サディスト達と鞭

鞭は空中で弧を描きながらしなり、革はライトを反射して美しい閃光を放った。

その光を見てすぐの肉を叩く鋭い音。

そしてそれを追う『虫』の悲鳴。


「ああああっ!ああああっ!あぁ…あぁ…」

『虫』は座り込んで身を縮めて身悶えしながら痛みに喘いでいる。鞭打たれた背中は赤い線が残っていた。

「は?たった一発でギャーギャー喚くな!ほら早く立て!みっともない声を出すな!」

茜さんが激を飛ばすと『虫』が

「はいっ…はいぃ…ぅぐっ…」

と半べそで情けない返事をしながら立ち上がる。情けなくうめく姿とは裏腹にペニスは天を仰ぎ、喜びの涙が零れている。

それに比例するように茜さんの目には加虐の火が灯っていく。初見で茜さんをよくいる普通のおばさんだと思ってしまった自分が恥ずかしくなるぐらい艶やかな表情だ。そして獲物を追う動物のような鋭い眼差し。

ああ、これがサディストという生き物なのか。なんて艶やかなんだろう。川島さんは私を鞭打つ時、どんな顔を見せてくれるのだろう。茜さんのように艶やかで美しい顔をするのだろうか。


そんなことを思いながら『虫』を眺めてると再び茜さんが 『虫』を鞭で打ち、『虫』が叫び声をあげた。

続けてもう一回。さらにもう1回。悲鳴 。悲鳴。悲鳴。悲鳴。

『虫』は座り込んで痛さに悶えて呻いていた。

「全く情けない!ギャーギャー喚くな!きちんと立て!立てないなら縛るか?縛ってみんなに鞭打ってもらうか?ん?それいいかもね。よし、そうしよう。喜べ !」

茜さんがそう言って座り込む『虫』を無理やり立ち上がらせ、トランクの中から麻縄を取り出してきた。

『虫』に腕をあげさせるとそれを固定するように縄を結びはじめた。

どうやって縛るのかが気になり、じっと茜さんの手元を見ていたが素人の私が見ていても一体どうやって結んでいるのかさっぱりわからなかった。

ふと川島さんの視線に気付く。


「しろいしさん、『虫』が縛られるところをじっと見てるね。縄に興味があるのかな?

よし。じゃあ最初は縄から始めてみようか。しろいしさんに似合う赤い麻縄を新しく準備しとくよ。麻縄は煮たり油を塗り込んだり毛羽立ちを焼いたりで手間がかかるけど、手間をかければかけるほどしなやかでいい縄になるんだ。だからしっかり手入れをしておくよ。しろいしさんも麻縄の独特の匂いや感触がきっと好きになるはずだよ。楽しみだね」

川島さんが柔らかく微笑んで言った。

私のために川島さんが麻縄を準備してくれるだなんてうれしくて飛び上がりそうだったが、ありがとうと口にするのが精一杯だった。

赤い縄。すごくエロティックだ。想像するだけで身体が火照る。


そうこうしてるうちに『虫』が縄で手をあげた状態で固定されていた。虫のペニスは粘液がしたたりそうなぐらいに潤っている。

「よーし、できた。そしたらみんな!『虫』で鞭の試し打ちしてみて!まずは鞭を使いなれてる川島さんかな?はい!」

茜さんが問答無用で川島さんに鞭を渡しながら言う。

「うーん…僕は男性を叩くのはあまり好きじゃないんだけどね…」

と渋りながらも川島さんがスッと鞭を携えて虫の前に立った。

川島さんが鞭を構えた姿は美しいとしか言いようがなかった。ギリシャ彫刻のように凛として屹立しており、川島さんの存在感が増幅していく気さえする。



「いくぞ?」


そう言った川島さんの目はもうサディストの眼差しだった。暗く深く、獰猛な眼差し。

その眼差しがあまりに深くて、先ほどは鞭を目で追ったが今回はずっと川島さんを見ていた。視線がはずせなかった。

これが私の主となる人なのだ。なんて美しいのだろう。こんな魅力的な男性に従属させてもらえるだなんてどれほど幸せなのか。これが従属の喜びというやつなのか。初めての感情に少し戸惑いを覚えた。


川島さんはそんな私の視線を意に介せずにひゅっと鞭を振りおろした。空気を切る音の後にまたしても肉を鋭く叩く音が部屋中に響いた。

「あああああああ!ああああ!ああ…ああ…」

『虫』が悲鳴をあげて悶えているが、私はそちらを全く見ずに川島さんだけを見つめていた。

「ん?なんだい?しろいしさん。おいで」

視線に気付いてニコッと笑う川島さんはサディストの顔から突然いつもの穏やかな川島さんに戻った。

川島さんの側に行くと川島さんは私に茜さんの鞭を握らせた。想像していたよりズシッと重い。そして吸い付くようにしっとりとした革の感触。

「しろいしさん、教えてあげるからやってごらん。『虫』は喜んでいるから遠慮する必要はないよ。ほら」

川島さんは私の手を取り、鞭を構えさせた。

「よし、そしたら思いっきり振り下ろすんだ 。振り下ろして当たったら、鞭をぐっと引いて。そうしないと鞭の先端がお腹とかに巻き込んでしまうからね。そのオマケの1打が実は一番痛いという話もあるぐらいだから気をつけてあげて。まぁでも今回は相手が『虫』だから、できないならそのまま振り抜いていいよ。ね?茜さん?」

川島さんがいたずらっぽい笑みを浮かべ、私の手から手を離した。こちらを見てる茜さんがニヤニヤしながら言う。

「勿論いいよ。あいつは痛いのが大好きなクソ変態だからな。しかも忠誠心があまりない、クソみたいなエゴマゾだ。だからあいつはしろいしさんの初めてのウイッピングをもらえるのが嬉しくて仕方ないみたいだよ。あの嬉しそうな顔見てよ。気持ち悪い。よし、打って!」

茜さんの合図に合わせて私は鞭を振り下ろした。

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