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【国会の楽しみ方③】霞が関の人がお伝えする、国会答弁で何を伝えようとしているかわかるワザ

今まで2回にわたり、国会面白いよ~とお伝えしてきましたが、国会観戦の醍醐味の一つは、自分たちの生活に直接影響してくるかもしれないことが話あわれているところかと思います。
まさに他人ごとではなく、自分ごと!

でも、国会でのバトルって結局何言ってるかよくわかんないし、答えもあいまいで、結論言わないで濁すよね~というイメージを持っている方も多いかと思います。

実は、ちゃんと結論言ってるんですよ!
そして、聞かれたことは基本答えとります。

ただ、答弁のお作法を知っていないと、じゃあどうすんねん!何が言いたいねん!とツッコミ入れたくなるくらいわかりにくく、日常用語とニュアンスが違います。

ということで、今回は、霞が関の人になって数年の若輩ですが、1つの大きな法案審議の経験を踏まえて、官僚の答弁の書き方講座、ひるがえって、答弁の内容からのメッセージの読み解き方講座をしたいと思います!

そもそも、国会答弁ってどういうプロセスでできてるの?という疑問は、非常に長~い説明になるのでそれは別の機会に書きたいと思います。
(↓別の官僚の方が書かれた国会のプロセスがとっても詳しいので、早く知りたい方はご参照を。というかこれを読めば、私の解説は要らないと思う…)
「現役官僚おおくぼやまとの日記」




今回は、国会答弁の書き方、読み解き方のみを解説していきたいと思います!

まずは、国会議員からの質問に誰が答えるかで書き方が違います。
1. 総理大臣 ←最終の意思決定権者
2.大臣、副大臣、政務官といった人(閣僚)←その議題の意思決定権者
3.官僚(局長級。実質の事務方ナンバー2)←実務担当

1、2については、細かい数字とか細かい政策の中身を説明は省きます。その質問に対して、どう認識していて、どうしていくか、というザックリとした方向性がメイン。偉くなるほど、答えは詳細なことは言わず、ざっくり大局を説明するようなものになります。
3については、政策の詳しい内容、数字、その事業の意義、たまに方針を答える答弁を書きます。

大臣と官僚の役割分担として、国会の楽しみ方①にも書いた通り、大臣や閣僚はピッチャー、官僚は守備なので、役割分担をイメージして作成します。
まあ、大臣がホント細か~い数字とか答えていたら、「なんでそんな担当の係員しかわからないようなこと知ってんの?」っていう違和感にもなりますしね。。。その数字がとっても重要な意思決定に係る数字なら、大臣も答えますが。。。

また、だいぶ昔は、国会答弁は官僚が意思決定、政策の方針も答えることが多かったようですが、政治主導の政策立案という立て付けになってきて、官僚が大きな意思決定について答える機会は少なくなったようです。

私がオンザジョブで習った答弁書き方のコツとしては、
質問が、例えば「〇○について政府としての考えは?」であれば、

(最初)
質問が曖昧だったり、正式な用語と違ったり、いろんな解釈ができるものだったりすることがあるため、「あなたの質問に対して、私はこう質問されていると解釈しましたよ」という、正式な用語に置き換えたり、言葉の定義をする。こちらの認識を書くこともあります。
例)
「〇○については、〇○の〇○と認識しております」
「〇○については、〇○と承知しております」

(中盤)
聞いているほかの人にもわかるように、政策の内容や、どういう法律に基づいて行っているか簡単に解説。官僚が答える質問であれば、細かく、どういうことをやっているか、数字はどうだ、と説明していく。ファクトが多い。
例)
「〇○は〇○を目的として、〇○に基づき、~や~、~などの取組を行っています。〇○年には〇○件、〇○年には〇○件・・」
「〇○と現在、〇○しているところです」

(後半)
ここが結論!フィニッシュです!
例)
「いずれにしろ、政府としては、〇○してまいりたい」
「〇○について、〇○等を考慮しながら検討してまいりたい」
「〇○は重要と考えますので、今後も引き続き取り組んでまいります」
「政府としては、慎重な議論が必要であると考えます」
「政府としては、〇○の意見があることは承知している。引き続き議論を注視してまいりたい」
「政府としては、〇○ということが重要であると考えます」
「〇○であるという意見があることは承知しております」

これらの違いのニュアンス、わかりますか??
なんと、質問に対して、上3つが「前向きにやる」と言っていて、下4つが「やる気はないです」と言ってるんです…

日本的美学なのか、はっきり「イエス」「ノー」を言うことは滅多にありません。「そんなの必要ありません」「あなたの言ってること意味不明なので、良く分かんないけど、それ、やる意味ないからやりません」「それいいっすね。絶対それやりますわ~」という白黒はっきりした答弁は聞いたことがないですね。。

でも、「してまいりたい」「検討してまいりたい」まで言っている答弁は、イコール日常語では「やります」くらい、割と確実に前向きな回答です。
「検討、検討ばかり言って、検討しているだけでやらないよね~」
とこの業界じゃない知り合いからたまに言われたりするんですけど、たぶん、その先の結果までフォローしていないからそう思うのだと思います。時間がかかっても、「検討する」と言ったことは、ちゃんとどこかで検討の場を作っていて、その合意形成の中で少しトーンが落ちることはあっても、基本的に「やる」という方向で動きます。

私なりに、国会答弁の書き方は論文の抄録を書くのと似ているなあ、と思っていて、論文の定型フレームである
Background (背景)= 答弁の場合は政策の背景、言葉の定義
Purpose of the study(研究の目的)= 答弁の場合は政策の目的
Result (結果)= 答弁の場合はどんな事業をしているかその数字
Conclusion& implication (結論と提言)= 答弁の場合は結論と今後の方針
という感じで置き換えて書いています。
たぶん、どの業界でも、プレゼン資料とかあると思うのですが、そういう構成と置き換えて考えると、あなたも明日から国会答弁が書けます!

ということで、重要なのは最後です!
最後にどういっているのか、ちょっとニュアンスがわかりにくいですが、「検討します」まで答えていたら、質問した国会議員にとっては「ひゃっほ~~~い!」っていうくらいヒット飛ばした感じだと思います。(細かく言うと、与党と野党で嬉しさは違うと思いますが。。。与党は仲間なので、「ですよね。知ってます」位の気持ちかもしれません)

今回のコラムの結論
・何が言いたいかは、最後に言っている!
・「検討したい」はだいぶ確固たる前向きメッセージなり。

です。国会を観戦した時に、あ~なるほどね~と意図をくみ取ってもらえるとうれしいです。
(そもそも、外国みたいにバシッとなんで言えないのかは、わかんないです・・・)

(余談1)
ほかにも、細かいコツというか、色々とお作法があるのですが、
例えば「等」を意味なく乱発していると思われがちですが、「等」は何が含まれているかちゃんと考えて「等」としていて、1つか2つしかないことだったりすると、「等」は付けずに言い切りしています。そういう答弁の書き方は下記の書籍が詳しいです。全部覚えられませんが、細かい参考になりました。

(余談2)
法案審議になると、何週間、何か月もの間(私が経験したのは約3か月でした…)、ひたすら深夜まで答弁を書き続ける毎日になってくるので、日常会話がおかしくなってきていました。。。
「〇○どうする?」を「〇○について、如何(いかん)?」って言ってみたり、
「〇○って何?」を「〇○について、承知していないが、▲▲については…」と小難しく答えたり、とちょっとナチュラルハイ状態でしたね。。
もうできれば2度と経験したくないけれど、国会答弁スパルタ塾な毎日でした。。(懐かしくもない!もう嫌だ!)

(注意)
これは、私の主観なので、省庁によって書き方も若干違うと思いますし、最終は答弁をする人と相談して内容を決めるので、大臣によって結構カラーが実は出ていると思います。。。