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トーマス・ジェファーソンの名言の原典を知りたい

【表題】トーマス・ジェファーソンの名言の原典を知りたい

【質問・相談などの内容】
トーマス・ジェファーソンの名言の原典を知りたい

1.原典はどれが正しいのか。

“If a law is unjust, it’s not only right to disobey it, it is obligated.”
“If a law is unjust, a man is not only right to disobey it, he is obligated to do so.”

2.一部の業界では、 unjust ではなく injust が使われているが、食品業界や広告業界での慣用句なのか。

下記の動画では “injust” となっている。

Carrefour "Black Supermarket" (Marcel Paris)

https://www.youtube.com/watch?v=a3Kg14LS3Lo

動画を引用した記事でも “injust” と表記されている。

「僕にはカンヌライオンズを語る資格がない。」

https://ashita.biglobe.co.jp/entry/2022/09/13/110000

※それとも一般的なジョークなのだろうか。

【回答】

お問い合わせの内容について回答いたします。
この度の調査で、該当名言の原典および食品業界や広告業界での慣用句としてのこの名言の引用について確認できる資料を発見することはできませんでした。
今後の研究のご参考に調査の経過や参考になりそうな資料をご紹介します。
(掲載のなかった資料についてはリンクを貼っておりません。ご了承ください。)

以下の名言集などを確認しましたが、該当名言は掲載されておりませんでした。
・『リーガル・マキシム:現代に生きる法の名言・格言』(吉原達也/編著 三修社 2013.1)
当館請求記号【320.3/88N/】
・『法格言ア・ラ・カルト:活ける法学入門(法セミBooks)』(柴田光蔵/著 日本評論社  1986.1)
当館請求記号【320.4/135N/】
・『世界の名言名句1001』(ロバート・アープ/責任編集 三省堂 2018.11)
当館請求記号【159.8/143N/】
・『世界名言・格言辞典』(モーリス・マルー/編 東京堂出版 2005.5)
当館請求記号【388.8/70N/】
・『世界引用句事典:名言・格言・俚諺』(梶山健/編 明治書院 1979.11)
当館請求記号【159.8/11/】

・モンティチェロ公式ウェブサイト(2022/9/22現在)

https://www.monticello.org/

※モンティチェロとは、トマ-ス・ジェファーソンが設計し、居住した邸宅です。

こちらのサイトではジェファーソンの功績をまとめたページや、引用文言について検証したページが公開されています。

If a law is unjust, a man is not only right to disobey it, he is obligated to do so.
こちらの名言については、
A quotation commonly misattributed to Thomas Jefferson.
とあり、ジェファーソンのものと誤解されている引用となっています。

https://tjrs.monticello.org/letter/1527

詳細画面を確認すると、「独立宣言」の言い換えではないかと示唆されています。

https://www.monticello.org/research-education/thomas-jefferson-encyclopedia/if-law-unjustspurious-quotation/

ご参考までに、独立宣言が掲載されている資料をご紹介します。
・『The New Encyclopaedia Britannica v. 10 micropaedia, ready reference and index』(Encyclopaedia Britannica c1983)
当館請求記号【C/1/#】
p.1039-1040 The Declaration of Independence [1776]
正義や権利などの文言が出てくる該当箇所より少し前の文章から引用します。
p.1039の左側 本文の13行目~ (1箇所め)
That whenever any Form of Government becomes destructive of these ends, it is the Right of the People to alter or to abolish it, and to institute new Government, laying its foundation on such principles and organizing its powers in such form, as to them shall seem most likely to effect their Safety and Happiness.
p.1039の左側 本文の24行目~ (2箇所め)
But when a long train of abuses and usurpations, pursuing invariably the same Object evinces a design to reduce them under absolute Despotism, it is their right, it is their duty, to throw off such Government, and to provide new Guards for their future security.

上記の翻訳が以下の資料に掲載されています。
・『世界の名著 33:フランクリン ジェファソン マディソン トクヴィル』(中央公論社 1976)
当館請求記号【080/3N/33】
p.232-257 「独立宣言」
p.232  上段後ろから2行目 (1箇所め)
「そしていかなる政治の形態といえども、もしこれらの目的を毀損するものとなった場合には、人民はそれを改廃し、彼らの安全と幸福をもたらすべしと認められる主義を基礎とし、また、そのような権限の機構をもつ、新たな政府を組織する権利を有することを信ずる。
p.232 下段9行目 (2箇所め)
「しかし、連続せる暴虐と簒奪の事実が、明らかに一貫した目的のもとに行なわれ、人民を絶対的に暴政のもとに圧倒せんとする企図を明示するにいたるとき、そのような政府を廃棄し、みずからの将来の保安のために、新たなる保障の組織を創設することは、彼らの権利であり、また義務である。」

また、モンティチェロのページではこの引用に似ている文書として、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアのバーミンガム刑務所からの手紙をあげています。

ご参考までに、手紙が掲載されている資料をご紹介します。
・バーミンガム刑務所からの手紙【ペンシルベニア大学アフリカ研究センター】(2022/9/22現在)

https://www.africa.upenn.edu/Articles_Gen/Letter_Birmingham.html

該当箇所は以下の文章かと思われます。
The answer lies in the fact that there are two types of laws: just and unjust. I would be the first to advocate obeying just laws. One has not only a legal but a moral responsibility to obey just laws. Conversely, one has a moral responsibility to disobey unjust laws. I would agree with St. Augustine that "an unjust law is no law at all."

上記の翻訳が以下の資料に掲載されています。
・『マーティン・ルーサー・キング自伝』(マーティン・ルーサー・キング/[著] 日本基督教団出版局 2001.12)
当館請求記号【198.6/12N/】
p.223-243 「18 バーミングハムの獄中からの手紙」
p.230 上段 後ろから4行目
「それに対する答えは、法には正しい法と不正な法の二種類があるという事実にあります。私は正しい法には従えと真っ先に主張する者です。人は正しい法には従うべき法的義務だけでなく、道徳的な義務もあります。その反対に、人には不正な法には従ってはならないという道徳的な義務もあります。この点で私は、聖アウグスティヌスの「不正な法はそもそも法ではない」という意見に賛成です。」

以上で回答とさせていただきます。

[担当:大阪府立中央図書館 社会・自然系資料室]

【参考資料】The New Encyclopaedia Britannica v. 10 15th ed Encyclopaedia Britannica c1983

【掲載箇所】1039

【参考資料】世界の名著 33 中央公論社 1976

【掲載箇所】232

【参考資料】マーティン・ルーサー・キング自伝 マーティン・ルーサー・キング∥[著] 日本基督教団出版局 2001.12

【掲載箇所】230

【サイト名】モンティチェロ公式ウェブサイト(2022/9/22現在)

【URL】https://www.monticello.org/

【サイト名】If a law is unjust, a man is not only right to disobey it, he is obligated to do so.【モンティチェロ】(2022/9/22現在)

【URL】https://tjrs.monticello.org/letter/1527

【サイト名】If a law is unjust, a man is not only right to disobey it, he is obligated to do so.(詳細)【モンティチェロ】(2022/9/22現在)

【URL】https://www.monticello.org/research-education/thomas-jefferson-encyclopedia/if-law-unjustspurious-quotation/

【サイト名】バーミンガム刑務所からの手紙【ペンシルベニア大学アフリカ研究センター】(2022/9/22現在)

【URL】https://www.africa.upenn.edu/Articles_Gen/Letter_Birmingham.html

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