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#056「三方よし」近江商人文化が新潮流になるのではないか。

人生100年時代に、パンデミック新型コロナウイルス、地球環境温暖化問題、ロシアのウクライナ侵攻など、天災と人災が同時に遭遇する状況下に置かれている。年金シニアの私の戸惑いを払拭する術を模索していたら、何故か近江商人の「三方よし」の言葉が目に焼き付いた。

「『三方よし』って何?
1 近江(現在の滋賀県)に本店を置き、江戸から明治にかけて日本各地で活躍した近江商人。彼らが信用を得るために大切にしていたのが、
買い手よし
売り手よし
世間よし

という「三方よし」の精神でした。
2 近江商人は「三方よし」をモットーに、
自らの利益のみを求めることなく、多くの人に喜ばれる商品を
提供し続けました。

そうして少しずつ信用を獲得していったのです。
3 さらに彼らは利益が貯まると無償で橋や学校を建てたりと、
世間の為にも大いに貢献しました。

つまり三方よしとは
「商いは自らの利益のみならず、買い手である顧客はもちろん、
世の中にとっても良いものであるべきだ」
という現代の経営哲学にも通じる考え方なのです。
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 この「三方よし」の精神は現代の日常生活においても、
相手よし 自分よし みんなよしという言葉に置き換えられる
大切な考え方です。
三方よしを世界に広める会では、この「三方よし」を多くの人に広め
世界中が明るく幸せな世の中となることを願っております。
三方よしを世界に広める活動にご協力お願いいたします」

更に、「歴史は繰り返す」という歴史観を振り返る必要があるのではないかと思っていた矢先に、
矢嶋康次氏の記事「新冷戦とイノベーションの時代」に遭遇した。年金シニアのモヤモヤを払拭してくれた。矢嶋氏著「記憶の居場所」を読みすっかり彼の虜になった。また三方よしの知恵を自分流に妄想してみる良い機会とも思った。

「日本生命のシンクタンク、ニッセイ基礎研究所でチーフエコノミストを務める矢嶋康次氏が、経済という視点からビッグピクチャーを提示する。矢嶋氏は、テレビのコメンテーターとしてよく登場する一方で、レポートをほとんど書かないため、「書かない殿下」という異名も持つ。ただ、レポートの数は少なくても、大企業の経営者や政策立案者などから信頼を置かれる日本のトップエコノミストの一人でもある。
その矢嶋氏が今回、一気に不透明で激動の時代に入った日本経済が進むべき道について提言する。
「100年来の変革期」である理由

今回のロシアによるウクライナ軍事侵攻も、今アメリカ経済を悩ませている高いインフレ率(物価上昇)も、「今が100年ぶりの大きな時代の変革期にある」ということが現象として現れていると考えている。
「100年ぶり」という理由は、今まさに、100年前と同じようなことが起きているからだ。当時は、スペイン風邪が世界的に流行した一方で、各国政府が大規模な財政支出をし、第一次大戦(1914〜18年)が終わった後には、需要が爆発的に拡大し、すさまじいインフレになった。100年前は、こうした激動の中でイノベーションも生まれた。例えば、1908年にT型フォードが発売され、その後、移動手段が馬車から自動車になったり、冷蔵庫や洗濯機など現在の家電の原型となるものが多く生まれた。
今回のパンデミックは、スペイン風邪ではなく、新型コロナウイルスであるが、各国が財政支出を増やしたことで、各国でインフレが起きている。
この時代の大変化は、少なくとも今後10年、20年は後戻りしない。コロナが収まっても、コロナ前に戻ることはない。
2019年頃からGAFAが、世界各国で規制を受けたり、フェイスブック(現・メタ)がアメリカで何度も議会に呼ばれるなど、文字通り〝メタメタに〟なっている。
こうした流れも、まさに新しい時代の現象の一つで、すでに「GAFA時代の終わり」が始まっていて、「次の時代がすでに始まっている」ということだ。

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「光と影」はより強くなる
100年前は、イノベーションだけでなく、のちに第二次世界大戦(1939〜45年)に入っていった時代でもある。
つまり、こうした大変革の時代は、イノベーションが進むなどの「光」と、地政学リスクの高まりなど「影」のコントラストが、より強くなるということでもある。
イノベーションが生まれる裏側で、価値観のぶつかり合いが起こる。「光」の明るさも強いけど、「影」の暗さも強い。
今回の価値観のぶつかり合いとは、いわゆる「新冷戦」である。
トランプ前政権下の2020年から、激化している米中貿易摩擦であり、今回のロシアのウクライナ侵攻を巡って対立する民主主義陣営とロシアの関係もそうである。新冷戦が怖いのは、憎しみや暴力、怒りの連鎖だ。
こうした連鎖は振り子のように世界を襲い、一度戦争が起きてしまうと、2世代、3世代と禍根を残すことになる。
ここ数年、覇権国の勢力拡大が、世界の分断を広げてきた。
「影」の部分をどう消すのかについては、民主主義陣営側が問われていることであり、相当踏ん張りどころになっている。

この時代に必要なのは、強く生き残れるような経済構造であり、企業や個人の行動。しかも、それを走りながら、正解を見つけることが大事になる。

「タブー」にも触れないといけない

日本にも大きな課題が突きつけられている。
今回、ロシアのプーチン大統領は、核兵器のカードも持ち出した。これから、核兵器を持っていない国は、何もできない時代になるかもしれない。日本にとって最大の地政学リスクは、台湾有事。今回のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、中国が台湾へ軍事侵攻することも「十分に起こり得ること」になってしまった。
例えば、「憲法9条で国を守れるのか」や「脱原発を続けて大丈夫か」という、世論の分断を招くようなテーマについてもタブー視できなくなる。
現実と理想のギャップがここまで大きくなった今、国論を二分するテーマを避けることもできなくなっている。

景気後退後に「次のGAFA」
今、アメリカでは高いインフレが続いている。今年の前半は、このインフレ問題がどう帰結するかが非常に重要なポイントになる。
シナリオとしては、①インフレがずっと進んでいく(景気が過熱していく)か、②金融引き締め(利上げ)で経済がオーバーキルする(景気を冷やし過ぎてしまう)か、という全く真逆のリスクが共存している。
今年の後半は、高いインフレ状態を引きずってしまうのか、それとも米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めをし過ぎて、景気を冷やし過ぎてしまうかのどちらかだろう。景気もインフレもいい状態に収めるのは、相当なナローパス(狭い道)だ。結局、景気後退の流れが、おそらく今年後半には出てくる。アメリカの株式市場では今、テック系企業などの「グロース株(成長株)」から、エネルギーや金融などの「バリュー株(割安株)」を買う流れが出ている。バリュー株は、もともと景気とともに循環するので今は買われて上がっても、今年後半には、景気が悪くなるとともに、バリュー株も落ちてくるだろう。来年には、景気が悪くなるというシナリオも十分に考えられる。ただ、そういう悪い状態から立ち直るのが早いのもアメリカだ。一度悪くなっても、中期的には、良いインフレ・良い景気の循環に戻して、株価も戻っていった。過去のどんな難しい局面でも、後に景気を回復させて、前よりさらにGDPも株価も増やしていった歴史がある。
冒頭で言った「次のGAFA」が、この景気回復のプロセスの中で、鮮明に出てくると思う。これまでと全く違う価値観ややり方で、付加価値を創出する企業がしっかり生まれてきて、次の時代をけん引していく形になるだろう。

日本の大問題「巨大戦艦バカロン」
問題は日本で、アメリカのようにはできない。
今は、日本でもインフレが進んでいるが、原油高や資源高によるコストプッシュの悪いインフレで、まだデフレマインドが残っている。では、日本企業がこの100年来の大変革時代に何をすればいいのか。
まず、企業経営については、「バックミラー経営」を止めること。道が90度に曲がっている中で、バックミラーを見て、過去の延長線上に進んでいると交通事故を起こすのは目に見えている。
二つ目は、私が「巨大戦艦バカロン」と呼んでいる、巨大に絡み合ったがんじがらめの日本の組織そのものを変えること。
組織の論理や過去の経緯などのしがらみに基づいた論理で動く「巨大戦艦バカロン」は、賢いシステムで、パワーバランスは完全に出来上がっている。それが、これまで崩れずに泥舟化している。
でも、価値観や世界が大きく変わる今、強制的に壊され、強制的に変わることができるチャンスとなっている。
はっきりしているのは、「バックミラー経営」と「巨大戦艦バカロン」では、新時代に対応することはできず、完全にアウトだということだ。

日本には「追い風」が吹く
その一方で、100年ぶりの大きな時代の変革期にある日本には追い風が吹いている。
私がすごく好きな麻雀に例えると、最後の順位は、ゲームが終了するまでに、どんな風が吹いているかで大きく変わる。今の日本には、フォローの風が吹いていると思う。
つまり、覇権国同士の争いが起きて重要視されるのは、経済安保。製品の良し悪しが、価格より、質に軸が変わるということ、つまり、高くても安心安全な製品が好まれるということで、この分野は日本企業の得意分野である。
これまでは、価格で中国企業に負けていたのが、これからは価格が多少高くても安全安心が選ばれる。
日本製品の考え方がこれから再評価されるのが見えてることを考えると、フォローの風はすごく吹いている。ITやデジタルの話を野球に例えると、日本は中国やアメリカに対して、1回の攻防で100対0でコールド負けをした。恥ずかしいぐらいの負けで、もうデジタルの世界では、再試合(第二試合)はもうない。
でも、これからは、デジタルとリアルがさらに融合していくのは間違いない。
日本は、リアルの製造業で豊富な製品ラインナップをそろえて、この20〜30年間、なんとか踏ん張ってきた。これだけ安くてサービスの質が高い製品を提供できる国はない。
だから、次のイノベーションの土台になるIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)をフル装備させた世界では、日本の製造業やサービス業が活きてくるのは、もう間違いないと私は思っている。

アニマルスピリッツが重要だ
他にもフォローの風が吹いている。
ESG(環境・社会・ガバナンス)についてグローバルで急に最大の関心事の一つになったが、日本には昔から「三方よし(売り手良し・買い手良し・世間良し)」という考え方があり、ESGの考え方ととても似ており、深く浸透している。

また、アメリカはこれから中東での存在感を弱めていく一方で、インド・太平洋地域に権力を集中しようとしている。
アメリカは、成長セクターがアジアしかないとみている。
日本は、地理的には、アメリカとアジアのど真ん中にある。多くの国から信頼されている日本が、成長セクターであるアジアの中心にいる。これを生かさない手はない。
企業の「アニマルスピリッツ」も重要だ。
アメリカの民間企業は、ビジネスをしていい領域で、利益が出るところであれば、ガンガン攻めに入る。一方の日本企業は、グレーな領域があると、全部ダメという思考になりがちだ。
日本企業はもっとリスクを取る経営をしなければいけないし、経営者が委縮しない制度設計をしないといけない。

デフレマインドと「推し」
また、デフレマインドの払しょくには、「一億総『推しあり』政策」も必要だと思う。
コロナ禍で家族が韓国ドラマにハマって、DVDなどをすごく買っていた。これはまさに、去年流行語にもなった「推し」による消費である。
マクロで見ると、日本の消費はずっと冴えないが、ミクロは「推し」によるたくさんの熱量バリバリの消費がある。両者の乖離は一部の推しがいない大量の金持ちが消費しないからではないか。
特に男性に「推し」がない。だから、日本の消費喚起をするには、経済政策とかよりも、「推し活」のなかでグループで飲むというような輪を広げることも有効だ。
そうすれば消費が拡大して、そのために将来いろいろやりたいと思ったり仕事を頑張ったり、そしてまた消費するという循環が生まれて、このデフレマインドもなくなると思う。デフレマインドを崩し、アニマルスピリットを持った企業を増やすには、将来は明るく、みんな頑張ろうという社会をどう作るかだけの話でもある。
社会的に考えてもう余生しか考えてないおじさんたちを駆逐して、やりたい・頑張りたい若者の比率を上げるしかないと思う。
コロナ禍でも世界では多くの若者がチャレンジして、起業などをしている。
若者にはもっとそういったアニマルスピリッツが醸成されなければいけない。そのためにも、かつてアニマルスピリッツを持っていた人が、新しい世代の人の価値観に合わせて、過去の情報などを教える必要がある。
こうしたさまざまなことが今、この「100年来の転換期」において日本がすべきことだと思っている。」


(参考)
「迂回しながらひと筋を貫く
新潟から上京、理系大学で材料工学を学び、素材メーカーで人工骨の開発に携わるはずが、何の因果か非理系の保険会社に入社。
平成の「失われた30年」の激流を逡巡迂回しながら渡りきり、節目で怜悧なコメントを発進しつづけてきた人気エコノミストが“フツーのオジサン"目線で捉えたこの国の変容を、自らの歩みとともに綴る痛快経済エッセイ!
▼一流エコノミストは、日頃どんな視点でものを見ているのか?
▼著者の人生の中で大きな転機となった「1997年」を軸に、「一本道を歩んできた」と思えた新潟時代と「エコノミストとしての立ち位置の確立」を模索した平成期という二つのステージを顧みながら、軽妙なタッチで描写する随想集。
▼公人の矜持と私人の葛藤がほどよくミックスされた、共感度抜群の51話。いまや朝夕の経済ニュースに常連コメンテーターとして引っ張りダコの著者にも、日常の中であれこれと思い悩むことは多い。
一見便利そうだが実はいろいろと使い勝手が悪いこの国のシステムを嘆いた「子育て支援の『ちょっとピンぼけ』」、コンビニのレジ袋で七転八倒する「わかっちゃいるけどやめられない」、経済を専門に学んできたほかのエコノミストと伍するために取った
「『書かない殿下』の逆張り戦略」など、思わず笑みがこぼれる珠玉のストーリー満載」

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「私たちは不確実性のただ中で「創造的イノベーション」だけでなく「環境への本質的な適応」も求められている。「形ばかりのSDGs」などではなく、この2つを真の意味で両立したコンセプトだけが、次の100年を生き残る事業となり得るのだ。そんな「強靭なコンセプト」を生み出すために必要な考え方、そこから創られる社会・未来像について掘り下げていく。
コンセプトという語は「コン=強く」と「セプト=受け入れる」に分解できて、総じて「強く受け入れられる」という意味です。アイデアは自分一人が持っているだけでもいいですが、コンセプトは、相手に受け入れられることが前提で、逆に言えば、受け入れられなければコンセプトとは呼べません。
聞いたら誰かに話したくなる、または行動に移したくなるのが「強いコンセプト」です。もう一つ、重要なのはコンセプトそのものと、それを提起する主体の持続性です。ビジネス界隈では「三方よし」というキーワードがよく使われますが、そもそも近江商人が掲げた「三方よし」の本質とは「不況でも好況でもしっかり儲けて、自分たちが生き延びる」こと、つまり「御家の存続」です。その手段として「三方よし」を目指している。」

(まとめ)
「新冷戦」と「イノベーション」の時代に、三方よしの日本文化の新潮流が胎動し始めているようだ。毎日の悲惨なニュースを冷静に受け止めることは難しい。ここは、年金シニアの妄想ボケ防止に、三方よしの知恵を、自分事に捉えなくてはいけないと・・・。
今日は、春分の日。お墓参りをして一先ずスッキリした。

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