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【霞ヶ関の人の生態⑦】国会議員レクを鬼滅の刃で例えてみた

世間の流れに乗って、絶賛「鬼滅の刃」ドはまり中です。
(※単行本20巻までしか読んでいないので、最後は教えないでください!)

今年から入った途中入省組の新人さんが、さっそく議員レクで恐怖体験をしたらしく、
「議員レクは怖い!トラウマでレクと聞いただけで震える」と怯えていたので、鬼滅の刃を例えにして、議員レクの心構えを説明すると意外とフィットしたので、今回は霞が関の人がレクをする時の心境を、鬼滅の刃で解説してみたいと思います!
(マンガ、アニメを読んでいない人はすみません…)

ちなみに「レク」とは、基本的に説明をすることという意味で使っていますが、詳しくは下のブログを参照ください。
【霞ヶ関用語】レク・・・っていっても楽しいイベントじゃない


今回の設定として、「霞が関の人(官僚)=鬼殺隊」、「国会議員=鬼」です。
(※国会議員が本当に鬼!という訳ではなく、あくまでレクという場を戦場として考えると、という設定です!)

まず、霞が関の人のレク技術(強さ)は、事務次官、局長級が柱に相当、課長級はもうすぐ柱になれそうな中堅の鬼殺隊、課長補佐級、係長は雑魚の鬼殺隊、係員は鬼殺隊に入団前の修行の身くらいの強さです。
一方、国会議員の強さ(これは権力というだけでなく、言い方が難しいのですが、圧迫感というかオーラというか、ベテラン大御所議員ほど、この得も言われぬ気迫というか圧迫感があります)は、総理大臣が鬼舞辻 無惨(きぶつじ むざん)、各省庁の大臣や大臣OBなどが十二鬼月の上弦の鬼、副大臣・政務官が下弦の鬼に相当します。
鬼滅の刃とちょっと設定が違うのが、「大臣、副大臣、政務官」は自分のボスに相当するので、基本的には敵ではないというところです。ただ、大臣などの立場の人にレクするのは、胃が飛び出るほど緊張しますし、うまく説明できないと斬られます(やり直しや案が通らない)。

今回は、国会での質問に対してのレク、所謂「問取り(もんとり)」を例に説明したいと思います。
国会の委員会のだいたい前日に、委員会で質問をする予定の国会議員から「質問要旨」という紙が担当部署に送られてきます(質問要旨は挑戦状みたいなものです。ここで対戦の火蓋が切られたイメージです)。しかし、その質問はだいたいザックリとした内容で1行くらいしか書いていないことが多いので、今ひとつ何が知りたいのかわかりません。そこで、直接議員本人に趣旨や、問題意識を聞きに行きます。これが「質問聴取=問取り(もんとり)」といわれるものです。
だいたい、質問要旨に「〇月○日◎時に、議員会館に来られたし」と書かれているので、遅刻しないように慌てていきます。そこが霞が関の人(今回は鬼殺隊と呼びましょう)にとっての戦場になります。

問取りには、その案件に詳しい鬼殺隊の雑魚(課長補佐か係長)と鬼殺隊未満の研修生(係員)が2人セットで出向きます。鬼殺隊は、色々な武器(何を聞かれるかわからない時は大量の資料)をトートバックに入れて、電車に乗って議員会館に向かいます。

議員会館の議員の部屋の前に行くと、色々な部署から問取りに来た鬼殺隊雑魚兵士と研修生がわらわらと集まってきています。たまに、重要な案件だったりすると中堅鬼殺隊(課長)もいたりします。

国会議員(ここでは鬼と呼ばせていただきます)が現れると、鬼殺隊の中で緊張が走ります。
だいたい、1回の国会質疑で、国会議員はできるだけ多く質問したいと思うので、時間以内にこんなに聞けないでしょ?というくらい沢山の質問(攻撃)を用意しており、それぞれの質問担当の鬼殺隊であふれかえります。全員集まったところで、全員すし詰めになって一つの部屋に入り、鬼と鬼の秘書と鬼殺隊の闘いが始まります。

門取りは非常に張り詰めた現場で、1問1問それぞれ質問に対して担当の鬼殺隊が説明します。こんなに緊張する場になる理由は、明日の国会で聞かれることなので、正確に聞き取ることが必要で、さらにできるならその場で答えきって、国会の質問から外してほしい(なぜならその日の深夜までの残業がなくなるから!)という思いもあり、真剣勝負になるからなんです。

そして、「これはどうなの?」と鬼に聞かれた時に、できるだけ素早く、要領よく、簡潔に攻め込む(回答する)ことが重要です。ついでに、適切な武器(資料)を鬼殺隊研修生が後ろからサッと出せると最高です(これをリアルに手裏剣で出す、と言います)。これは間髪入れず答える呼吸の訓練が必要です。
ここで、たらたらと曖昧な言い方をしたり、聞かれていることと違うことを答えてしまうと
「そんなこと聞いていない!」と斬られます。
うまく攻め込めない(返答ができない)ことが続くと、だんだん鬼が不機嫌になり、最悪は
「お前じゃ話にならん!もっとちゃんと話せる人(ベテラン鬼殺隊)を連れてこい!」
となることもあります。
脇で自分以外の鬼殺隊の闘いを見ていてもハラハラします。よく聞くとその鬼殺隊が担当する範囲の質問ではなく、実は自分の部署の質問だったりすると、援護射撃したりすることもありますが、基本的に自分たちも一緒になって斬られたくないので、息をひそめてじっとしていることが多いです。。。(なんせ雑魚キャラなんで生きて帰ることが至上命令です)。
そして、自分の番が来ると、事前に来た質問要旨の質問の意図を掘り下げて聞きます。

割とザクッとした質問だと、「これは〇○のことを仰っていますか?」と確認し、一連の質問に対する説明を行います。「もう攻撃する(質問する)と決めているので、明日の国会(対戦の場)で答えたらいい」と言われることもありますが、その場で自分の管轄内か管轄外か明確にして、管轄外であれば他の鬼殺隊グループに振りなおしをお願いし、管轄内であれば、間髪入れず短時間で簡潔に説明し切ることが相手の懐に入るコツで、また雑魚鬼殺隊では判断できないことは安請け合いしないよう、その場の臨機応変の対応が求められます。また、鬼がどういう意図で質問を出してきていて、どういう考え方を持っているのかも同時に読み取ります(鬼の闘い方の筋を読んでいる状態です)。この真意を読み取るという技が重要で、この読み取り間違いをすると、後で見当違いの答弁を書いてしまい、対戦の場で柱やボスである上弦の鬼が斬られてしまうことになります。
ある程度鬼がその場で納得しても、国会でやはり質問に出すと言われれば、今度は誰が答弁に立つか(誰が対戦の場で戦うか)の相談を鬼とします。「大臣で(お前のところの上弦の鬼で)」か「政府参考人(局長級のこと=柱)で」と言われるかは鬼次第ですが、自分のボスの上弦の鬼はとても忙しいですし、あまり意思決定に関係ない質問だと、「数字的な事務的な話なので、うちの上弦の鬼より、うちの柱にしてください」とお願いしたりします。

そして、なんとか明日の闘いの質問内容と意図を正確に聞き取るという雑魚鬼殺隊の役割を果たしたら、今度はそれを基に答弁作成(技を磨く修行)です。だいたい翌日の闘いの場までに用意しないといけないので、ほぼ深夜までかかります。問取りだけでかなり消耗している中、さらなる修業が待ち受けています。
プロセスとしては、雑魚鬼殺隊が答弁を作成→中堅鬼殺隊のチェック&修正→柱のチェック&修正→場合によっては財務省の鬼殺隊のチェック(お金が絡む質問の場合)→ボスの上弦の鬼の秘書のチェック→決戦の場の当日に上弦の鬼のチェック、という果てしない内部での戦いがあります。ちなみにボスの上弦の鬼には柱が説明します。いい答弁ができていないと、柱が斬られてしまいます。
答弁ラインが正確であれば、スムーズに修行が進んでいきますが、上司の鬼殺隊も色んなタイプの人がいますし、上弦の鬼の納得する答弁でなければ、非常に厳しい反復訓練が続きます。

何問も当たってしまったり、色んな考え方があるような質問だったりすると、朝日が昇るくらいまで修行し続けるので、身も心も一夜にしてボロボロになります。

そして、休憩する場もなく、朝になると柱から身内の上弦の鬼にレクを行い、国会(決戦の場)に臨みます。

決戦の場(国会の委員会)には、身内の上弦の鬼、上弦の鬼の秘書(これは精鋭エリート鬼殺隊が選ばれています)、柱、雑魚鬼殺隊(担当)が向かいます。
直接、鬼と戦うのは、上弦の鬼と柱です。上弦の鬼の秘書と雑魚鬼殺隊は何かあった時に後ろから手裏剣を出す役割です。

そして、前日に質問した鬼とボスの上弦の鬼か柱が真剣勝負に臨むのです。。。
テレビではあまり伝わらないかと思いますが、国会の委員会はかなり緊迫感がみなぎるところです。雑魚鬼殺隊はたまにテレビの後ろのほうで真っ青な顔で映っているのが見えると思いますので、その表情を見て、いかに緊迫した場か感じてもらえるとありがたいです。

ということで、今回は国会の質問要旨が来てから国会本番までのプロセスを鬼滅の刃でお届けしました。決して、鬼のように怖い国会議員ばかりではないので、ご留意ください!
霞ヶ関の人にとって、どれくらい緊張し、消耗することかというイメージが伝わるといいんだけど…若干設定が鬼滅の刃と違うところがあるかと思うので、ややこしかったかもしれません。

そうやって、いくつもの厳しい戦いと修行を経験し、鬼殺隊研修生(係員)で生き残った者の数人がいつか柱(局長)になるのです…

鬼滅の刃に例えたら、新人さんも勇気が出るかな?と思ったところですが、余計恐怖をあおってしまっていたら、申し訳ないことです。いきなり上弦の鬼に当たってしまったのがトラウマになってしまったようです。。

でも結局、たくさん鬼と戦って、斬られながら、強くなるしかないのです。