麻縄とバラ鞭

私が振り下ろした鞭はなんだか間抜けな音をたてて『虫』に当たった。当てた瞬間に鞭を引こうとしたが当たる前に少し引いてしまったようだった。難しい。『虫』もそこまで痛くなかったようで先ほどよりだいぶ余裕そうだった。

「鞭って難しいですね」

私が言うと川島さんと茜さんが笑った。

「初めてだもん、仕方ないよ。よし。次は澪かレイやってみる?」

と茜さんが私から鞭を回収しつつ言うと澪さんとレイさんがキャアキャア言いながら「やりたいやりたい!やるやる!」と姦しく縄を取り合い始めた。

「しろいしさん、ソファに座って見てようか」

と川島さんが言い、二人でソファに腰かけてぼんやりと澪さんとレイさんに弄ばれる『虫』を見ていると川島さんが茜さんの持参した麻縄に手をかけた。

「茜さん、ちょっと縄借りるよ」

川島さんがそう言い、私の手をギュッと掴んだ。

「手首と手首を合わせて腕を伸ばしてごらん」

ドキリとした。これから縛られるのだと悟った私の鼓動が早くなる。川島さんは私の緊張した顔を覗いて笑顔を浮かべた。

「大丈夫、痛くない。手先が痺れたり異常を感じたらちゃんと言うんだよ」

そう言って川島さんは慣れた手付きで麻縄で私の手首を縛り始めた。あっという間に私の手首は拘束されていた。麻縄で拘束された自分の手首を見ると欲情を催して下腹部がじんわり熱くなった 。

「次は足。足首を揃えて伸ばしなさい。早くしなさい」

川島さんの口調が強くなってきている。川島さんの目を見ると先程の優しさは消失し、既にサディストの目になっていた。

急いで足首を揃えて伸ばすと川島さんは再び慣れた手付きでシュルシュルと縄を結び始めた。足もあっという間に拘束されてしまった。拘束されて手足が動かない。私の手首と足首にまとわりつく縄がひどくエロティックに見えた。蛇みたいだ。

「いい顔をしてるね。お前はやっぱりマゾだ。今日は何もしないつもりだったけど気が変わった。立て。ちょっと痛くするぞ」

川島さんの目に暗い火が灯る。手首足首を拘束されたままなんとか立ち上がると川島さんが私を抱きしめるような形で左手でスカートを間繰り上げた。すると川島さんの右手が私の臀部を軽く叩く。パチンパチンと何度も叩く。そんなに痛くはない。気持ちいいぐらいの痛みだった。こんなもんなのかと川島さんの顔を覗いた瞬間、川島さんが口を開く。

「いくぞ」

バチンという音と共に臀部に痛みが走った。川島さんの手は更に私の臀部を叩こうとしている。叩かれる度に痛みで「んっ。んっ」と声が出てしまうが、まだ我慢できる痛みだった。  

そこに茜さんの能天気な声が降ってきた。

「お?川島さんもやってるじゃん!しろいしさん、初めてのわりに痛みに強そうじゃん?楽しそう!私の道具使っていいよ。バラ鞭でもいっとく?」

そう言って茜さんが自分のトランクから先が何本にも別れている鞭をとりだし、川島さんに手渡した。

川島さんは茜さんにお礼をいいバラ鞭を受けとると私の上半身をソファにもたれさせてお尻を突きださせた。そしてスルリと下着を下ろされた。

恥ずかしさよりも鞭がどれだけ痛いのかが気になり、下半身を丸出しにされたことはあまり気にならなかった。初めての鞭。怖い。どれだけ痛いのだろうか。怖い。

初めての鞭に怯えている私に気付いた川島さんが言った。

「彩、怖いか?バラ鞭はそんなに痛くないから安心しなさい」

川島さんが私の事を初めて「彩」と呼んだ。ずっと苗字で呼んでいたのに突然名前で呼ばれたので正直驚いた。

きっとこの瞬間から川島さんは私をパートナー見習いから自分の奴隷にしたのだ。

「いくぞ」

バラ鞭を振り上げる気配。

バチンという派手な音がして臀部に痛みが襲ったが確かに派手な音に釣り合うような痛みはない。ただし音に釣り合わないというだけで痛みはそこそこ強い。バチンバチンと何度か打たれて私は呻き声をあげながら痛みに耐えていた。痛みで悶えようとしても手首と足首にがっちりと縄が絡み付いていてもがくだけだ。遠くでキャアキャアと澪さんとレイさんの声が聞こえる。


「彩、もう少し強くするぞ。泣いても喚いてもいいから耐えなさい」

川島さんが優しいような厳しいような口調でそう言うとバチンという音と共にズシンとした重みのあるかなりの痛みが襲ってきた。痛い。あんなに優しかった川島さんが私を痛め付けている。痛い。涙が溢れてくる。口からは嗚咽。泣きながら何度も叩かれた。私がもがく度にギチギチと手足を拘束する縄がきしむ。

痛みに耐えて泣いているとスッと川島さんが私の臀部を撫でた。

「彩、初めてなのによく頑張ったね。今縄をほどくから」

そう言って私の頭を撫でて川島さんは縄をシュルシュルとほどいていった。ほどかれた瞬間、私はソファに倒れこんだ。手首、足首を見ると赤く縄の跡が残っていた。そして気付かないうちにずいぶん陰部を濡らしているようだった。痛かったのに何故。

川島さんは私の頭を撫でたり、お尻を撫でたりしていた。

「彩、お尻を見てごらん。綺麗に赤く跡が残ってるよ。とても似合ってる。綺麗だね。頑張ったね」

私の臀部には川島さんの手の跡とバラ鞭のあとが赤く刻印されていた。私の身体に川島さんの名を入れられたような気がした。今度は嬉し泣きしそうだった。

それを見ていた茜さんがニヤニヤして

「川島さんいい子見つけたじゃん!いいねー。私も新規いきたいなー」

とからかう。澪さんとレイさんはまだ『虫』をいたぶっていた。いつの間にか鞭ではなく、毛ばたきでくすぐって遊んでいる。

「よーし、それじゃあそろそろ次の責めに行こうかな!」

茜さんが大きな声で言うと『虫』がビクンと反応した。

「次は針にしようかな?それともケツか?おい、お前どっちがいい?選ばせてやるよ」

茜さんの声に『虫』はおどおどとしながらも少し悦びの表情を浮かべるのだった。

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