MIU404 視聴想査隊~刹那の分岐点を「駆け抜けた」第3話初動報告

(バックナンバーはマガジン欄からどうぞ)(今回も観た人向けです)

ちなみに、記事の構成はその回の書きやすさによって変えています。今回はテーマごとの分解ですね(2話は関係性の変化自体がメインだったので時系列になりました)

「連ドラ」としての構成力~キャストの躍動、二段構え、ゲストの告知とサプライズ~

第3話、作り手に「踊らされる」気持ちよさが非常に強かった回でした。

予告通りにアクションシーン……車ではなく、キャスト自ら走りまくっての追跡劇が多かったです。冒頭での陣馬&九重の初遭遇、続いて志摩&伊吹による接近、後半での4機捜合同、からの女子高生救出まで。
僕がアクションオタクだからという節もありますが、身体を張った熱演はそれ自体が楽しさに直結しますし。バディの掛け合いやチーム戦のスタイリッシュさも詰まっていて目が引かれっぱなしでした。
夜の街をダッシュしたいという願望は三つ子の魂ですし、そこに仲間と通信ですからね。男の子のテンションが上がるテッパンですし、女性陣もそんなバイブスあるのでは?(その意味で、高校生側のゲーム感覚自体は分からなくもないのが苦い)

とにかく綾野くんの走りっぷりが良い。「イタズラ」側の心理を読んで状況を動かしたことも含め、野性派っぷりが濃かったです。相手方の心理に近いからこその読み、PSYCHO-PASSの執行官を思い出す人も多いのでは。
徐々に遊びからマジへ追い込まれていく高校生側も熱演。縄跳びで伊吹を転ばせるカット、珍しい撮り方が印象的でしたし、それ以前の運動シーンからの再登場には笑ってしまいました。ライトな方の小道具伏線。

そして、ガチのわいせつ犯という急展開。確保された高校生たちも捜索に加わり、そのまま画面の疾走感で確保まで引っ張り続ける。伊吹のライダーキックがお見事。
ここで、(一度は虚偽と判断された)マキの通報がガチだと扱われたのが、オペレーターの直感によるものだったというのも好きな展開です。やや偏見が入りますが、同じく「若い女性」であったからこそ気づく切迫性があったと解釈すると、多様なセクションでジェンダーを除いていくことの意義につながるとも感じました。

とはいえ。体育さん参戦については告知されていましたし、「あの面構えで犯人役だったら面白すぎだけど安直だよな……」という予想もできていました。遊びでやっていた虚偽通報により自分たちに危機が迫るという展開も、fフィクションにおける因果応報としては妥当。画面は楽しかったものの、案外ストレートな着地だな……けど「感電」流れてるしまあ解決だわな、そう安心していたものの。

まず、見逃された成川が逃走を続けており、自殺でもしかねないムードを漂わせているという苦い後味。
からの。

強烈なビジュアルと喋りを見せつけつつ、黒幕が絡んでくるという。しかも菅田くんですよ、いま一番忙しい役者さんでは。
「今回のゲストは岡崎体育」という、コンテンツ力の高い告知に引っ張られて。主題歌が流れたら解決という、前2話ぶんの感覚を逆手に取られて。考えられる中で最強クラスのキャストをぶち込むという。TVドラマの構成として、事前告知から終盤でのサプライズまで(ベタさを含めて)ずるいくらい巧い。

アンナチュラルの世界線ともつながった訳ですし、さらにサプライズでUDIメンバーとかないだろうかとも期待しちゃいます。「コインの裏表」が流れたのも良かった。

加えて、作中のテンションについて。今回は画に引っ張られる形で、キャラクターたちの言動のトーンも高めだった気がします。しっとりしたトーンが多かった2話とは対照的に。
そこからラストで陰惨なトピックを出し、不穏な引きで終わらせたのも、まんまと落差に乗せられた感があります。

未来を守る「適切な罰」とその破綻

今回、社会問題として扱われていたのは(危険ドラッグというよりも)少年犯罪。罪を犯した青少年の更生を助けるシステムである少年法と、それを妨げる因子としての学校やネット制裁。

実際に凶行に遭ってしまったマキはともかく、陸上部男子サイドの争点は「非行のエスカレートを止めて更生に導けるか」だったと思うのです。迷惑な虚偽通報を止めるのも勿論ですが。
その意味で、取り逃した成川は(今回に限れば)助けられなかった人間になります。さらに確保されたメンバーも、個人情報が暴露されるというイレギュラーな制裁を受け、社会復帰のハードルが上がったことが示唆されていました(捜査の手がかりになるかと踏んでいた特派員REC、今回はこっち側でしたね……)

さらに、警察の捜査を受けた学校側の対応。生徒について虚偽の申告をしただけでなく、陸上部の記録を処分する(ドラッグの捜査にも影響)という、相当にダーティーな保身主義を見せていました。ここで警察に協力していれば成川は……そう思わずにはいられません。
非行少年の保護、警察だけでなく学校の役割でもあるはずで。教員が事件捜査やらパトロールやらに従事するのは筋違いだとは思いますが、未来を守るという点で目的は同じはずなのです。だからこそ、彼らを捜査から匿うことで結果的に切り捨ててしまうという構図は醜く映りました。妙なリアリティがあるのも余計にビター。
(ちなみに。バシリカ高校の制服が、同じくTBSドラマの「表参道高校合唱部!」と類似しているのも切ない一致でした。学園ドラマで一番好きです、オモコー)

そして、ツイートで指摘されている人も多かったのですが、追跡の終盤で出会ったのが誰なのかが大きかった。陣馬から方針変更が伝えられた後の三人の高校生に対する行動、
・九重は指示通り、追跡を断念して方向転換(マキの件を伝えず)
・志摩はマキからの通報を伝え、叱責してから方向転換
・伊吹は確保しかけてから手を緩め、捜索への参加を促してから方向転換

という風に分かれています。そして、九重が追っていた成川だけが逸走。
ここでの選択、「犯人」であった高校生にマキの件を伝えるかどうかの基準になっていたのは、彼らを「信じられるか」にあったと思うのです。
志摩と伊吹は、事態の悪化を知った高校生たちは警察に従う(協力する)だろうと判断した。一方の九重は(追跡時の態度から類推するに)力尽くで捕らえることのみを考えていた。

田辺夫妻の抱える後悔は、息子を疑い自殺に追い込んでしまったこと。
加えて、加々見の背景にも「信じてくれなかった」は関わってくると感じます(前回記事より)

2話を受けてからのこの流れ。今回志摩が言及していた伊吹の特質も、「追っている人間を信じること、同じ人間として扱うこと」が関わってくるように思いました。そもそも2話も、罪を犯してしまった人間の更生を暗示する内容でしたし。

そしてこの末路を、ピタゴラスイッチの障害物とビー玉で暗示するという演出も鮮烈でした。志摩が翻弄される個人に喩えたビー玉を、伊吹はキャッチ(ブラインドという驚異)し、九重は弾みで床に落とす。ヘビーな方の小道具伏線でしたし、このドラマで描こうとしている環境と犯罪の関係性、機捜の意義のシンボルとして非常に効果的。
話は逸れますが、このピタゴラスイッチシーン、それなりにOKテイクの難易度が高いと思うんですよね。その後のスロー&キャッチも含めて、失敗しては励ましあっている現場の様子を想像すると楽しいような胃が痛いような。

個人的な話になりますが、以前の僕は少年法が「めっちゃ嫌い」でした。社会的な考察ではなく感覚として。大人と同じ天秤で裁かれないことは、大人に比べて劣った存在として扱われているということだ、そんな気でいたんですよね。認知されないままのうのうと社会復帰している凶悪犯がいることへの嫌悪感も大きかった。


こうした嫌悪感は今でも残っていますが。少年期の不安定さ、社会復帰=社会を支える人材の創出、矯正による再犯防止……という側面まで考えると、それなりに意義はあるのではと考えるくらいになっています。加害者への裁きというより、被害者や遺族へのケアが足りていないことがアンチ少年法感情に結びついているようにも感じますし。
後は、自分がいかに「非行に走りにくい」子供であったかを理解するようになってきたからですね、性格ではなく環境の話。いじめられたり悩んだりもありましたけど、家にも学校にも居場所はありましたし、経済的な困窮や心身への脅威という点から見れば非常に恵まれた家庭でした。それらを振り返ったときに、家庭ガチャでクソ札を引かされ非行に追い込まれてしまった少年への救済があっても良いのではと思ったりもしたのです。

その意味で、桔梗と九重の議論やRECの表情が重く刺さった回でもありました。「誰かが最悪の瞬間になる前に」とは、何も事件対応だけでなく、長期的な予防にも関わってくる。

機捜の人間関係から

今回、志摩と伊吹のバディ感がかなり良い案配だったと思うのです。衝突よりも信頼の度合いが高くなったというか、志摩から伊吹への評価が増している。この関係性がどう試され、あるいは割れていくのかが楽しみというか怖いというか(だって仲良いままじゃ平坦ですし)

そして桔梗隊長、ここに来て息子のゆたかくんの存在が明かされました(冒頭の電話、明らかに子供相手だと感じられたのでやや滑りに思ったり)
加えて、ゆたかくんの面倒を見ていた謎の女性(黒川智花さん)も登場。彼女の初登場シーン、成川が本来持っている優しさを示すシーンでもあったのもスマートでしたよね……桔梗隊長との微妙な距離感も含め、面白くなりそうです。隊員のプライベートの描写が少ないシリーズの中でどう絡んでくるのか。

さて、今回はここまでです。
お読みくださりありがとうございました、願わくばまた来週。


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