見出し画像

仮想通貨採掘MMO『MIR4』~デジタル羅生門、ベアトリーチェの居ない地獄めぐり | 森田一郎の毎日戯文 #166

ドーモ、森田一郎です。

今日は最近プレイしているMMO『MIR4』の話をします。

画像7

韓国Wemadeが開発し、現在Steamやモバイルで配信中の本作は端的に言うと「仮想通貨が掘れるMMO」です。本作のなかには「黒鉄」というリソースが存在し、これを10万とか集めると仮想通貨に変わるトークンDRACOに変換できます。

つまり、プレイするインセンティブとして実際の暗号資産を用意しているわけですね。なお、この黒鉄はバンバン手に入るかわりに、装備の強化とかにも頻繁にバンバン使うので、DRACOの入手とキャラ強化はトレードオフの関係。仮想通貨目当てのプレイヤーも興味ないプレイヤーも黒鉄はできるだけ確保しておきたい、という調整です。

画像5

さて、このゲームの何が「羅生門」で何が「地獄」なのか。それは「プレイヤー同士の闘争やいがみ合いを煽り、弱肉強食を奨励するシステム」です。まず、恐ろしいことにチャットのモデレーションが(観測範囲内では)ほとんどなされていません。ゲーム内での通報システムなども存在せず、チャットなどには特定の国などを強く卑下する差別的なテキストやRMTの宣伝が立ち並びます。一応「プレイヤー名をコピーして登録」という古風なチャットブロックシステムは有り。

ただ、サービス開始当時にくらべれば比較的ヘイトなどはやわらいだ気はするので、裏でこっそり何かモデレートされているのかもしれません。

また、ゲームプレイの上でのハラスメントはシステム上許容、というかほぼ推奨と言ってよい状態です。詳しくは後述。あらゆるシステムが「実際の資産」というインセンティブと絡み合い、人間の欲望と暴力性がぐちゃぐちゃに入り乱れる「るつぼ」。それが『MIR4』です。

画像6

さて、ここまで話した感じだと「クソゲーじゃねえか!」となりますがとんでもない。本作は放置可能RPGとしてそこそこ良くできており、妙にケレン味のあるイケイケの世界観も親しみやすく、何よりも他のMMOではなかなか味わえない魅力を持っています。それこそが、ここまで長々説明した本作のプレイヤーベースが構築するカオスなのです。

前述の通り、本作ではハラスメントに近いプレイも大いに許容されています。また、モンスターの経験値やドロップは基本的にトドメを刺したプレイヤーのものになったり、黒鉄やその他の鉱石、薬草などの採取スポットはひとりにひとつまで。必然的に壮絶な「取り合い」が発生することになります。

とりわけ、仮想通貨に繋がる黒鉄のマイニングは殺るか殺られるかの極限で展開されます。本作には灰色→緑色→青色→赤色→金色と5種類の採掘・採取スポットがあり、金色のものがもっとも効率よくアイテムを集められます。すなわち、金色の黒鉄鉱脈がエリアに発生すると、周囲に血の雨が降り注ぐことになります。

画像3

具体的な例として、今日遭遇したホットな体験をお届けします。本作には「魔法陣」という、1日数枚配られるチケットを消費して、1枚あたり30分間入場できる高効率の狩場があります。そのなかには黒鉄鉱脈のみが存在する欲望掻き立てまくりの部屋があり、運が良ければ入場することができます。

さて、当然黒鉄部屋のなかは冷戦状態です。というか、10分もいればほぼ確実に骨肉のPK合戦が見られます。赤や金色の鉱脈に陣取っているのはいつでも、おそらく数名を手にかけたであろう戦闘力の高いプレイヤー。弱者はせこせこと青や緑、灰色の鉱脈を削るしかありません。しかし、何も等級の高い鉱脈を掘っているプレイヤーが得するとはかぎりません。

というのも、後から後から等級の高い鉱脈を狙うプレイヤーが訪れるからです。どう表現したらいいのかわからないのですけども、赤/金の鉱脈の周辺は常態的に喧嘩しています。今日遭遇したのは「金鉱脈2個を同時に占拠しようとするプレイヤー」です。当然どちらかは誰かが採掘し始めるわけですが、その度に足繁く戦闘力にモノを言わせて追い払います。その作業を無限にやっているわけです。それこそ採掘をほっぽりだすほどに。

うろ覚えなので不正確な数字となりますが、青のスポットが10秒あたり100個前後、金だと10秒あたり300個の黒鉄が手に入ります。私が青のスポットで放置して仕事なりゲームなりしながら安定して黒鉄を掘っている間、彼はずっとふたつの金鉱脈の間を行き来して他のプレイヤーを追っかけ回してるわけです。

賢い皆さんならお気づきでしょう。彼は黒鉄に目がくらむばかりに、まったく黒鉄を掘れていないのです。なんたることか。私はなぜか「三尺三寸箸」の説話を思い出しました。極楽と地獄では、食事をする時に長~い箸を使わなければならないのです。極楽ではみんなお互いの口に食事を運び合うため、美味しいご飯をいっぱい食べられてみんな幸せでした。一方、地獄では長すぎる箸で自分の口に食事を運ぼうとするため、みんな空腹の苦しみを味わいます。黒鉄を欲するあまり正常な判断ができなくなる彼を見て、私は「寓話だな」と思ったのでした。


画像3

「魔法陣」にて有無を言わさず袋叩きに遭った瞬間。
ピンク色の名前が敵対プレイヤー。最終的に5人に集中砲火を受けた。

ほかにも、『MIR4』での楽しい思い出は枚挙にいとまがありません。効率の良い狩場に入場した瞬間集団で袋叩きにされるのは日常茶飯事。狩りの邪魔だと思ったのか突如殴りかかってきたプレイヤーを自動反撃で殺めてしまったり、格下向けの狩場に乱入して周囲のひよっこたちをモブと一緒に「掃除」しながら狩りをする高戦闘力プレイヤーなど、心温まる光景のオンパレードです。

なにより、ゲームの設計自体が「ころしてでもうばいとれ」を地で行くシステムなので仕方有りません。何より、これがプレイ時間をすごく取られるゲームだったらアレなのですけど、狩りからクエスト進行までずっと自動でやってくれるのです。時間のない森田でもそこそこ鍛えつつ、治安最悪エリアを観光して回れる非常に素敵なゲームなのです。

一応、一般地域でのPKにはペナルティが用意されており、「性向」、いわゆるカルマが下がります。これが0以下になると名前が赤くなり、取得経験値の低下や死亡時のペナルティ強化などのデメリットが発生します。しかし争いの発生しやすい地帯はPKによる性向変化なしのエリアに設定されています。すなわち、「今からみなさんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます」と運営側から宣言しているということです。

戦闘力の低いうちから弱い者いじめをした赤ネームのプレイヤーが、一般の狩場で排除される様子もしばしば見られます。これは赤ネームのプレイヤーについては一般エリアでPKしてもペナルティがないどころか、性向が上がるからです。つまり性向ポイントを落とすモンスター扱いなわけですね。因果応報。なんてゲームだ。

画像1

ひどい名前のMob

まあ、まとめますと、森田はこのゲームが非常に好きです。私も今までいろいろプレイしてきましたが、悪意と怒りと欲望がこれほど目の当たりにできるオンラインゲームというのは初めてかもしれません。しかも放置でいいんです。放置ゲームとしてもまったく悪い出来とまではいえず、その点もお伝えしておきたいところ。

あと、ゲーム内に通報システムはありませんが公式Discord上でチーターや重複アカウント利用者の通報は受け付けています。こちらは非常に素早く対応が取られている様子がうかがえます。チートを許容したら暗号資産の価値にケチがつくからでしょうか。なかなかイケイケの運営です。

いろいろ書きましたが、『MIR4』は「いいゲーム」とはいえないものの「独特の魅力があるゲーム」といえます。ただ、色々野放しっぷりが凄いので今後いろいろな問題が発生しないか心配です。まあ、そうしたハラハラして目が離せない点も魅力なのかもしれません。怖いもの見たさの方はぜひどうぞ。すごくひどいこと(でも私の観測範囲内での事実)をたくさん書いた気がするので最後にもう一度だけ言うと、放置ゲームとしてはわりときちんとできています。

またあした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?