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【霞ヶ関の人の生態⑭】意外とダイバーシティ。チームで仕事をするということ

新しい課に異動して約1か月。
怒涛の日々が続き、毎日脳のCPUがフル回転で、毎日夕方になると酸欠でグッタリです。
その理由の一つは、新しい課の知識のインプットをなる早でやりつつ、同時にアウトプットもやりつつ、同じ課の人の経験や興味、能力を見極めつつ、仕事を配分してチームとして機能させる、ということを同時並行にしないといけないからです。
いや~みんなよくこんなマルチタスクをやっているな…と中途入省の見かけだけベテラン風、の私は心の中で感心してしまいます。

この中で1番大変なのは、同じ課のチーム編成を理解して、うまくワークするように体制を整えること

というのは、こういうことは引き継ぎ文書には一切書かれていないし、前任者に聞くことができない状態だったりするし、メンバーもコロコロと変わるので、その都度最適化していかないといけません。さらに、課によってチーム編成が違うし、仕事の内容も全然違うので、前の課の経験が必ずしも生かされないんです…
じゃあ、同じ課にどんな人がいるか、多分外からは同じような均一的な人たちだと思われている霞ヶ関ですが、霞が関でのチームってどういうことかについて紹介してみたいと思います!

霞が関の職員はみんな骨の髄から「ザ・官僚」と思っていませんか?国家公務員試験を受けて、20代前半からずっと霞が関の職員として働いている人たちばかりだと思っていませんか?
実は、霞が関の人は2つの顔を持っている人が結構いるのです…
その人たちは、「人事交流」「出向」「研修生」などなど色んな呼び方をされていますが、「霞が関の公務員」という仮面を被りつつ、実は本職や本業が別にあり、期間限定で霞が関の中で働いている人たちです。
2枚の名刺を持つ人の本当の名刺は、「地方自治体職員」「IT企業のSE」「大学の先生」「病院の医者・看護師・保健師」「広告会社」「生協」「保険会社」「航空会社」などなどかなりのダイバーシティです。
私も最初に霞が関で働きだしたのは、この「人事交流」としてでした。
ただ、見た目は普通の霞が関の職員として擬態して働いているので、必要がなければ自分の他の顔を言うことはないし、名刺にも書いていません。
こういう人たちがいるのは、霞が関の本職の人達が、日常的に気軽に現場の現状を聞いたり、かなり専門的な事を聞いたり、難しいスキルが必要な技術を教えてもらったりするためです。
よく活動家や政治家からレクに行ったときに
「霞が関の中で机の上だけで仕事をしていて現場を知らん!けしからん!」
と怒られたりします。
心の中で「その現場から来たんですけど…多分あなたよりもずっとこの問題は身に沁みている当事者です…」
と思うこともありますが、よっぽど必要な状況じゃないと
「実はわたくし…」
とは言わず、霞が関の公務員の仮面を被って
「はあ、勉強不足で大変申し訳ありません」
と言っているわけです。
あくまで霞が関の人という役割に怒られているのであって、個人に対して怒っているわけではないと思って、霞が関の人という役割を演じているのです。

同じ課の中には、そういう現場や会社から来た人のほかに、霞が関が本職の人がいます。その中でも内訳があって、主にいわゆるキャリアと言われる総合職の人ノンキャリと言われる一般職の人理系の技術職採用の技官と言われる人がいます。総合職の人は「法令」とも言われ、法律を書いたり解釈したりするのを得意とし、一般職の人は予算や事業の管理をするのが得意だったりして(エクセルのマクロ技術とかスゴイ人がいます)、技官は主に理系分野の専門を持ち技術的な話や研究に強みがあります。

課によって、その編成や人数配分は違っていて、私が過去に所属した課も、課のミッションによって全然違いました。
法律を作って国会に通すというのがミッションの課(いわゆるタコ部屋)の時は、法令の人が殆どで、技官と弁護士の出向者が少しでした。
特定のミッションがあって新しくできた課の時は、法令の人はおらず、技官がメインで、他に一般職と大学からの出向者で編成されていました。
その他、法令と一般職と技官が同じ割合いて、少し人事交流者がいる編成の課の時もありました。

なので、課によって国会対応をする職種も違い、ある程度得意分野は活かしますが、その課の文化や歴史やチーム編成で何とかやりくりして仕事を回しています。タコ部屋にいた時には、全く法律の読み方も答弁の書き方もわからなかったのですが、法令の人にオンザジョブで教えてもらいながら、国会答弁作成道場でひたすら法律を読んだり、毎晩夜な夜な答弁を作成しました。。

こういうアメーバ状のような役割分担を新しい課に行くとすぐに理解して、自分の役割を理解して、知らないことは誰に聞けばいいのか、どういう案件を誰に仕事をふったらいいのか、ということを長年霞が関で仕事をしている人たちはすぐに理解して、すぐに車輪の一つとして働きだせるのはスゴいスキルだなあと感心します。

それぞれの職種の特徴が良く出ているな~と思ったことがあるのですが、
ある日、課長が法令、一般職、技官の人をそれぞれ一人呼び出して、打ち合わせをしたのですが、課長が
「こういうことやろうと思うんだけどどう思う?」と聞いてきて、
その時のそれぞれの反応が、
法令「この文章のここを少し直していいですか?これをやる法的根拠を少し探させてください」
一般職「これくらいの作業量なら、エクセルでチャチャッとできるので大丈夫です。いつごろにやりますか?」
技官「へ~面白そうですね。ただ、この集計法だと統計的に検証するのが難しいので、もう少し細かく集計したほうがいいと思います」
でした。
みんな前向きに検討できるいいチームだなあ(ある意味ノリがいい…)と思ったんですが、見事に興味を持つところが違うなあと内心思ったところです。

ということで、実は色んな職種やバックグラウンドの人がいて、お互いの仕事を尊重して自分の役割を果たすと、いいチームワークができて、あっという間に仕事が進む、(逆に言うと自分だけでは仕事が進まない)霞が関の仕事はチームワークだなあと思う今日この頃です。