「ヤクルトの空き容器の新しい使い方」春風亭与いち


まずこの度、皆さまから「ヤクルトの空き容量の新しい使い方」について、Twitterにて、お知恵を拝借しまして誠にありがとうございました。
予想以上のコメントの数に驚き、本当に有難い気持ちでいっぱいです。
自分では、なんとか絞り出しても「ビンドゥンドゥンを作る」止まりでした。

皆さまから頂いた中から、いくつかご紹介させていただければと思います。



「いっぱいくっ付けてスワローズ応援用メガホンを作りましょう」
——公式で販売できそうなグッズ。
選手も会社の売り上げもどっちも応援できる。

「ジョアを入れる」「森永マミーを移し替えて飲む」
——乳酸菌飲料専用おちょこみたいな。
ヤクルトを復元させたような心持ちで、しかも安価に飲みつづけられる。
何種類か並べて"利き乳酸菌飲料"とかやってみたい。

「尿瓶に使ってみるのはどうでしょう」
——入り切らないうえに的が狭くて収まらない。
でもそれにチャレンジしたくなるのが男。
人生何もやることがなくなった時やってみます。

「容器を7つ集めて、胸に7つのカッピング跡をつけて、師匠に「お前はもう死んでいる」ってやるのはどうですか?」
——面白いですが、絶対師匠にはやらない。やれないです。
多分、やった瞬間"破門"という死を自分が迎える。

「キスマーク隠し」
——菅田将暉がやればファッションになる。

「頑張ってピンホールを開けて「はてなのヤクルト」とかどうでしょうか?」
——サゲは"大きなビックルの洩るやつ"でしょうか。
茶金さんなら、"はてな"っていう前に"穴あいとる"って言いそう。

「合併処理浄化槽にヤクルト容器が利用されてるそうです。」
——これ調べてみたら凄いです。もう、これが正解です。

「やくみつるを凝縮して詰め込む」
——"ヤク(ルトに)満つる"ってことでしょうか。
やくさんが可哀想なのでやめてあげてください。

と、お陰様で既に1000文字達成いたしました。


さて、本日はここからが本題です。
先に言いますと、ここからもう1000文字書きます。

師匠をしくじってしまったからです。
詳しくはTwitterをご覧ください。

そして、1000文字から2000文字に課題がグレードアップしたのです。
今回だけではありません。
毎週2000文字です。

学がない私にとって2000文字は未知の領域。書いていてゴールが見えません。
初めて太平洋を見た時と同じ気持ちです。覚えてないけど。

今日は仕事が二件。

一件目、渋谷らくご。
日曜朝11時開演の「はやおきらくご」という会。

日曜の朝、会場のある円山町までラブホ街をつっきる。
昨晩楽しく過ごしたであろうカップル数組とすれ違い、"羨ましい"なんて呑気なことを思っている自分がその数分後にあんなことになるのは、
まだ知らない。

楽屋入りし、林家やま彦兄さんと戯れる。
兄さんが痩せたとか、そんな他愛もないことで盛り上がる。
あんなことになるとは、まだ知らない。

出番前にトイレに行く。今日一発目の元気のいいやつを出し切ってスッキリしている時も、
まだ知らない。

やま彦兄さんが出番まで10分以上あるのに、「お先でーす。」と舞台袖に行って、
その3分後に「まだでしたー。」と戻ってきて、ひとしきり笑ったあとも、
まだ知らない。

やま彦兄が高座に上がり、まくらを聴きながら自分は何喋ろうかと考えている時も、
まだ知らない。

そして、着物に着替え終え、
徐にスマホを見て知る。

その師匠のツイートを見たのが、高座に上がる3分前。
上がる直前にTwitterは見るものじゃない。
何喋ろうか考えていた事が全て飛ぶ。
完全に動揺したまま高座に上がっていき、
噺の切り所を見失い、
持ち時間を7分オーバー。

高座降りてすぐ、師匠に電話。
これが留守番電話に。冷や汗止まらぬまま二件目へ。
この間にも伸び続ける"いいね"の数が、
ただただ破門へのカウントダウンにしか見えない。


一門の朝枝兄さんとの二人会。

Twitterをご覧になっていたお客様多めだったので、
高座で正直に、今の精神状態が不安定なことを白状し、落語を二席。ほぼ記憶にございません。流石の兄さんはバカウケ。
本当に助かりました。

楽屋で朝枝兄さんに、

「師匠に課せられた課題はただこなすんじゃなくて、それがどう面白くなるかが大事だよね。」

と、言われた。
やはり持つべきは優しい叔父だ。
確実にしくじっていても、少し心が落ち着く。

私「兄さんは大師匠に何か課された事は?」

朝枝兄「ん、何もない。」


シブラクでもやま彦兄さんに同じ相談をしていた。

私「………という状況なんですよ。兄さん。」 

やま彦兄「詫びろ 詫びろ 詫びろぉ〜。」

アホの市川猿之助みたいになった。
どっちの兄さんも好きだ。

その後、師匠から1000文字プラスが言い渡された。



これを書きながら、今、久しぶりにヤクルトを飲んでいる。

2000文字書き終わるまでに飲んだヤクルトは5本。
目の前に空の容器を捨てずに置いている。
するとどうだ。小説家が原稿用紙をくしゃくしゃにしているような、
めちゃくちゃ悩んでる感が出ていて良い。


私なりの「ヤクルトの空き容器の新しい使い方」は、
"置きっぱなしにして自分やってる感を演出する"
です。


んー。

来週は良いオチつけられるように頑張ります。


2022.2.13

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?