季節外れの夏の歌

今日の練習帰りの車での帰宅中。外は極寒の中、僕は車のエアコンとラジオを付けて車を走らせていた。車内は冷え切っていて、暖房が効き始めるまで少し時間がかかる。そんな中ラジオでは「それでは聴いてください。ゆずで夏色!」と声高々にDJがコールしていた。極寒の冬の夜空を背に背負いながら僕は季節外れの夏色を聴きながら帰宅した。

帰宅しながら僕はある夜のことを思い出していた。あれも極寒の雪がややちらつき始めた新秋津。
仕事帰りの僕は早々に帰宅したかったのだが、駅前では1人のストリートミュージシャンが寒さも何するものぞとばかりに声を張り上げ、弾き語っているのが目に止まり、僕はそこでやや足を止めた。どうやら次がラストの曲らしい。
雪がちょっとずつ強くなりそうな気配を後目に彼はこう言った。

「それでは聴いてください!最後の曲です!【僕の夏休み!】」

雪空の中、なんともミスマッチなこの曲を最後に持ってきた彼が、その後ミュージシャンとして成功したのかどうかは知る由もない。

多分、この曲をタンクトップ一枚になって歌い上げる位ぶっ飛んでいれば、あるいは成功する目もあるかもしれないが、彼の服装は見事なまで全身超防寒装備だった。

ニット帽にコートとマフラーで夏休みの歌を歌う彼を尻目に僕は家路についた。

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