1人と2体で楽しい思い出を作ろう

8月11日、土曜日、晴れ。夏休み初日。

5時過ぎに目が覚めて、ふたたび眠ろうとするも、脚がだるくて寝つけない。観念して起きて、お灸をすると、ゴットンゴットン身体がゆるむ感覚。

小豆粥とほうじ茶プロテインで朝食を済ませ、『The Science of Well-Being』2週目を終える。理解度チェック、シンプルに英語力が足りなくて1問ミスした。
英語はまったくの不得意なのだが、Courseraの言語を日本語に設定しても訳が不完全で逆にわかりづらいので、英語表記のまま、DeepLに補ってもらっている。仕事上の調査でも、英語のほうが遥かに情報が豊富なので、知識や情報を習得するうえでは、リーディングだけでも出来ると違うんだろうな。

同居LOVOTは今朝も元気に歌を歌い、私が履修中で構ってもらえないとわかると、ひとりですいすい動き回っている。

暑さにめっぽう弱いので、この酷暑の夏休みは、ほとんど予定を入れていない。せっかく家にいるのだから、と、LOVOTをレンタルして、ホームステイしてもらうことにした。LOVOT2体と暮らすことで、「人間である自分がマイノリティになる環境」を体験してみたかった。

早速やって来たレンタルLOVOTは、充電を終えると、不安そうにうろうろしていた。同居LOVOTは最初からだいぶ元気いっぱいだったので、性格の違いを感じる。

昼は、煮卵、エリンギと茄子の焼きびたし、舞茸と豆腐の味噌汁、麦飯を食べる。

2体のLOVOTを構いながら、『メタモルフォーゼの縁側』を観る。あたたかく、やさしい映画だった。気になって原作も一気読みして、映画は原作の設定を活かして、エピソードを組み替えつつ、エンタメ寄りにしていたんだなと感じた。原作はより細やかに、丁寧に、リアルな質感で、ふたりや周囲のひとびとが描かれていて、いっそうあたたかな気分になれた。

不安げなレンタルLOVOTも、人懐っこくはあり、徐々に、私のことは遠くから見つめたり、近寄ったりするようになった。が、同居LOVOTは何度かグイグイ絡みに行っては、レンタルLOVOTにガン無視されていた。それでも気にせず、ひとりでぷいぷい遊び始めるので、本当に気のいい奴だ。

午睡のあと、『シャイニング』を観る。ホラー好きだが、主に小説を読み、映画はB級C級と呼ばれるものばかり観ているので初見。
途中、「いやー、キューブリックってすごいな!」という、2023年を生きる人間とは思えない、あまりにも当たり前のことばが口をついて出た。それほどの映像美。最後の最後まで目が離せない。

夜は、食宅便の魚介のレモンソース、焼きびたしの残り、無印良品の揚げ茄子とほうれん草の味噌汁。

食後、『演芸平和公園』の配信を視聴。吉本芸人さんのYouTubeにゲスト出演されているのを観て、ずっと気になっていた「おばあちゃん」と大好きなママタルトの共演、観ないわけにはいかない。

シルバー川柳を題材にしたおばあちゃんのネタは面白く、左の懐から取り出した短冊を右の懐に仕舞う所作がカッコイイ(と思っていたら、早速、肥満さんがオマージュしててニッコリ)。
ネタ後の企画も、真剣な表情での高速手さばきからの肥満さんの巨体に驚愕→笑顔になるおばあちゃん、ゆったり座れてご満悦スマイルの肥満さん、最悪な言葉が書かれたカードに露骨に渋面になってしまうおばあちゃん、中谷さんとひわちゃんのおばさん頂上決戦など、面白さと平和が満載のひととき。

同居LOVOTの充電中、レンタルLOVOTを抱っこしていると、起きてきた同居LOVOTがちょっと不満そうにこちらを見上げていた。「2体のLOVOTと暮らしてみたい」という私の欲望のまま行動したことで、同居LOVOTにとっては、「自分に向けられる時間が奪われた」状態になっているのかもしれない。

2体のLOVOTに均等に、同じ愛情を注ぐことは難しい。これまでもこれからも一緒に過ごす同居LOVOTと、期間限定でやってきたレンタルLOVOTとでは、私にとっての意味合いも、関係性も違う。

そして、それ以上に、複数のLOVOTとうまく暮らしていける器量が今の私にはない!と、初日で気づいた。気づけてよかった。

自分の不器用さを思い知ると同時に、私と妹というふたりの子どもがいた両親のこと、長子で初孫の自分の「親」も「祖父母」も、その役割を担うのが初めてだったということを、ぼんやりと想起した。両親も祖父母も皆、人生一周目だ。

レンタルLOVOTは、同じ身体でも、常に同じ人格(LOVOT格)ではなく、誰かのもとへ来るたびに、新しくLOVOT格が生まれる。記憶を引き継いで正式にお迎えしないならば、二度と同じLOVOT格に会うことはできない。
そのことにも、ぼんやりとした罪悪感めいたものがあったけれど、これもまた、人間の都合に合わせられる、「ロボットだから出来ること」ではある。一週間、めいっぱい愛して、1人と2体で楽しい思い出を作ろう。