【熱狂も闇も】#七つの魔剣が支配する アニメ履修者への原作案内【限界突破中】

忙しい方へ向けの三行ダイジェスト

アニメ版ななつまを観てくれてありがとう!
ストーリーやキャラが好みだって人へ言いたい、
その面白さがさらに極まってる原作をぜひ読んでほしい!!

……原作読者は一緒に宣伝していこうぜ!

~以下・本編~

※本記事は『七つの魔剣が支配する』TVアニメ15話までの内容をガッツリ、および原作小説12巻までの内容をうっすら含んでおります。
事前情報を完全にシャットしたい方はご注意ください。


はじめに~アニメ1期ありがとう~

『ななつま』TVアニメ第1期、無事に最終話まで制作・公開されましたね。
まずは関係者各位、本当にお疲れ様でした。

円盤を注文するくらいには気に入ってます(オタク的最上級賛辞)

表向き原作者が肯定していても、自分が支持できるかは別……というのがオタクの常ではありますが。
今回はいち原作ファンとして「だよね先生!!」という感情でいっぱいです。『ななつま』という物語をできる限りリスペクトしたアニメにしよう、という熱意は痛いほど伝わってきました。

アニメ化の報を聞いてから構成の心配は絶えなかったんですよ。原作の区切りを考えると「1クールで3巻まで(駆け足ならギリ)」「2クールで5巻まで(枠とれるか??)」の2択だと思っていたので。

そして確保した尺の中、少なくないキャラクターたちに丁寧に寄り添いつつ、キンバリーの景色を作りこみ、ド派手なバトルで魅せる……
え、ここまでアニメで見せてくれるんだ!?」という喜びの絶えない、幸せな夏クールでした。


アニメ放送パートから振り返る、物語の旨味

僕は以前、原作10巻までの魅力を総括した記事を書いていまして。


魔法と剣術を絡めたバトル、というセールスポイントを中心に。
魔法学園の若者たちの、熱い友情と激しい競い合いが。
人類の可能性を拡張すべく、人道を外れてでも邁進する魔法使いの生き様が。
守り救いたい願いと、復讐を果たす決意が。
どこまでも深く広がってゆく世界の中で絡み合う、愛憎に満ちた一大群像劇となっております。
過去の強敵は未来の盟友、過去の朋友は未来の宿敵。それを何十人もの間で濃厚に描いている。

『ななつま』の面白さをこのように形容したのですが、アニメもこれらが存分に描かれていましたね。
・オリバーとナナオの、友愛と闘争欲が渾然一体となった関係性
・剣花団という絆の芽生え、死地を潜り抜けての成長
・激闘の後に訪れる共闘(ミリガン、ステイシーetc)
・復讐を宿命づけられた、オリバーの裏の顔
・絆を結んだ魔法使いたちの、胸を刺す結末(オフィーリア事件)

やっぱりね。魔法使いたちの絆の始まりと終わりを重ねて描いているバランスが『ななつま』イズムなんですよ……その意味でオフィーリア&カルロスの最期は物語の象徴といえるので、ここまでをアニメの一区切りとしてくれて本当に良かったです。

そして、その人間模様と共にあるのが、あの激闘の数々!!

ななつま流・バトル演出術

バトルファンタジーと銘打っているだけあり、とにかくいっぱい戦うのが『ななつま』です。ずっと戦っているタイプの話が好きなまま成人を迎えた僕のようなオタクにとっては大好物ですし、それらバトルのシチュエーションが多彩なのも最高です。

そう、戦闘の舞台も状況も参加者も、非常にバラエティに富んでいます。
目的ごとに分けても、
・競い合う戦い(ex.魔法剣の授業、一年生最強リーグ)
・身を守る、人を救うための戦い(ex. ガルダ戦、ミリガン戦)
・殺すための戦い(ex. ダリウス暗殺)
では、戦い方も生まれる感情も全く違っています。教師相手には「必殺の魔剣で冷酷に殺す」を選択ができるオリバーが、他の生徒の前で決してその一面を見せないように。

ここに個人/集団や魔法使い/魔物という軸も加わり、物語を追うごとに追加される魔法・技術に絡んできます。
そもそもキンバリーの授業は戦闘色が強いので「この技、あの授業で出てきたじゃん!」という面白さが随所にみられるのです。邪悪な進研ゼミですね。

さらに小説では、魔法・技術の解説や戦闘中の心理描写が濃密に描かれています。
またもや過去記事の再掲になるのですが、

本質的な魅力は、
①技術・属性・思想など多彩な要素を描いておいて
②それら要素を絡めて、制約の中でロジカルな駆け引きを展開
③さらに駆け引きが煮詰まって、剥き出しの信念と関係性が露わになる
……という3点コンボのサイクルにあると感じています。
本作、戦闘に登場する技術や理論が非常に多いです。
メインとなるのが魔法剣×呪文による戦闘ですが、単なる「近接技と遠隔技」ではありません。姿勢の制御、移動や体術の強化、地形や環境への干渉……人とフィールドの全てを巻き込んでの戦いになります。剣術の派生で格闘に発展することもあれば、魔法の結果が思わぬ現象へつながることもある。

「こんなこともできる」を広めつつ「けどこれは無理」を確実に決めておく。だからこそ、説得力のある逆転劇がめちゃくちゃ面白い。
そう、説得力。攻防の一手一手から結末まで、極めてロジカルに構成されています。三人称寄りの視点から、お互いの持ち札と思考を描き、緻密な頭脳戦と迫力あるアクションを同時に組み上げていく。
「このキャラならこう戦うよね」と安心感を与えつつ、「そんな反撃が!」「実はこんな布石が!?」という驚きを読者も一緒に味わう。この驚きを、敵味方どちらの視点からも堪能できるのが良いところ。

こうしたロジカルかつエモーショナルな文章表現は、アニメでの映像表現を補助線にすることで猛烈に消化しやすくなっているはずです! あの芸術的な戦闘描写へのアクセスがぐっと容易になっている今こそ!!


……という概論をお伝えしたところで。
アニメ化パート(原作3巻まで)以降の見どころ、お届けしたいと思います。

原作プレビュー①超絶スペクタクルの教師暗殺作戦

アニメ5話(顕現-アライズ-)でのダリウス暗殺はオリバー単独で行われましたが。2人目(第5巻)と3人目(第10巻)では、教師ひとりに対してオリバーたち同志が数十人態勢で挑む大決戦が描かれます。スケールも尺も、ダリウス戦の比ではありません。
それまでに描かれた要素の総復習に湧き、オリバーたちが織り成す集団戦の見事さに痺れ、魔道を極めた教師の奥の手に震え……「やっぱり面白いな~~」が「えっまだこんなに化けるの??」「宇野先生こんなこと思いつくの??」に発展していく、壮絶にして極上の読み味です。

また教師戦は、オリバーの過去が明かされるパートでもあります。心優しい少年でしかなかった彼が、なぜ修羅の道へと進んでしまったのか。どんな想いで、人を殺す力を磨き、死地へと仲間を率いるのか。

そして、対する教師も。ある意味ではオリバーと同じように、何かを喪っては宿命を背負い、非道を承知で魔道を極めてきました。
この残酷なシンクロが……たまらなく、美味……!!!!


原作プレビュー②群像戦記の極致、決闘リーグ&生徒会選挙

主人公の目的が暗殺による復讐であるとはいえ、キンバリーは学園です。切磋琢磨するための、人の死なないバトルだって沢山あります。

先輩も同期も後輩も総出演、いくつもの種目で熱闘を繰り広げる学園公式イベント・決闘リーグ
その裏では、キンバリーの未来を占う学生統括選挙を巡る政治劇が展開されます。

6巻~10巻で描かれるこの壮大な群像劇が、あまりにもあまりにも楽しいんですよ……数十名に及ぶキャラクターたちの技と絆と信念と宿命が重なり合って、面白すぎてどうにかなっちゃうんですよ……!!!

『ワールドトリガー』のランク戦を意識しまくっている(作者公認)3人×4チームによるバトルロイヤルは、戦術の多彩さと戦略的な駆け引きとフィールドの特性が絡み合って脳汁ドバドバ。
その最中、某上級生の企みをきっかけに生徒同士の抗争が発生。決闘リーグで競った面子と共闘する、熱い展開が待っています。

「体力や技術だけじゃなく頭脳も使った戦闘が好き」
「熱戦を経たからこそ深まる友情が好き」
という方は、ぜひ、なにとぞ、お見逃しなく……

原作プレビュー③想像を絶する脅威「異界」に震える

アニメではほぼ語られていない、しかし『ななつま』世界を考えるうえで欠かせない超重要事項です。
現実世界の太陽系の惑星は、『ななつま』世界においては「異界」として登場しています。それぞれに全く異なる神が君臨し、地球(≒人類の世界)とはかけ離れた自然法則や生命体が存在しています。そして、他の世界を自分たちのルールで塗り替えようと狙っています。

その異界の存在は「渡り」として人類世界に浸蝕。
さらに「渡り」の一部である「使徒」は、人間を狂わせ「異端」に改造することで異界の侵略を導きます。
こうした異界勢力への対処「異端狩り」は魔法使いの重大な責務であり、キンバリーが超武闘派・成果主義となる背景でもあるのですが……

めっっっちゃくちゃ、怖いんですよ。残酷なんですよ。不条理なんですよ。異端狩りの描写は。
キンバリー教師をはじめ『ななつま』世界の大人、人道もへったくれもない武闘派マッドサイエンティストが少なくないのですが。
「こんなもん見ちゃったら、倒す強さこそ最大の正義ってなっちゃうよな~……」
と納得させられてしまう、圧倒的すぎる脅威です。

さらに。異端へのスタンスは、クロエ(オリバー母)とキンバリー教師の因縁に絡んでおり、オリバーの宿命にも深くかかわっている……だけでなく。
剣花団メンバーの熱く清らかな絆にも、暗い影を落とします。
『ななつま』キャラで僕が一番怖いと思ってるの、純朴ヒロインみたいな顔してるあの子なので。

問答無用で人類世界を侵略する脅威に、狂わされ導かれる魔法使いたちの生き様。面白いですよ。

終わりに~世にも美しい花の散りざまを探して~

オフィーリアと仲間たちとの永訣、それ以前に。
ナナオがオリバーへと抱く望みは「死ぬまで斬り合いたい」であることが示されています。
強すぎる宿業を抱えた魔法使いたちが絆を結び合ったなら、彼らが共に天寿を全うすることはなく、少なくとも一方の滅びによって決着がつく……という運命を『ななつま』は繰り返し描いています。

オリバーは魔法学園で、多くの魔法使いと手を取り合い、あるいは剣を交えることで、絆を結んできました。
一方では、人類の未来を左右しかねない暗闘に身を投じています。その先で対峙するのは仇敵である教師だけではなく、かつての学友も含まれることでしょう。そのたびに読者がとてつもない感情の起伏を味わうだろうことは、疑いようがありません。原作でアニメで、何度震えたことか……

共鳴と対峙が織り成す、無二の読み味の群像劇。
その全てを彩る、極上の戦闘描写。

それが『七つの魔剣を支配する』を小説で読む楽しさです。
アニメでキンバリーの景色が浮かびやすくなった今こそチャンスです。

とりあえずアニメ化以降の、4巻&5巻だけでも。お買い上げ、いかがです?

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