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【霞ヶ関の人の生態⑫】大人のクラス替え~ザ・人事異動~

今年は国会が6月20日に閉会しました。張り詰めた毎日から束の間だけど解放されました。やった~!と喜ぶ間もなく次々と霞が関イベントが押し寄せます。
大きなイベントの一つがザ・人事異動!
なんでこんな時期に?と意外に思いますよね?もちろん3月末にも人事異動があるのですが、霞ヶ関全体の大規模な人事異動は国会が閉会して数週間以内に行われるんです。たぶん国会の開いている途中で人が変わると、国会対応を慣れていない人がやらないといけなくなるので大変、という思いがあるのだと思います。

今回は私も人事異動の対象なので、6月中旬からソワソワ落ち着かない日々が続きました。
なんでわかるかというと、「霞が関で同じ部署にいるのは長くて2年!」という暗黙のルールがあるのです。
2年って普通の会社だと超短いですよね。仕事に慣れて、一通りわかってきたと思ったらもう異動。
なんと、私は霞が関に来て4年半なのに、今回は5回目の異動です!今まで、半年、1年、1年、2年というスパンで異動してきています。ただこれはかなり異例だとは思います…。理由は、たぶん中途半端な時期に入省したことと、前任者が辞めてしまい「玉突き人事」でいなくなった人の穴埋めするための異動です。3つ目の異動先は、死にそうな目にあった法案審議のタコ部屋だったので、その時は早く異動させてほしいと希望はしていました…

こんな頻繁な異動をしていると感覚が麻痺してきて、2年くらいたつと仕事にも慣れてきているので、「また同じことをするより、新しい刺激がほしい!」という刺激中毒になってしまっています。また、じっくりと自分の仕事が実を結ぶまで見守りたいという気持ちと、長く居続けるとそれだけ生き字引的になって、負荷がジワジワと増えてくるので、「リセットしたい!」という気持ちとが入り混じります。
同僚で、案件の大事な局面なので替えがたい人材(生き字引)ということで4年同じ部署にいた人がいました。4年目も同じ部署に留まると車の中で上司に聞かされた時、思わず車から飛び出した、という話を聞いて、4年の重責は想像がつかないくらいシンドイんだろうなあと気の毒に思ったものでした。(4年頑張って、その後は無事に脱出されました)

自分が異動の対象じゃなくても、周りの人が替わってしまうのもそれはそれでストレスで、うまく一緒に働ける人だったらいいけど、一緒のチームの人はあんまり仕事のできない人だったら嫌だし、上司はパワハラだったらホント恐怖、ということで、ソワソワします。
情報通の人は、いろんな人脈や手を使って、自分の人事異動や同僚の異動をサーチしています。課長も、人事異動付近になるとしばらく離席していたり、コソコソ話をしたりして、不審な動きをするので、みんな顔を見合わせて、怪しいぞと合図を送ったりしています。

 人事異動の内示は異動の1週間前が通例です(2週間前の所もあるようです)。東京都外にでる地方への異動であればだいたい1か月前に言われるそうです。霞が関は海外転勤もあるので、場所によっては1か月前でも家探しも転居手続きも仕事をしながらやらねばならず、大変です。
霞ヶ関内の異動でも、1週間の間に後任への引き継ぎ作業と、お世話になった仕事相手へのご挨拶、片付け、などなど急にギアが入ったように忙しく、感慨にふける暇は全くありません。。。普通だと送別会もあるのですが、今年はコロナの影響で、3月から歓送迎会は延期中です。もしかして一生会わない同僚もいるかもしれないと頭の片隅に思いつつ、それを惜しむ時間もありません。個人的にこの人にはお礼を言いたいという人には、個別にメールしたり、これからもつながっていたいと思ったら、省庁が変わるときはつながっていられるよう個人メールを伝えたりもします。
 そう、霞が関は同じ省庁だけでなく、お隣の違う省庁への異動も割と頻繁にあるんです。そうすると、異動とは言っても、やる作業は退職と入省を事務的にすべてやり直しです。転職とほぼ同じです。メールも今まで使っていたものは凍結して、新しいアドレスになります。

私の今回の内示はテレワーク中でした。だいたい今日かな~と思う日、朝からソワソワしっぱなしだったのですが、夕方になっても課長から電話がかかってきません。
あ~まだ先なのかな、と思って気を緩めた途端、電話がかかってきて本当に驚きました。テレワークの異動の内示は課長の不審な動きも見れないので心臓に悪いです。

1週間で怒涛のようなお片付けの日々を終え、7月から新しい部署に着任です。
同じ霞が関といえど、部署が違うと色んなお作法も違い、知り合いもゼロになるので、ほとんど転職したくらい緊張する日々が続きます。

今回、私の人事異動は省庁をまたがるものだったので、初日から色んな事務書類を新入社員と同じように揃えて、パソコンも全然システムが違うので、イチから覚え直しです。せめて書類は引き継いでくれ~と思うところですが、それはお役所仕事、個人のほうに手間をかけさせられます。。それも5度目の人事異動なので慣れたもの、心を無にして作業をこなします。

新しい仕事の引き継ぎは前任が早めにいなくなっていたので、全くありませんでした。
引き継ぎの書類を見ながら、滝のように流れるメールを読みこなすだけで1日があっという間に過ぎ去ります。
人間関係もよくわからないので、どこまで上司に相談して、どこまで自分でやり、どこまで部下に仕事を振るのかもオンザジョブ・トレーニングです。誰がどんな仕事をしているかもメールのやり取りを見ながら、読み取っていきます。そして、私が周りにどんな仕事をしてほしいと期待されているのかも、やり取りしながら少しずつ理解していきます。まだよくわかっていないですけどね…

しかし、仕事は待ってくれないので、全くよくわからない案件のレクに出席したり、打ち合わせで意見したりしないといけない場面も早々に出てきます。
一応、そっと部下の人がいてくれたりしますが、タイマンはるのは自分の仕事。
内心不安に思いつつも、動揺を全く見せない演技力と、よっしゃとりあえず来い、という度胸試しの心持ちです。

新しい部署に来て、仕事量は急増しました。肌感覚的には6倍くらい。同僚で毎日終電越えの人もいます。だんだん、そういう環境であることもわかってきました。
同僚はみんな優秀で、淡々と大量の仕事をさばいていきます。
私は今までの6倍の案件をさばいていかないといけないので、5分ごとに頭の切り替えが必要で、集中して考えたり勉強したりする時間がないのが苦痛に感じます。
政策を考える時には、じっくりインプットして考える時間が必要だと思うのですけど、こんな矢次早に処理しないといけない細かい案件があると、そりゃ画期的な政策が出てこないよな…と妙に納得してしまいました。

みんな素晴らしくまじめで優秀です。
それがうまく活用できていない、と嘆くOBの人の話も、今の部署に来てすごく納得している今日この頃です。
私は、ちょっとこの職場環境にうまく適応できるのか自信がなくなってきている、という中間報告でした。

前からいきたかった部署なので、もう少し、頑張ってみます。
こころや体が壊れそうになったら、壊れる前に自分を守る行動に出ようと心の中で決めています。
それくらいのスタンスでやらないと、ほんとにヤバい気がします。
毎日終電越えの若手の同僚は、大丈夫なのか、本気で本当に心配です。