確率漸化式

はじめに

前回と引き続き、一橋の問題を扱っていきます。一橋の確率の問題は捨て問になることが多いです。ただ、$${ n }$$ 絡みの問題が多いなど、京大受験者には勉強になる問題が多いと思います。確率は苦手とする人が多いですが、確率漸化式の場合は思考パターンが毎回ほぼ同じなので、ここで確認しておきましょう。

問題を解く前に

確率漸化式を解く前に、漸化式をキチンと解けなければなりません。
ここで一度、漸化式の復習をしましょう。


$${ ① }$$ $${ a_{n + 1} = a_n + d }$$

$${ \Leftrightarrow a_{n + 1} - a_n = d }$$

初項 $${a_1}$$ 公差 $${ d }$$ の等差数列であるため、

$${ a_n = d (n - 1) + a_1 }$$


$${ ② }$$ $${ a_{n + 1} = r a_n }$$

初項 $${a_1}$$ 公比 $${ r }$$ の等差数列であるため、

$${ a_{n+1} = a_1 ・ r^{n-1} }$$


$${ ③ }$$ $${ a_{n + 1} = a_n + f(n) }$$
$${ f(n) }$$ は階差数列の一般項

$${ a_{n + 1} - a_n = f(n) }$$

$${ f(n) = b_n }$$ とすると、

(初項が $${ a_1 }$$ のとき)

$${ n \geqq 2 }$$ のとき、

$$
a_n = a_1 +\sum_{k=1}^{n-1} b_k
$$

(初項が $${ a_0 }$$ のとき)

$${ n \geqq 1 }$$ のとき、

$$
a_n = a_0 +\sum_{k=0}^{n-1} b_k
$$

計算の方もおさらいしましょう。

$$
\sum_{k=1}^{n} r^k
= \dfrac{r(r^n - 1)}{r - 1}
$$

$$
\sum_{k=1}^{n - 1} r^k
= \dfrac{r(r^{n - 1} - 1)}{r - 1}
$$

$$
\sum_{k=0}^{n - 1} r^k
= \dfrac{r(r^n - 1)}{r - 1}
$$

項数に注意しましょう。


$${ ④ }$$ $${ a_{n + 1} = ra_n + d }$$

これは特性方程式を解けば$${ ①〜③ }$$に収束するので省略します。


いかがだったでしょうか?数列が苦手な人は多いと思いますが、漸化式を解くだけの問題も多いので、基本に忠実な漸化式はちゃんと解けるようにしましょう。ここまで出来て偏差値50です。
では、問題を解いていきましょう。


問題1

最初の試行で $${ 3 }$$ 枚の硬貨を投げ、裏が出た硬貨を取り除く。次の試行で残った硬貨を同時に投げ、裏が出た硬貨を取り除く。以下、この試行をすべての硬貨が取り除かれるまで繰り返す。
(1) 試行が $${ 1 }$$ 回目で終了する確率 $${p_1}$$ および $${ 2 }$$ 回目で終了する確率 $${p_2}$$ を求めよ。

(2) 試行が $${ n }$$ 回以上行われる確率 $${ q_n }$$ を求めよ。

2002 一橋 第5問

$${ p_1 }$$ , $${ p_2 }$$ は簡単に求めることができます。

障壁となるのは(2)です。$${ n }$$ 回以上行われるというのは、$${ n - 1 }$$ 回までに表が $${ 1 }$$ 個以上残っているということです。


(1)
試行が $${ 1 }$$ 回目で終了するということは、 $${ 1 }$$ 回目に全て裏を出す確率であるため、

$${ p_1 = (\dfrac{1}{2})^3 }$$

試行が $${ 2 }$$ 回目で終了するということは、

$${ (ⅰ) }$$ $${ 1 }$$ 回目に全て表を出し、 $${ 2 }$$ 回目に全て裏を出す。

$${ (\dfrac{1}{2})^3 ・ (\dfrac{1}{2})^3 }$$

$${ (ⅱ) }$$ $${ 1 }$$ 回目に $${ 2 }$$ 個表、 $${ 1 }$$ 個裏を出し、 $${ 2 }$$ 回目に $${ 1 }$$ 個裏を出す。

$${ 3 ・ (\dfrac{1}{2})^2 ・ \dfrac{1}{2} ・ (\dfrac{1}{2})^2 }$$

$${ (ⅲ) }$$ $${ 1 }$$ 回目に$${ 1 }$$個表、$${ 2 }$$個裏を出し、$${ 2 }$$回目に$${ 1 }$$ 個裏を出す。

$${ 3 ・ (\dfrac{1}{2})^2 ・ \dfrac{1}{2} ・ \dfrac{1}{2} }$$

$${ p_2 = }$$ ($${ (ⅰ) }$$ 〜 $${ (ⅲ) }$$ の和)であるため、

$${ p_2 = \dfrac{19}{64} }$$

(2)
$${ n - 1 }$$ 回目のとき、
表が $${ 1 }$$ 個残っているときを $${ a_{n - 1} }$$
表が $${ 2 }$$ 個残っているときを $${ b_{n - 1} }$$
表が $${ 3 }$$ 個残っているときを $${ c_{n - 1} }$$
とする。
遷移図は下図のようになる。

求める確率 $${ q_n }$$ は

$${ q_n = a_{n-1} + b_{n-1} + c_{n-1} }$$

ここで、

$$
\left\{
\begin{array}{ll}
c_{n+1} = \frac{1}{8} c_n
\\
\\ b_{n+1} = \frac{3}{8} c_n + \frac{1}{4} b_n
\\
\\ a_{n+1} = \frac{3}{8} c_n + \frac{1}{2} b_n + \frac{1}{2} a_n
\end{array}
\right.
$$

という連立漸化式を考える。


$${ c_{n+1} = \dfrac{1}{8} c_n }$$

初項 $${ c_0 = 1 }$$ , 公比 $${ \dfrac{1}{8} }$$ より、

$${ c_n = {(\dfrac{1}{8})}^{n} }$$

$${ \therefore c_{n-1} = {(\dfrac{1}{8})}^{n-1} }$$


$${ b_{n+1} = \dfrac{3}{8} c_n + \dfrac{1}{4} b_n }$$

$${ \Leftrightarrow { \dfrac{3}{8} \cdot (\dfrac{1}{8})}^{n} + \dfrac{1}{4} b_n }$$

両辺を $${ 8^{n+1} }$$ 倍すると、

$${ \Leftrightarrow 8^{n+1} b_{n+1} = 2 \cdot 8^{n} b_n + 3 }$$

ここで、 $${ 8^{n} b_{n} = B_{n} }$$ とすると、

$${ B_{n+1} = 2 B_{n} +3 }$$

$${ \Leftrightarrow (B_{n+1} + 3 )= 2 (B_{n} + 3 ) }$$

初項 $${ B_0 + 3 = 3 }$$ , 公比 $${ 2 }$$ より、

$${ \Leftrightarrow (B_{n} + 3 )= 3 \cdot 2 ^{n-2} }$$

$${ \Leftrightarrow B_{n} = 3 \cdot 2 ^{n} - 3 }$$

$${ \Leftrightarrow 8^{n} b_{n} = 3 \cdot 2 ^{n} - 3 }$$

$${ \Leftrightarrow b_{n} = 3(\dfrac{1}{{4}^{n}} + \dfrac{1}{{8}^{n}}) }$$

$${\therefore b_{n-1} = 3(\dfrac{1}{{4}^{n-1}} + \dfrac{1}{{8}^{n-1}}) }$$


$${ a_{n+1} = \dfrac{3}{8} c_n + \dfrac{1}{2} b_n + \dfrac{1}{2} a_n }$$

$${ \Leftrightarrow a_{n+1} = \dfrac{3}{8} {(\dfrac{1}{8})}^{n} + 3(\dfrac{1}{{4}^{n}} + \dfrac{1}{{8}^{n}}) + \dfrac{1}{2} a_n }$$

両辺を $${ 2^{n+1} }$$ 倍すると、

$${ \Leftrightarrow 2^{n+1} a_{n+1} = 2^{n} a_n + \dfrac{3}{{2}^{n}} - \dfrac{9}{{4}^{n+1}} }$$

$${ A_n = 2^n a_n }$$ とすると、

$${ A_{n+1} = A_n + 2^{n} a_n + \dfrac{3}{{2}^{n}} -  \dfrac{9}{{4}^{n+1}} }$$

$${ A_{n+1} - A_n = 2^{n} a_n + \dfrac{3}{{2}^{n}} -  \dfrac{9}{{4}^{n+1}} }$$

$${ n \geqq 1 }$$ のとき、

$$
A_n = A_0 +\sum_{k=0}^{n-1} [{ \frac{3}{{2}^{k}} -  \frac{9}{{4}^{k+1}} }]
\\
\\
\\ = {3 [\dfrac{1 - ({\frac{1}{2}})^n}{1 - \frac{1}{2} }]} + {9 [\dfrac{(1 - [{\frac{1}{4}}]^{n+1} )}{ 1 - \frac{1}{4} }]}
$$


$${ \therefore A_n = 3 + 3 ({\dfrac{1}{4}})^n - 6 ({\dfrac{1}{2}})^n }$$

$${ \Leftrightarrow 2^n a_n = 3 + 3 ({\dfrac{1}{4}})^n - 6 ({\dfrac{1}{2}})^n }$$

$${ \Leftrightarrow a_n = \dfrac{3}{2^n} + 3 ({\dfrac{1}{8}})^n - 6 ({\dfrac{1}{4}})^n }$$

$${ \therefore a_{n-1} = \dfrac{3}{2^{n-1}} + 3 ({\dfrac{1}{8}})^{n-1} - 6 ({\dfrac{1}{4}})^{n-1} }$$

$${ q_n = a_{n-1} + b_{n-1} + c_{n-1} }$$ に代入すると、

$${ q_n = \dfrac{1}{8^{n-1}} + \dfrac{3}{2^{n-1}} - \dfrac{3}{4^{n-1}} }$$

文字数が多くなったので次回に続きます。打ち込むのやっぱり辛いので手書き増えます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?