『ラヴ・フォー・ユー』短編

『ラヴ・フォー・ユー』
〝04u〟

 元不良美少年ユウが真剣に、長藻秋詠(ながもあきえい)に聞いた。

「あたいさぁ、マジメに生きるコトにしたんだ」

「それはどうかな」

「前はそうしろって言ったじゃない!」

 美少年はとても怒っても麗しいのです。

「状況に応じた対応をすべきだ」

「ヤッパオトナはクチだけかよ!」

「鏡で自分を良く見て見ろ」

 手鏡を差しだす長藻。

「ナニさ!」

 神獣鏡で自分を見るユウ。

「げっ!」

 何も写っていませんでした。

 元不良元美少年、現在幽霊のユウでした。

 元不良美少年、現幽霊ユウが、長藻秋詠に言った。

「あたいさぁ、生まれ変わったらまた人間になるんだ」

「……」

 いつもははっきり言う長藻秋詠が黙りました。

「人(ヒト)は何度でも生まれ変われるって言ったじゃない!」

「生きている内はな」

 長藻が、来世リストを見せました。

 第三候補「犬」格好良い雄犬で、良家の子女のお友達。不慮の事故で介護を要したが、家族全員に看取られながら幸せに老衰。

 第二候補「猫」美しい雌猫で、大金持ちの家で何不自由しない暮し。インフルエンザでポックリ。

 第一候補「人」とても人とは思えない面相で、貧乏のドン底から。お涙頂戴の人生で、最後の最後で少しだけハッピーエンド。

「……動物ってカアイイいよね」

 美少年ユウはアンニュイに答えました。

「あのなぁ」

 元不良元美少年、現在(とっても麗しい)幽霊ユウの苦悩は続くのでした。

 元不良美少年、現幽霊ユウが、長藻秋詠に言った。

「あたいさぁ、ヤッパ生まれ変わったらまた人間がイイよ!」

「ほぉ……」

 長藻秋詠が感心しました。

「前向きに生きることも覚えなければな」

 今のユウは美しくとも、生きているとは言えません。

「整形(セーケー)ってイクラするのかな……」

 前回のリストを見ながら、満面の笑みで尋ねる美しいユウ。

 長藻が、ふっとユウの足許(あしもと)を見た。

「……」

 ……地に足を着けてって言うべきでは、な……。

 リストの画に朱ペンを入れて美しい笑顔で想像するユウであった。

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