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「プロ野球選手」と「個人事業主」

人気スポーツの代表格である野球。
少年野球から始まり、中学・高校の部活、大学野球、社会人リーグ、草野球など、幅広い年齢層に親しまれています。

その最高峰である「プロ野球」。
一流の選手たちの華麗な技術、手に汗握る攻防は人々を惹きつけます。当然、そこでプレイする「プロ野球選手」は野球を楽しむ人々の憧れの存在です。

そんなプロ野球選手ですが、選手たちは野球をしてお金をもらっています。つまり野球が仕事です。そしてもう少し細かく言うと、一般的なサラリーマンのように会社(野球選手の場合はチーム)に所属してお給料をもらっているわけではなく、労働期間や報酬などの様々な条件を決めて契約をして一時的にそのチームで働いている「個人事業主」なのです。

異質な「個人事業主」

個人事業主(こじんじぎょうぬし, Self-employment)は、株式会社等の法人を設立せずに自ら事業を行っている個人をいう。個人事業者、自営業者ともいう。

~出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』~

ひとくちに「個人事業主」と言っても様々な職種があります。
フリーランスのイラストレーターやプログラマーの方々にも多いですし、お店や会社を自ら経営していても当てはまります。ものすごくザックリ言うと会社に勤めないで仕事をしている人です。

そんな多くの個人事業主の中でも「プロ野球選手」という仕事はかなり特殊で、しかも過酷な職業なのです。

なぜそう思うのか?
どのように違うのか?
その辺りを解説していこうと思います。

プロフィール大公開

全てのプロ野球選手の情報を載せた「選手名鑑」という資料があります。ある意味、ここの名前が載って初めて”プロ”であると言えます。
毎年データが更新されて、書籍としても数種類発売されていますし、ネット上で公開しているサイトもあります。(例:選手名鑑 - プロ野球 : 日刊スポーツ

さて、ここがもうすでに過酷ですよね

上記に挙げたサイトをご覧いただければ分かりますが、その内容たるや

背番号や氏名から始まり、生年月日、出身校、身長、体重、etc・・・

「選手の情報を載せる資料なんだから当然だろ」と思うかもしれません。しかし思い出してください。彼らは映画やアニメの登場人物ではありません。この世の中に星の数ほど存在し、会社に勤めずに仕事をするただの「個人事業主」の1人なのです。

これがどれだけひどい事か。
別の職種の個人事業主に置き換えてみましょう。

「選手名鑑」と「個人事業主」

例えばあなたが中華料理屋さんを開くとします。

お店の場所を決め、設備を整え、個人事業主としての開業届けを提出しに行きます。(開業届を提出する場所は基本的には事業主の住所を管轄する税務署ですよ☆)

必要事項を記入して提出すると

「中華料理屋さんですね。では『プロ中華 料理人名鑑』に登録しますのであなたの氏名、生年月日、身長、体重、血液型、利き腕、出身校、婚姻状況、をこちらにご記入ください。」

あなたは思うはずです。
それ、必要??と。

さらに、年間売り上げ(野球選手なら年俸)も公開。しかも推定
「あいつの店はこれくらい売り上げてるっぽいぞ。」
余計なお世話だ。と。

しかし断ることはできません。
だってあなたは「個人事業主」だから。
プロ野球選手と同じだから。

全国に向けて発信

プロ野球の醍醐味ともいえるテレビ中継。特にナイター中継は「観た事がない人がいない」といっても過言ではないのではないでしょうか。全国の野球ファンが観戦し、選手の一挙手一投足に一喜一憂。余すところなく生中継されます。

もはや残酷ですよね・・・。

「自分のプレーをたくさんの人に見てもらえるんだから喜ぶべき」と思うかもしれません。しかし思い出してください。彼らは小説や漫画の登場人物ではありません。支払いの際には領収書を発行してもらい、毎年2月16日〜3月15日の間に自ら確定申告を行うただの「個人事業主」の1人なのです。

これがどれだけひどい事か。
別の職種の個人事業主に置き換えてみましょう。

「テレビ中継」と「個人事業主」

あなたは中華料理屋さんです。

毎晩厨房にカメラが入り、料理をする様子を全国に生中継しています。もちろんゴールデンタイム、来客が続けば放送時間も延長します

おいしい料理を作るために奮闘するあなたの姿を見守る視聴者。しかしいくらプロとはいえ、いつも上手くいくとは限りません。時には失敗することもあります。

最近では一個人が感想や意見を発信することが容易です。
各種SNSにあれやこれやと好き勝手に書かれてしまうのです。

「練習が足りてないからミスするんだ!!」

「スイングが弱い!!(中華鍋の)」

「フォームを変えるべきだ!!(調味料を振りかける際の)

「★☆☆☆☆ 1.0
 料理はまぁまぁだったが、隣の客の香水がキツかった。
 なぜ店員は注意しないのか?二度と行きません。」

あなたは思うはずです。
そこまで好き勝手言う??と。
あと最後のやつはお店の責任じゃなくない??と。

しかし反論することは許されません。
だってあなたは「個人事業主」だから。
プロ野球選手と同じだから。

日本全国を股にかけて

プロ野球チームは各球団に自球場(ホーム)があります。しかし毎回自球場で試合をするわけではなく、対戦相手の球場に出向いての試合をすることもあります。自球場のチームをホームチーム、そこに訪れてきたチームをビジターチームと呼びます。球団は日本全国各地にありますので、ビジターチームはその都度移動して試合に臨む事になります。

とんでもないシステムですよね・・・。

「自分のホームでしかやらないなんて都合が良すぎる。当然のシステムだ」と思うかもしれません。しかし思い出してください。彼らはドラマや舞台の登場人物ではありません。自分の思いを込めた屋号を背負い、社長として必死に働けど働けど決して「代表取締役」と名乗ることは許されないただの「個人事業主」の1人なのです。(株式会社でないと「取締役」という肩書きは使ってはいけないよ☆)

これがどれだけひどい事か。
別の職種の個人事業主に置き換えてみましょう。

「ホーム&ビジター」と「個人事業主」

あなたはフリーランスのイラストレーターです。

大手デザイン会社に約5年間勤務していたあなた。スキルもどんどんアップし、仕事も楽しい。しかし少しずつ、ほんの少しずつですが、自分の中に”ある想い”が膨らんでいくのを感じていました。

このまま会社員として働き続けることで本当に満足できるのだろうか?

自分ひとりの力で、どこまで出来るのだろうか?

試してみたい・・!

自分がどこまで通用するのかを・・・!!

あなたは思い切って会社を辞め、独立し、「個人事業主」になりました。



しかし・・・。



やはり現実は厳しいものでした。自分が想像していたよりもはるかに・・。小さな案件を拾い食いつなぐような日々。取引先に呼ばれ叱責され、描いては修正、描いては修正の繰り返し。気力体力を振り絞り、なんとかやりくりする毎日・・・。

そんなある日、あなたは友人を自宅に招き思い切って相談してみました。自分の今の状況や悩み、この先の不安・・・。友人は親身になって聞いてくれました。あっという間に時間は過ぎ、時刻は夜の7時。

相談に乗ってもらった御礼もかねて、夕食を振舞うことにしました。昔からよく料理はしていたので自信はあります。感謝の気持ちを込めて、一番得意な料理を作りました。

「美味っっ!!これめっちゃ美味い!!!お前料理の才能あるんじゃね!?そっちでもやっていけるよ絶対!!マジで美味いわこのチャーハン!!」

あなたは中華料理屋さんになりました
ここからが本題です。(ホーム&ビジターのお話です)

中華の料理人になり働き始めたあなた。しかし1ヶ月のうち、自分の店舗で料理が出来る日は半分もありません。全国各地にあるライバル中華料理店に訪れ、腕を振るいます。

しかし、あくまで自分はビジター。

店内は現地のファン(常連客)が大多数を占めます。自分のファインプレー(タイマーと同時に火を止める、ジャーっと軽量カップに入れた水がちょうど100ml、等)にはブーイングがおき、ちょっとしたミスプレー(餃子のハネが崩れる、ラーメンの湯切りの際に飛んだ汁が目に入る、等)には大喝采が。

挙句の果てには店内でジェット風船を飛ばしたり傘を広げる客たちも。

あなたは思うはずです。
もはや応援とかじゃなくてそれやりたいだけじゃない??と。


でも


そういう盛り上がりや一体感こそが野球の魅力だ!と。
やっぱり野球って楽しいな!!と。
出来ることなら一度は球場に足を運んで生観戦してみたいな!!と。

いやこれは本当に心から思っているから書いたワケで「ちょっと野球をディスる感じになっちゃったかもしれないからフォロー的に入れといた方がいいかな」みたいな事では断じてありません。と!!!



・・・


いかがだったでしょうか?
僕なりに精一杯、事実を伝えたつもりです。


あなたは


それでも


「個人事業主」になりますか?


着地点がおかしな所になってしまいましたが、最後までお読み頂き有難うございました。

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