YOASOBIの「最高」はどこまでも~武道館ライブ参戦レポ+公式レポ感想


YOASOBI的には夏以来ですね、前回オフィシャルでレポーターをやらせていただきました、いち亀です。


武道館ライブ、幸運にもDAY1に現地参戦してきました!!
超激戦のチケット販売だったと聞いております、ほんとに運が良かった。そしてYOASOBIを意識したきっかけでもあり、monogatary.comコンテストへの投稿も見守ってくれた友人と行けたのも良かったです。


せっかくの機会ですので、観客席からの感想を中心にまとめておこうと思います。また、今回への公式レポ企画への感想も書いてます。
(なお所用によりDAY2の配信は観ておりません、ごめなさい……WOWOWさんでの放映、助かる!)

なお今回は各曲というより、ライブ全体についての話が中心です。

全方位×映像演出×上下移動、大胆すぎるステージ

武道館といえば、(武道を究める人は勿論)アーティストにとっても「聖地」と名高い場所。
あの名曲「大きな玉ねぎの下で」で馴染んでいる人も多いと思うのですが、爆風スランプさんも初ライブが武道館だったそうです……ソニー的にも大先輩、面白いリンクですよね。

シンボル的な意味合いだけではなく、客席の構造も特徴的です。すり鉢状といいますか、円形かつ高さのある配置で、スタンド後部からでもアリーナが見やすいんですよね。

本来はステージのない会場なので、アリーナの端にステージを作り、残りのアリーナとスタンドを客席にする……というパターンが多い印象です。恐らく、演奏側にとっても利点が多い構成。

しかしYOASOBIは、アリーナ中央にドンっとステージを配置。「正面」を決めず、全方位に向けたセットを組みました。

円形の会場を活かした360°ステージ、それ自体の前例は多くあります。バンド編成だと、僕はRPG「ペルソナ」シリーズの音楽イベントが浮かびます(ペルソナライブはめちゃくちゃ格好いいのでスポットだけでも観て!)

EXILE TRIBEのハイローライブでは、ドームのアリーナ全面をステージにして歌や踊りや大乱闘が展開され、果ては車やバイクまでもが乱れ舞う、発想も予算も狂ったライブをやっていました。


なので今回のステージも、最初に観たときは「やっぱりこう来たか、楽しみ」「けどスクリーンなしか……映像ないぶんパフォーマンス勝負かな?」くらいの印象でした。
けど開演を待ちながらステージを眺めるうちに、「もしや、あのパネルみたいなの、映るのでは……?」という予感も芽生えてきまして。

結果、

映る! 動く! 大変形スペクタクルYOASOBIステージ!

だった訳です。まさか動くとは思わないですよ??

そもそも「全方位ステージ」と「画面による映像演出」って両立しにくいと思うんですよ、画面は死角を作ってしまうので。高いところに映せば解決しそうなんですけど、視線を送る位置がブレかねないリスクがあります。

そこで「パネルの上に乗る」です。演者に注目すれば映像も目に入ってくる、むしろ映像演出をまとう演者に自然と目が行く。そして照明も加わることで、千変万化・豪華絢爛な視覚表現が繰り広げられます。

YOASOBIにとって楽曲は「曲」であるのと同時に「物語」で、つまりは「世界」だと僕は思います。曲ごとに趣向を凝らした背景でパフォーマンスすることは、曲のたびに世界の間を巡るアーティストのコンセプトにも合っているはずです。

加えて、ステージは各ブロックが分離して上下に動きます。
組み合わせ次第で、全体がせり上がるようにもできますし、階段も作れます。
前半、各楽器の見せ場に合わせてメンバーの足場が順番に上がっていく……という場面がありまして、そのビジュアルがすごく楽しかったんですよね。オタクは推しが上がっていくのが好き。
そして「もう少しだけ」では階段状のステージをikuraさんが歩いていく……という、前回のUTオフィスでのパフォーマンスを想起させるような演出がありました。複数のステージを設置できないなら、一つのステージを変形させればいい……という斬新な発想です。オタクは変形が好き。

「KEEP OUT THEATER」では、跡地というロケーションの趣と、配信ならではの映像表現を。
「SING YOUR WORLD」ではカメラワークを大幅に進化させつつ、アレンジしたオフィスを動くことでの多彩な変化を。

YOASOBIは配信ライブのたびに、革新的な魅せ方に挑戦し、成功させてきました。
そして今回の武道館では、配信ライブでの蓄積を活かしたうえで、有観客ならではの果敢なチャレンジを成し遂げました。

発想は勿論、それを実現するスタッフの結束力、個々の努力が凄まじいですよね……前回の取材でもその一端は拝見しましたが、改めて思い知りました。
シンプルで素朴な弾き語りや、セッションの熱量のみで圧倒するバンド演奏、僕はそうしたライブも勿論好きです。
しかし、先端技術を結集してド派手な空間を演出する超大作ライブには、そこにしかない「夢」があるとも思うんですよね。特に子供にとっては、「こんなすごい景色があるんだ!」から様々な仕事への興味が掻き立てられると思うのです。その原点が小説というミニマルな表現だ、というのも面白いですし。

そして、配信ライブで大きな感動を巻き起こしたエンドロールも健在。準備風景と共にクレジットを流しつつ、最後には控え室に戻ったメンバーが映って再び手を振る、というラストシーンでした。最後の最後まで、ファンへの愛が炸裂していましたね……

「全員・特等席」というミラクル

ここからは僕の予想でしかないので、現地にいた他の人の感覚も気になるのですが。

今回、アリーナに近い席の人は「メンバーが近くに見える!」という興奮をたっぷり味わえたと思います。初の有観客では大事な楽しみ。
ただ、それと引き換えに「床パネルの演出の全体像、ちょっと見えづらかったかも……」という感想を抱いた人もいたかもしれません。

反対に、アリーナから遠めの、あるいは高い席にいた人は「もっと近い人、いいな~!」とも思いつつ、「バンド全体も床の演出もすごく綺麗に見える、結構いい席じゃん!」と感じたシーンもあったと思うのです。

勿論、どの席でも「YOASOBI見えた!!」と「演出すげー!!」を同時に味わえるライブだったでしょう、このキャパでこれだけ「どこでも近い」のは破格だと思います。しかしトータルの水準が高いうえで、バランスは席によって異なっていたのでは……と、僕は考えています。

これが計算された差異かは分かりませんし、「どこも観やすく」は鉄則ではあったと思います、実際それは高水準で達成されていた。
ただ、有観客のライブにおいて、「やっぱ近くの方がいいじゃん」という、いわば「最前主義」みたいな感覚は付随しがちだと思うのです。オルスタとかだと「最前は密集しすぎて辛い」もあるかもしれませんが、座席のある会場ではどうしてもネックになる。有観客ライブでは宿命でしょう。
だからこそ、「後ろの・上の席の方が、演出の全体像をスムーズに味わえる」「その全体像のクオリティがめちゃくちゃ高い」という傾向があったとすれば、それは脱・最前主義というか、方向性は違えど、全部が神席な結果になるのでは……なんてことを考えたりもしました。
(そうした傾向が出るライブは他にもあるかと思いますが、今回は特に強く感じたもので)

そして。
「演者を近くで見たい」「けど会場全体も見たい」「なんならステージ上から見たい」
という贅沢な望みが叶う視点もあるんですよ、そう配信です。

席が取れなかった人、諸々の都合で行ける見込みのなかった人、悔しさは勿論あったと思います。行けた人にフォローされてもムカつくだけ、かもしれません。

しかしYOASOBIが武道館で繰り広げた景色を、常にベストな位置から見ることができたのは配信用カメラワークだったのではと思います。ダイジェスト映像や撮影態勢、SNSの反応も含めて僕はそう感じました。観客を前に初めて見せたアーティストの表情も、カメラはバッチリ捉えていたことでしょう。

配信は現地のサブ、ではなく。「最高の現地」「最高の配信」を極限まで追究した、そんなライブだったのではないでしょうか。大谷選手にも匹敵するショー・タイム、世界に誇る二刀流ですね。実際、海外評価も爆上がりとのことですし。



さらに、さらに。今回のセトリでは、既存楽曲の日本語版は全て披露されました。
曲による知名度の違いはあるとはいえ、YOASOBIの楽曲は全てが主役で勝負曲だと僕は思っていますし、どの曲にもコアなファンがついているはずです。
そして素晴らしいアーティストほど、「ライブめっちゃ良かったけど、【あの曲】やってほしかったなあ……」となってしまうファンはいるでしょう。

その意味でも、初有観客で全曲披露を敢行したのは最高でした。

どこにいても、どの曲に思い入れがあっても、全員楽しませる。
アーティストとしての究極のインクルージョンを見せつけたライブ、だったのではないでしょうか。

全身全霊の「はじめまして」の交歓

「有観客ライブ」というレトロニムが広く使われるくらい、客が集まるライブがチャレンジングになってしまった現在ですが。
いくら配信ライブが充実して、「これはこれで交通費も浮くし良いな(特に地方民としては)」という回が増えても。目の前の推しから直接に音楽を届けてもらうライブは、ファンにとってかけがえのない営みだと思うのです。

そしてアーティストにとっても、ファンとの交流は大事です。
僕はラップグループ・RHYMESTERも大好きなのですが、彼らはライブについてこう語っています。

ずっとスタジオに籠っていても、「もう、俺たちにファンなんていないのかもしれない」とネガティブ思考に陥りがちになる。
けどライブに出ると、ファンが支えてくれるのを実感できる。
ライブではファンから、自分たちのパフォーマンスや楽曲に対して、リアルタイムで熱烈な肯定・賛美が贈られるようなもの。こんな仕事は他にないし、音楽活動を続けるモチベーションでもある。
「KING OF STAGE~ライムスターのライブ哲学~」掲載インタビューより要約


コロナ禍の中でも、多くのアーティストができることを探し、新たな表現を切り拓いてきました。しかしやっぱり、ファンと直接交流できる機会が限られることは、大きな喪失だったと思うのです。

そしてYOASOBIは、知名度や楽曲の普及という意味では記録的な快進撃を続けていたものの、ファンの前に出る機会は逸していたままでした。
疲れや悩みがのし掛かるとき、「けど、待ってるみんながいるから!」と思い出す景色が、YOASOBIには少なかった、あるいはバーチャルに偏っていた……という可能性も、少しだけあったように思います(もちろん、ネット越しの声援は大きな力になっていたはずですし、ラジオでの交流も大きな楽しみになっていたとは思いますが)

だからこそ、「生でファンに会える」ことの意味合いは大きかったのでしょう。まずは8月のFC限定イベントで、そして今回の武道館ライブで。

YOASOBIを大好きな人が、YOASOBIを楽しみまくっている人が、「こんなに」いる。それをリアルに実感できた喜びは格別だったはずです。その喜びは、きっとYOASOBIの新たな力になって、活躍として僕らに返ってくることでしょう。

その喜びはパフォーマンスにも表れていました。
動き回るikuraさんは勿論、Ayaseさんも隙あらば機材を離れてファンを煽っていました。「大正浪漫」で起立を促したAyaseさんを見てめちゃくちゃ笑顔になったのは僕だけではないはず。
「三原色」「群青」では会場全体のクラップを曲に組み込み、「優しい彗星」では会場じゅうのスマホライトが幻想的な空間を作り出す(これがファン先行で起こってたのも凄い)。MCでは全方位に笑顔を振りまく、目を合わせにかかる。

「SING YOUR WORLD」でも、メンバーの喜びを一番に感じたのは、大阪桐蔭吹奏楽部と共演しているときでした。
Ayaseさんのパソコン一台から始まり、ストリーミングや動画サイトで旋風を巻き起こし……など、YOASOBI史にはデジタルな要素が並びがちですが。

「そこにいる人に、生で届ける、一緒に創る」という音楽の原点があって、はじめて「YOASOBIらしさ」が完成した……と、僕は思いました。

(後述の、っきーさんのレポでも触れられていますが)ファンを前にしたお祭り気分に呑まれることなく、楽曲の世界観に寄り添うことを徹底したのもYOASOBIイズムですよね。関わったあらゆるクリエイターたちの想いを背負い、リスペクトを再提示したライブでもありました。

そして今回、「マスク必須、大声NG」という制限はありました。待望の有観客とはいえ、ノーリミットではなかった。

前みたいに騒げる日も来るはず……とは言い切れないのが正直なところです。けど、「もう来ない」と諦めるには早すぎます。

「三原色」ラストのコーラスも、「怪物」2番の掛け声も、「群青」の合唱も、やりたいじゃないですか。名前も呼びたいし、曲始まりの歓声も思いっきり上げたいじゃないですか。マスクに遮られることなく笑顔を交わしたいじゃないですか。感極まったオタク同士の頭の悪い会話だって、ライブの大事な一部じゃないですか。

こんなに楽しかったのに、まだまだ楽しくなる余地は大アリなんですよ。制限される悔しさはみんな感じたでしょう、けどそれは未来に取っておく楽しみにもつながります。

YOASOBIに魅了されはじめた過去より、節目を迎えた今より、ずっと眩しい未来へ向けて。一歩一歩、現実を乗り越えていきましょう……そう思えるライブでもありました。

共演は続く、公式レポートに寄せて

ありがたいことに、前回の僕のレポートには多くの好評をいただきました。YOASOBIチームの皆さんからも、多くのリスナーさんからも。
とはいえ、僕が知らずにやらかしており、ソニーさん内部では「やっぱり、あそこが問題でしたね……ファンから選ぶ企画、フェードアウトしましょうか……」となっている可能性も僅かに危惧していたんですよ、業界って色々難しそうですし(ものすごい偏見)

だから今回も公式レポーター募集が実施されたの、本当に良かったです。チームの皆さんの努力と愛情の賜物ですが、「次もやれる」になれたのが嬉しい。

そして今回の二本、素晴らしかったですね。

まずは1日目、ひよりさんのレポ。

ファンとしての喜び・感動・尊敬、何より感謝。純粋な感情を結晶にした、温かい文章でしたね。それでいて丁寧で伝わりやすいし、「舞台裏にいたファンに訊いてほしいこと」がバッチリ書かれていました。長文が苦手な人も追いやすかったのでは。

スターとしてのYOASOBIにフォーカスしつつも、精神的な近さに触れていたのも共感です。メンバーの親しみやすい距離感は、前回の取材でも常に感じていました……あの賑やかなノリ、普通に僕も混ぜてもらえましたからね。仄雲さんの衣装コメントを掘り返し、ひかるさんの声を真似る人が多いのに突っ込み、写真撮影の謎ポーズを(カメラマンの)安井さんと煽る、などなど。

そして「ラブレター」をライブの核として解釈されたのも良いんですよね……愛と感謝が反響しあって無限に増幅されていく、そんなライブでした。

ちなみに僕は、YOASOBI(というか前回のオファー)がきっかけでBEASTARSを一気読みし、物語と曲の共演に震えまくっていた人です。ひよりさんが随所でBEASTERSを推していたのも分かりて流星群でした。「優しい彗星」の美しさと、描かれた運命……うう……!!!


そして2日目、っきーさんのレポ。ラジオでは「きーさん」と発音されていたと思いますが、促音まで再現してた人も現場でいたんですかね……(想像すると可笑しくて)(僕が機材席の「1カメ、2カメ」コールでビクビクしてた話、またしていい?)

いやあ、濃密。ホールでのコンサート開催に関わったりもされているとのことですが、ライブ現場に対する観察眼が非常に鋭いんですよね。LEDスポットライトの作動音の話とか、観客の有無が音響チェックを難しくする話とか、すごく勉強になった。

加えて文章の組み立て方が「うまい! うまい!」のです。ステージの描写は勿論、オタク的な激情、YOASOBI絡みの小ネタ、現場でのインタビューも加えた膨大な情報を、ベストな流れで配置されているんですよね。

それでいて「言葉で表わしきれない」本質に辿り着くのが良い……あらゆる言葉を巡ったその先の境地ですよ。
言葉で感動の完コピはできない。けれど感動を豊かにし、増幅し、共有することができる。だからこそ、オリジナルの感動が「言葉の限界の先」にあると示す謙虚さが光りますし、言葉によって深まった感動を噛みしめることができます。

ちなみに、レポーター発表からすぐには思い出せませんでしたが。

すげえ人がいるな~とは前も思ってましたね……今回のレポーター試験の回答も論文スタイルで大好きです(英語のアブストがついた推し語り、初めて見ましたよww 僕は「ラストレター」の森七菜さんが特に好きです)

お二人を筆頭に。YOASOBIレポ企画のたびに、大勢の素敵なライターさんを見かけてきました。同じアーティストに対してなのに、みんな言葉や想いの色合いが違うんですよね。違うから辛いことも多い世の中だけど、違うことがこんなに面白い場所だってあるのです。
夢のようなチャンスがあること、愛と敬意の詰まった文章が世に出ること、幸せだらけですね……つくづく、素晴らしい共演です。

物語に、曲に、映像に、ライブに、共演に。「最高の」を実現しまくった2021年のYOASOBIでした。あっちこっちに不安の残る時勢ですが、YOASOBIと一緒なら、2022年もその先もきっと大丈夫。そう実感した年末でし……

いや、まだ終わっていない!!

情熱大陸!! ……は、この記事が読まれる頃にはOA済かもしれませんが。

2年目の紅白!! また目を瞠る演出で歌ってくれることでしょう。

そして年明けには、小説×音楽の首脳会談、いや創世神話みたいな企画が待っています。

退屈してる暇、なさそうですね。

YOASOBIとファンの旅路、これからも楽しみに生きていきます。

お読みくださりありがとうございました、いち亀でした!! 好き野菜は野沢菜です。






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