手を繋ぐ

例えばこの、今、僕の肺を満たしてくれている空気。

明け方の空を見ながら歩く冬の空気はすごく冷たくて、呼吸が止まってしまいそうになるね。

本当はね、僕は寒いのは嫌いなんだよ。

冬は嫌いだ。

笑われるだろうか、僕はかなりの冷え性なんだ。

真冬のフローリングを裸足で歩ける君のことは、まるで違う星の生物みたいに思えるほどにね。

そんな僕がどうしてこんなに寒い明け方の道を歩いているのか。

初詣に行こうと言い出した君は、やっぱり手袋もなしに走ってきた。

寒がりな僕は、マフラーに帽子に手袋の完全装備だ。

ああ、神社の鳥居が見えてきたね。

大きな焚き火がじんわりと赤い光を揺らしている。

あと三十五歩で鳥居のしたをくぐろうという時に、僕は手袋をはずした。

とりあえず斜めに延ばした先にあった、君の指先は冷たい。

だけど僕は、そんな君の手を繋いだ。

寒くて冷たい。

内側がボアになった、暖かい手袋が恋しくなるほどの、冷たい空気と、君の手。

それでも僕は選ぶよ。

冷えた君の手が、僕の指先を握ってくれる幸せを。

あけましておめでとう。

冷え性の僕と、冷たい指先の君の手が、いつまでも繋がっていますように。

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昔に書いた掌編リバイバル。年賀状がわりに書いた一編でした。こういう年賀状もいいかなと。文章お年賀。

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