ワールドマスター参戦記

2023.9/1。

ラスベガスで行われたマスター(30歳以上)世界一を決める大会であるワールドマスターに参戦してきた。

初めてワールドマスターに参戦してから早10年が経つ。過去の歴史と共に今回の参戦を振り返ってみようと思う。

2013 マスター2 ライトフェザー級準優勝
2014 マスター2 ライトフェザー級3位
2015 マスター2 ライトフェザー級3位
2016 マスター3ライトフェザー級優勝
2019 マスター3ライトフェザー級3位

ワールドマスターには過去5回参戦。全ての大会で入賞を果たしている。思い出深いのは4回目の挑戦でもぎ取った優勝かな。今回はコロナの影響もあって4年ぶりの参戦となった。

今回は21人のトーナメントで小1回戦に入ったため、5回勝つと優勝となる。試合開始の30分前からアップを始めたが、体が軽く調子が良いと感じた。

1回戦はダブルガードから立ってアドバン先取、更にそこからパスからバック狙い。これはアドバン止まり。
さらにここからベリンボロでスイープ。更にパス。マウント。バックと畳み掛け、最終的に13-0で勝利。

2回戦。
引き込みからデラヒーバガード。
そこから更に70/30ガードに移行してバック狙い。結果としてスイープになるも、そこからパス、マウント。戻されてから更にもう一度パスマウントで16-0で勝利。

3回戦。
相手のタックルを冷静に対処しながら引き込み。スパイダーに入れてスイープ。
そこからクロスグリップパス、一度戻されるも今度はレッグウィーブで再度パスガード。
ここで相手がマジットヘイジチョーク(サイド下からのベースボールチョーク)
冷静に対処しカウンターの腕十字で1本勝ち。これでメダル確定。

準決勝。
韓国の人。この辺から相手のフィジカルレベルもグンと上がる。
まずは引き込みから70/30ガードに入れてスイープ。そのまま流れですぐにパスガードで5-0。相手はここからチョイバーやコムロック狙いも、全て受け切ってそのまま逃げ切り勝利。

決勝
木部さんに勝って上がってきた人。
木部さんとの試合を見ていたが、超絶引き付けが強くクロスグリップから三角絞めを狙ってくるタイプ。
でも、俺の首は引けないぞ、と自分の背筋力に今一度自信を持ちながらダブルガードから上になってアドバンゲット。相手はクロスガード&片襟片袖からガンガン引きつけて三角やホレッタなどを狙ってくる。それらを受け流しながら隙を伺いパスガード。これはあと一歩だったが、パスのアドバンもゲット。これでアドバン2-0。相手のガードもなかなかキツい。ここまで4試合してきたこともあり、体力的にもしんどかったが、楽して勝とうとせずに愚直に攻めに行った。とにかくプレッシャープレッシャープレッシャー。プレッシャーを緩めたら逆転されるかもしれない。なのでとにかく相手のターンにさせないように自分から攻めに行った。
その結果、アドバン2を守り切り勝利。これで優勝が確定した。

僕はあまり勝利後に感情をあらわにする方ではないが、レフェリーに手を上げられた時に、嬉しさと安堵感が入り混じったなんとも言えない感情が湧いてきて、思わず涙しそうになった。一言で言えば去年からやってきたことが報われた、という感じかな。


この日のために昨年から様々な準備を続けてきた。昨年10月からウェイトトレーニングを再開して体脂肪率は2%位減った。また、杉本さんにお願いして毎週マンツーマンで練習させてもらうなど練習環境等も整備してきた。このようにして1年がかりで、大舞台に臨むに相応しいチャレンジをするための環境を作ってきた。
チャレンジをすることには様々な障害が立ちはだかる。

例えば金銭面。
今回の旅費を合計すると多分25万くらいにはなってると思う。僕らみたいな道場主を除くと、柔術の試合のためにわざわざ海外での試合に25万をかけることに対して家族の理解を得るのはなかなか難しいことだとは思う。
そしてこの大会のために会社に休暇を申請して、試合にチャレンジすることも、人によっては厳しい人もいるだろう。

そして自信の面。
色帯だろうが黒帯だろうが世界中から腕自慢のおじさんが集まる大会だ。国内の大会で四苦八苦しているようだとワールドマスターで勝つことはかなり厳しい。しっかりと練習をして、自身の課題に真剣に向き合い、そしてその課題を克服して世界と戦えるメンタルを作っていかなければいけない。

大切なのは、出るからには本腰を入れてしっかりとその場に立つにふさわしい準備を各々がすることだと思う。そういった諸々の障害を全て取り払ってチャレンジをした先に、素晴らしい結果が待っているかもしれないし、あるいは価値ある挫折が待っているかもしれない。
でも、その場に立つに相応しい準備をせずに出れば、それは価値ある挫折ではなく、ただの敗北というレコードでしかないと僕は考えている。

今回優勝出来たから偉そうなことを言うつもりは全くない。僕もあと一歩で優勝を何回も逃してきたが、毎回全力でチャレンジしてきたので1ミリの悔いもなかった。
むしろ、大金を叩いて海外まで行って素晴らしい挫折という経験を積めたと納得している。

挫折を味わった時に今後どういうスタンスで取り組んでいくのかで人間の真価が問われると個人的には思っている。

なので、このようなチャレンジ出来る場があることに感謝をしつつ、今後も勝っても負けてもチャレンジを続けていきたいと思う。

最後に。
今回様々な形の応援、サポートのお陰で結果が出たと思っています。
練習仲間の方々、応援してくださった方々、道衣をサポートしてくださったムンディネロ(ブルテリア)様。この場を借りて御礼申し上げます。

金古一朗







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