GRE Subject Math③:対策リソース
最後に具体的な対策リソースを紹介したい。10月の試験を受ける人の参考になるかもしれない。余談だが、今年はコロナ禍の影響もあったのか、日本で唯一の会場である沖縄に集った同志は自分も入れても全科目合わせて6人だった(数学5, 物理1で化学は0)。来年はもっと増えるだろうか。
対策リソースは①GRE Subject Math対策唯一の参考書、②過去問、③個人作成の模擬試験、④米国のGRE対策講座が公開している問題集、以上4つある。
①Cracking the GRE Subject Math Test, 4th Edition
全ての対策はここから始まると言って良い。というか、そもそもこれしかない。とりあえずこれを全部解いてGREで必要となる知識をおさらいし、後述の過去問を解けば80%は取れるようになる。現代のGRE(以下、Modern GREとする)に比べて問題のレベルが低いのが残念であるが、市販されているまともな参考書兼問題集はこれしかないので、選択の余地はない。一通り解いてみると、あまり独特の問題が課されることや、正規分布の確率分布(0.5刻みで2.0まで)やcot, cosec, sec, sinh, coshなど、日本では暗記しないようなものを暗記しないといけないことに気づくはずだ。
②公式の過去問
ETSの公式の過去問であるが、残念ながら大昔の過去問しかない。しかも、ETSのホームページから見つけられるのは一回分だけで、残りのものはETSのHPからは見つけられないようになっている。ありがたいことに、シカゴ大学の対策講座のHPに過去問含め様々なリソースがまとめられているので、ここから過去問にアクセスしよう。
ちなみに、過去問は現代のものよりはるかに簡単なので、制限時間より短い時間を設定して解く訓練をした方が良い。G8767, G9367は170分どころか120分でも時間が余ると思う(私は100分で十分だった)。G9768も120分くらいで解けるはずだ。2000年代に入ってからのG0568, G1268(=1768)も150分くらいで解けると思うし、最終的にそれぐらいで解けるようになっていないと現代のGREで95%を達成するのはかなり難しいと思う。
③個人作成の模擬試験
信頼できる過去問が最新のG1268(最新と言いながら9年前)ぐらいしかなく、これさえもModern GREよりはるかに易しいのでアメリカでもみんな困っている。それで私の観測範囲内では3つの者が、合計5本の模擬試験を作成してくれているので、ぜひこれらを活用して演習不足を解消しよう。なお、いずれも完璧とは言えず、変な問題、誤りの含まれる問題があるが、それでも貴重なリソースには違いないと確信している。誤りを見つけた際には可能な限りコンタクトして誤りを訂正してもらったが、どうしても誤りを認めてくれないケースもあったりしたので、その点は作成者に代わりご容赦いただきたい。
Charles Ramboによる模擬試験(2つ)Amazonで購入可能。個人作成の模擬試験の中ではもっともQualityが高いと思う。
Mathhub.comによる模擬試験(1つ)Charles Ramboのよりもよりmodern GREを意識した問題になっていると思う。むしろ本番より少し難しいかもしれない。自分は時間内に解き終えることができなかった。また、模擬試験の最後に加群に関する問題があるが、これはGREの出題範囲を超えていると思う。
Gilad Pagiによる模擬試験(2つ)。模擬試験の作成者の中で唯一数学のPhDを有している。ただし、問題の質は上記二つに比べると若干劣る印象がある。また、訂正意見を全面的に受け入れてくれないので、問題文が意味不明なままの問題がそのまま残ってたりもする。ただし、全体としてはこれも得価値があるので、割り切ってといて欲しい。なお、同氏がUdemyで提供している対策講座はコスパ、時間効率がともに悪いのでお勧めしない。
④米国のGRE対策講座が公開している問題集。シカゴ大学の対策講座とUCLAの対策講座で作成された問題集が95%を狙う上での最後の一押しになると思う。特にシカゴ大学の対策講座の問題集は本番よりも難度が高い問題を多く集めており極めて良くできた問題集だと思う。特に、Modern GREで頻出の位相空間論の問題の対策に有用である(ただし、簡単な解説しかないので解読に苦労する部分もある)。UCLAのリソースは最後に全ての知識を整理しながら、難度がやや高めの問題に取り組んでModern GREに備えるのに適していると思う。
最後に、教科書として知識を確認するのに必要なものを念の為挙げておく。
微積分:何でも良いが、厳密な証明をしているもの。具体的な計算にも習熟している必要がある。
線形代数:何でも良いが、個人的お勧めは「線型代数入門」(松坂和夫)。具体的な計算にも習熟しておく必要がある。
集合・位相空間:「集合・位相入門」(松坂和夫)
複素解析:何でも良い。「複素関数論の要諦」(堀川穎二)レベルで十分。具体的な計算(テイラー展開や留数定理)に習熟していることが重要。
代数:日本語ではないが、イギリスのグラスゴー大学で使われた群論の入門講義が必要十分な知識を具体例を持って分かりやすく整理していて復習に最適だった。Modern GREでは位数が12以下の非可換群の実例の知識や対称群の共役類の分類を問う問題がよく出るので、定理を知っているだけだと解けなかったりする。環論は定義と準同型定理ぐらいしか聞かれることはない。
ルベーグ積分:初歩的な知識(測度論と収束定理)さえあれば十分なので、何でも良い。
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