首輪と始まりの日

茜さんと『虫』の公開調教が終わり帰路につく。

夕暮れのなかを川島さんと今日の公開調教について語りながらのドライブはとても楽しく、あっという間に私達が住む市内に戻ってきてしまった。

「彩、今日はまだ時間あるか?あるならちょっとアトリエに寄っていかないか?」

川島さんが運転しながら言う。今日はバイトもなく、なんの予定もない。断る理由なんてなかった。

「今日はなんにも予定ないので大丈夫です」

そう私が言うと川島さんは私の頭をスッと撫でてアトリエに向かった。


アトリエは相変わらず川島さんの作品が溢れていて、いかにも芸術家の住まいという雑多なスタイリッシュさに溢れていた。

「彩、そこのソファに座ってて」

そう川島さんに言われ、初めてここに訪れた時にも座った二人がけのアンティーク調のソファに座る。しっとりとした革の感触が心地いい。

がさがさと川島さんが隣の部屋で何かしている音が聞こえる。今日はアトリエでなにをするんだろう?日中あんなことがあったのでもうお茶をしながらお話だけすると言うわけでもあるまい。今日散々叩かれた事を思いだし、少し欲情し少し身構えた。

そこに川島さんが綺麗なスミレ色のリボンで美しく装飾された白い箱を持って帰ってきた。両の手にぴったり収まるサイズの箱だった。なんだろう?なにが入っているのだろうか。


川島さんは私の隣にスッと腰を下ろすと、箱をそっと私に手渡した。

「開けてごらん。ちょっと順番が逆になってしまったけどプレゼントだ」

川島さんにお礼を言って、開けてしまうのが勿体ないほど綺麗な結びかたをしてあったスミレ色のリボンをそっとほどく。しゅるしゅるとリボンをとり、剥き出しになった白い箱の蓋をゆっくりと開けた。


中から現れたのは黒い革の真ん中に細く赤いラインが入った綺麗な革の首輪だった。真ん中に小さな銀色の南京錠がついている。そこから銀の鎖が延びていた。

これは私に嵌める首輪だ。私を犬にするために準備された首輪。愚直に川島さんを求め、全てを受け入れる犬になるための枷。

首輪のあまりの淫らさに目の前がくらくらする。


川島さんが箱の中の首輪をそっと手に取り、金具を外して広げ、内側を指差す。

そこにはAyaと銀色で記名されていた。

「彩は絶対僕の元に来てくれると信じてた。だからオーダーメイドで作っておいた。絶対に似合うよ。つけてあげよう。覚悟は出来てるね。

さあ、僕の奴隷になりますと言ってごらん」

川島さんの言葉に膣にびりびりと電気が走る。とうとう私は奴隷になるのだ。自らを奴隷にしてくださいと川島さんに差し出すのだ。日中見た『虫』のように全てをサディストに預けて受け入れるのだ。痛みに泣いて叫んで濡らして呻いて絶頂させられるのだ。あまりの期待と不安で胸も子宮も張り裂けそうだった。

緊張と恥ずかしさで手がぶるぶると震える。なんとか覚悟を決めて言葉を発しようとしたが上手く声帯が震えず言葉にならない。

その間も川島さんの鋭い視線が私を射ぬいている。

「彩、言いなさい。僕に叩かれて泣かされて、ぐちゃぐちゃになりながら彩は成長していくんだよ。僕の奴隷になりますと言いなさい。さあ早く」

鋭い視線とは裏腹に驚くほど優しい声だった。心に染み込んでいくような、本当に優しい柔らかな声だった。あまりの優しさに泣いてしまいそうだった。

その声に覚悟を決めて絞るように私は声帯を震わせる。

「わ…私を…川島さんの奴隷にしてください…」

緊張と覚悟で震えながらなんとか絞り出した言葉に川島さんはとびきりの笑顔で応えた。

「よし。よく言えたね。彩、お前は僕の奴隷だ」

そう言って首輪を私の首にそっと巻き、金具を閉じた。

その瞬間視界がぐんにゃりと歪み世界が反転した。股間がひどく熱を持っている。熱い。息が苦しい。私は奴隷になったのだ。普通の女子大生だった私は奴隷になったのだ。

川島さんの奴隷にしてくださいと言葉にしたことで言霊が私に宿り、首輪を装着されたことで自分が人間以下の存在になったのだと心と身体にしっかり刻み込まれていた。

「いい子だ。こっちにおいで」

川島さんが首輪から垂れる鎖を引きながら私を玄関の姿見まで連れていく。首輪をされて鎖を引っ張られてるだけなのに興奮と背徳感で目の前がぐらぐらしまともに歩けない。ゆらゆらしながら歩く。


美しい首輪を装着し、鏡に写った私はなんとも艶かしく蠱惑的な顔をしていた。自分じゃないみたいだった。

「彩、よく似合うよ。可愛いね。もうすっかり奴隷の顔をしている。さすが私の奴隷だ。さあ服を脱ぎなさい」

唐突に川島さんに命じられ、ドキッとしたが私はもう川島さんの奴隷なのだから反抗なんてするわけがない。

恥ずかしさはあったが、今日のために選んだ服を脱ぎ去り下着をすぐに剥ぎ取った。ショーツはぐちゃぐちゃに濡れていた。

裸に首輪だけつけた姿で川島さんに鎖を握られ、もう一度姿見の前に立つ。

奴隷だ。奴隷がいる。

そう思った瞬間川島さんが鎖を引き、近くにあった一人がけのどっしりとした椅子に私を座らせた。

そして近くにあった机からスッと麻縄を取り出し私を椅子に縛り付け始めた。まずは手。椅子の後ろ側にまわるように固定。足はM字に縛られ、私の陰部はすっかり露になった。

「彩、どうだ。見なさい。綺麗だよ」

鏡で確認すると私は美しく縄で椅子に固定され、陰部は大量の愛液でぬらぬら光っていた。

「彩、写真を撮ろうか。これが僕と彩の最初の日だ」

そう言って川島さんは当時はまだそんなに行き渡っていなかったデジタル一眼を持ってきて、椅子に張りつけられ陰部を晒す私の写真を何枚か納めた。そして最後に川島さんが鎖をもった状態で鏡に写った私と川島さんを写真に納めた。

「よし、これでいい。彩と二人で歩む最初の一枚はとてもいい物になったよ。彩、これから先、お前の全てを僕が壊すだろう。そしてお前は僕と二人でそれを作り直してきっとどんどんいい女になる。彩が僕を必要としなくなるまでとことんまで僕が導こう」

そう言って川島さんはカメラを机に置き、そして私の唇にそっとキスをした。

唇にきちんとキスをされたのは最初にこのアトリエに来た日に散々指でイかされた日以来初めてだった。

嬉しくてぽわんとしてると川島さんがするすると縄をほどき始めた。

あっという間にほどかれ、身体を見ると色んな所に縄の跡が残っていた。跡がなんだかひどく卑猥に見えた。

川島さんが私の首輪にそっと手をかけて首輪を外す。

「彩、今日はいろんな事が起こりすぎて疲れただろう。紅茶とお菓子を持ってくるからその間に服を着なさい。ちょっとゆっくりしたら一緒に食事をして家まで送ろう」

そう言ってことんと首輪を小さな机に置きダイニングに消えていった。

縛られただけで何をしたわけでもないのにとんでもない疲労でまともに立てずフラフラしながら下着をつけて服を着た。

川島さんが淹れているであろう紅茶の芳しい匂いがそっと鼻孔をくすぐった。

その匂いでやっと現実に帰ってきた気がした。

私の身体はまだとんでもない熱を帯び、下腹部も熱いままだったけれど。









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