試合時のメンタルの作り方

ワールドマスターまであと数日。明日の便でラスベガスに発つ。
試合に向けて徐々に気持ちも高まってきた。

アダルトカテゴリーで試合に出場していた頃はというと、試合前になるとかなりピリピリして、いつも奥さんに迷惑をかけていたな。反省。それだけ1試合1試合に人生を賭けていたということか。

元々僕は試合前かなり緊張する方だ。もっとカッコ悪く言えば試合前にビビる。

まあ当たり前と言えば当たり前だ。29歳から柔術を始めたただのギター兄ちゃんが、世界を見渡せばキッズの頃から活躍していたスーパーアスリートと同じ土俵で戦うのだ。当時の僕の年齢は30代後半。相手は10歳位は若い選手がほとんど。これで自信満々で戦えること自体がおかしい。

だから僕の試合はいつだってビビるところから始まる。対戦相手の試合動画を見てビビる。試合相手が夢に出てきてビビる。毎日試合前に道場に向かう道すがらビビる。
そして、ビビりながらもなんとか勝利への道筋を考える。そうやって強大な敵と戦う前にメンタルを作ってきた。具体的にどのようにして試合に臨むメンタルを作っていったのか。それを詳しく書いていこうと思う。

緊張は乗り越えるのでも消し去るのでもなく寄り添う

試合に出始めた頃は緊張すること自体がカッコ悪く感じていた。「こんな白帯の試合で緊張するなんて俺はなんて情けないやつなんだ」

若い頃の僕は試合前の緊張をカッコ悪いものと捉えて、緊張自体を認めようとしなかった。つまり、緊張してることを認めようとせずに、緊張していないふりをしていた。でも、試合を重ねて青帯に上がっても一向に緊張感がなくなることはなかったどころか、むしろ対戦相手が強くなることもあり、緊張感は増していった。

当時青帯だった僕は、そんな情けない自分が嫌で、試合経験をたくさん積むことで緊張を乗り越えようとした。沢山試合に出場すれば試合が日常になって緊張しなくなるだろうと考えたのだ。でもどれだけ試合を重ねても緊張をしなくなることは出来なかった。

そこでよくよく考えてみた。毎回毎回緊張しているのに、試合になれば当時からそこそこ勝てていた。頭も働くし、全力も出せていた。
つまり、緊張を打ち消さなくともパフォーマンスはある程度出せていたのだ。その時から僕は、緊張に対して打ち消したり乗り越えたりしようとせずに、緊張と共存する考えに至った。

緊張することをカッコ悪いと捉えずに、素直に自分の弱さと向き合い、それを受け入れた。
己の弱さを受け入れることが強くなるための第一歩、なんてことはよく昔からよく言われてきたことだけど、この時身をもって実感した。

「今回も俺緊張してるなー。でも今までも緊張する中で結果を出せてきた。今回もこの緊張が自分をいい方向に導いてくれるはず」

このようなマインドで試合に臨むようになってからは、試合前にゲロ吐きそうなくらいビビってる中でもちゃんとメンタルを作ることが出来た。

最適な技を最適なタイミングで最速で繰り出すこと

このように、緊張に対して寄り添いながら当日マットに立つ準備をして、計量や道衣チェックに向かう。マットサイドまで来たならば、ここで全ての雑念を振り払う。

まず、怪我やスケジュール等の障害を乗り越えて、無事に試合が出来ることに対して感謝をする。そして今まで自分がやってきた練習を思い出し、練習でのパフォーマンスをそのままぶつけることが出来れば絶対に自分は大丈夫だと言い聞かせる。これは今一度自分に自信を持つ作業。
そして、試合が始まったら常に最適な技を最適なタイミングで最速で繰り出すことに集中する、と言い聞かせる。このマインドは凄く大切でにしていて、相手に勝ちたいとか今回は絶対に優勝するぞとか思わないようにしている。

勝ちたいと思う気持ちすらも邪念

今から20年くらい前だが餓狼伝という漫画があった。原作は夢枕獏先生の小説で、漫画は刃牙シリーズでも有名な板垣恵介先生が作画を担当していたこの餓狼伝という格闘漫画の中で、堤城平という空手家の男が出てくるのだが、このキャラクターがとにかく男の中の男、現代に蘇った侍!って感じでめちゃくちゃカッコいい。その堤城平が言っていた言葉が本当に金言で、僕は当時その言葉にものすごく影響を受けた。

「勝ちたいと思う気持ちすら邪念。ただ、最適なタイミングで最適な技を最速で繰り出すだけだ」

試合中は常に頭の中をクリアにして、刻一刻と変化するシチュエーションの中で常に最適な選択を最速で行っていくことが大切だ。これを一言で言えば【最善を尽くす】ということ。試合中に勝ちたいとか負けたくないという思いが出ることで、判断が鈍ったり遅れたりすることもある。
とにかく、今目の前にあるシチュエーションに対して最善の選択をすることが勝率を高める唯一の道だと僕は思う。勝ちたい気持ちが強すぎるとその判断を曇らせてしまうことに繋がってしまうのだ。

マットの上に上がったら冷静に相手の戦力を分析し、5分間の中で相手より上回っている部分を素早く見つけ、そこを攻撃する。その結果勝利が転がり込んでくる。

なので目指すべきは全力を尽くす、最高のパフォーマンスを出すことであり、勝利は全力を尽くした結果与えられるギフトなのだ。そこに気付いてからは僕は試合でことさら相手に勝ちたいと思う気持ちはなくなり、ただ最高のパフォーマンスを出すことだけに集中出来るようになった。

これが僕が長年にわたって行ってきた試合時のメンタルの作り方だ。
勿論、人によっていろいろ違うやり方もたくさんあっていいと思う。
今回の記事を読んで少しでも参考になったならば嬉しいです。

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