コロナ禍での海外PhD受験

トロント大学、ユタ大学からかなり早い段階で合格オファーをいただいていたためあと2、3校は合格するかなと思っていたのですが、、、その後は吉報は届かず、、、まだ12プログラムからの結果待ち(!)ですが、トロントに十中八九決まりそうです。

もうこの時期は大学院側は入学者数の最終的な数合わせに入るので、他校に流れる数が想定より多かった場合のみWaitlistからの繰上げがあるという感じになっているはずです。

トロントより志望度が高い学校はそんなにないものの、大本命のUCSD(Deep Learningの数理の大御所がいる!)だけはどうしても気になって毎日Gradcafeの合否報告を見て一喜一憂する日々を過ごしていました。さすがにここまで来るともう可能性はゼロだなと諦めています。

思い返すと一年前も毎朝Gradcafeを見てどん底の気分で一日をスタートするという日々を送っていました。しかも、当時は背水の陣で臨むために仕事を辞める決意を固めつつある時期だったのでかなり精神的にキツかったです。当時と比べると、今回は早い段階でトロントからオファーを頂けたので、毎日Gradcafeを覗いてしまうものの気楽なものです。

合格体験記的なものは全て終わってから振り返って書くので記憶が美化されていることが多いですが、このnoteはありのままを現在進行形で書くことをモットーとしているので、こういう不恰好な姿をそのまんま書いていきます。いや本当にUCSDからオファーをもらえないのはHarvardやStanfordから不合格を貰うより凹むぞ(今年はそもそも受けてないけど)。何せ事前にその大御所の先生とコンタクトもしていて、割と感触も良い感じだったので。。。

そんなわけで、トロント大学に合格しつつもなんだかんだで厳しい戦いとなり、コロナの影響はやはり無視できないほど大きかったなと改めて痛感しています。次の入試サイクルではもうコロナの影響はないでしょうから誰の役の立つというわけでもないですが、記録として、コロナ禍でのPhD受験(しかも2周した)の困難さについて書き残しておきたいと思います。いや、我ながらこんな状況下でよく2周する根性があったものだ。

コロナ禍での海外PhD受験がなぜ厳しいのか。それは二つの理由に大別されます。
①コロナ禍により大学が厳しい財政難に陥ったため。
②就職難により大学院進学希望者が増加し倍率が高くなったため。
③出願要件の緩和により倍率が高くなったため。

①については各大学の財務諸表を見ることでその影響を直接確認することが出来るものの、それが実際にPhD入試にどのような影響を与えているかについては財務諸表からは窺い知ることはできず、実感が湧かないかもしれません。理屈としてはこうです。基本的に海外PhDは日本とは異なり、授業料(Tuition)と生活費(Stipend)は大学院側が持ちます。各学科は大学本部からPhD学生を採用するための原資を獲得する必要があるのですが、欧米の一流大学の多くは企業からの外部資金や寄付金を原資に運用している金融資産に財源の大部分を依存しています。これらがコロナ禍で大きく影響を受けたのです。

②はイメージしやすいと思います。日本でもそうですが、コロナ禍で業績不振となった企業から内定を取り消されたり、コロナ禍でリモートでの就職活動を余儀なくされたりと、コロナ禍で多くの学生の就職活動が影響を受けました。大学院進学は極めて自然な選択であると理解できると思います。

②に加えて、GRE等のそれまで大学院出願にあたって必須とされてきた試験を免除する動きが広まり、出願するハードルが一気に下がったことで倍率が一気に高まりました。特に顕著だったのは数学です。GRE Generalに加えて、専門試験であるGRE Subject Mathまで任意(Optional)に変更になり、出願数が激増しました。

これらの様子は、例えば、ミシガン大学数学科PhDのデータをご覧いただくと顕著に見てとれます。以下の右上のグラフを見ていただくと2021年秋入学の出願数がとんでもないことになっていることが分かるのに対し、下段のグラフからは2021年入学者が例年より減少していることが分かります。ちなみに2020年の入学者が減っているのは入学延期をした学生が続出したためです。出願数が急増したにも関わらず、財政難から逆に合格者を絞らざるを得ない状況がこのデータから見てとれるわけです。

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今回の2周目の受験にあたって、Purdue大学の准教授の一人に事前に相談させていただきました。彼は私のバックグラウンドを一通り聴いて、十分に合格する可能性があるとのコメントをいただくと同時に、「ただし、君にとっては本当に不運なことは、コロナ禍での受験を強いられていることだ。残念ながら全米の大学が深刻な影響を受けており、この影響は2022年入学も続くだろう。」と率直に大学側の内情を話してくださいました。この方は直近のPhD Admission Committeeに参加していた方ですので、極めて信頼のおける情報だと受け止めました。それで30近くものプログラムを受けることになったわけです。実は合格オファーをいただいたトロント大学は最初に出願したところだったので、結果的には残るプログラムには出願する必要もなかったわけですが、、、これは結果論に過ぎませんので出願したことは後悔していません。

来年からは通常に近い状態に戻ると思いますが、GRE等のスコアの提出を任意とする方向性は多くの大学で維持される可能性があります。こうなると倍率が高止まりした状況での出願となり、引き続き厳しい戦いとなることが予想されます。後悔のないよう、可能な限り多くのPhDプログラムに出願(少なくとも15校以上)することを強くお勧めいたします。

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