その代償として日銀の保有資産は膨らみ“超メタボ”になってしまった。
 私が金融マンのころは日銀は長期国債や株、リート(不動産投資信託)なんか買っていなかった。値動きが激しく損失の恐れのあるものは、中央銀行は買わないはずだった。それを破ったのが黒田東彦日銀総裁。上場投資信託(ETF)を通じて株を買い支えている。保有するETFの残高は35兆円を超えているとみられ、日経平均株価が1万9千円を下回る水準では含み損を抱える恐れがある。
 もっと怖いのは国債。日銀は約500兆円もの国債を保有していて、国債の価格が下がると一気に債務超過になる。一般の人にはわかりにくいが、国債も株と同じように価格は変動する。長期国債は償還までの期間が長いので、変動の影響が大きい。もし長期金利が1%でも上がれば、保有する国債の価格は25兆円以上は目減りする。日銀の保有国債の平均利回りは昨年9月末で0・26%。超低金利のなか利回りの低い国債を買ってきたので、金利上昇に弱い。
 外資系金融機関は、日銀の債務超過を予見した瞬間に、日本の金融機関や企業との取引を絞るだろう。円の信用が下がれば、金融機関や企業はドルが調達できなくなり、海外から原油や物資を買えなくなる。コロナショックでは世界中の金融機関や企業が基軸通貨のドルを持とうとして、一時円安になった。基軸通貨ではない円は、一気に信用を失うリスクがある。
週刊朝日 2020年5月16日より)


 2010年に「悪夢20××年 日本破綻」との記事を掲載した朝日新聞、「財政が危機的な状況にある」と書かれた財政構造改革法を1997年に成立させた橋本龍太郎元首相。当時は国民の間に多少はあったであろう危機感も、今や薄れてきたように思えます。
 その当時よりも事態が悪化したのに危機感がなくなったのは、2013年から政府・日銀が「異次元緩和」という名のもと、実質的な財政ファイナンスを始めたからです。政府の借金を中央銀行が紙幣を刷ってファイナンスしたため、危機は一旦回避できたのかもしれません。
 しかし、「飛ばし」はいつまでも続けられません。いっとき破裂を免れたオデキはさらに大きくなり続け、限界を超えた時に起きる破裂は凄まじいものとなります。
財政破綻とハイパーインフレは同義
 よく「日銀が紙幣を刷れるのだから、日本は倒産しっこない」という説を聞きます。私もこの説には賛成です。財政破綻はきっと起きないでしょう。
しかし、毎日紙幣を刷りまくることによって貨幣の価値や信任は落ちます。それこそハイパーインフレの発生です。
 財政破綻とハイパーインフレは高層ビルで火事にあった時、「焼け死ぬ」か「飛び降りて墜落死するか」の選択の差に過ぎません。その意味で財政破綻もハイパーインフレも同義なのです。
 終戦後にハイパーインフレに陥った日本は、預金を自由に引き出せなくする預金封鎖と新券発行を行いました。銀行に置いてある預金しか新券に変えてもらえず、旧券は流通不可になるのですから、国民は預金せざるを得ません。こうしてタンス預金をも炙り出されたのです。
 (注:2024年に紙幣は刷新される予定)今の段階では、紙幣刷新後は、福沢諭吉1万円札と渋沢栄一1万円札は併用することになっているはずです。しかし福沢諭吉1万円札を法定通貨から外し、今後は使えないと宣言さえすれば、新券切り替えは完了です。そして「福沢諭吉1万円札100枚は渋沢栄一1万円札1枚と交換とする」というシナリオは杞憂なのでしょうか?
 日本経済低迷の根本原因は、「日本が典型的計画経済国家で社会主義的経済運営がなされていたこと」、そして(それゆえにだと思いますが)「円が国の実力に比し、強すぎたせいだ」と思っています。結果平等主義、大きな政府、規制過多を修正しないといけないと思います。
 デフレ脱却には、穏やかな円安政策が必要だと思っています。経済がどんどん弱くなっているのに円が強くなれば、ポシャるのは当たり前です。
 このような政策を取らなかったというか、原因分析さえしなかったがゆえに、財政赤字は、限界まで来てしまいました。
(日本・破綻寸前 藤巻健史著 2020年3月20日発行より)





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