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【霞ヶ関の人の生態⑮】政策ってどうやって作られてんの?未来についてみんなで語ろう。(その1)

ふだんニュース見ていると、色んな政策が発表されますよね。
特にコロナになってから、
「マスク2枚!」とか「Go to ○○」とか、思わず「は???」と思う政策もあると思います。
霞の中に入って知ったのは、政策には色々なプロセスで作られていて、え~~マジで!と思うことが、あっという間に決まったり、霞の人がこれは本当に思いが詰まっていてぜひ叶えたい!と思うことが、なかなか進まなかったり、決まっていたことがゲシュタルト崩壊したり、と色んなことがおこります。
ある意味、民主主義の醍醐味というか、色んな対立する人たちがガチンコ勝負して、勝ったり負けたり、折り合ったりしながら、合意できるいい塩梅を探す、リアルファイトクラブを毎日体感できる職場です。

私の短い霞生活でも、色々な政策の作られ方を見てきましたが、そのいくつかを紹介したいと思います!

大きく分けて、トップダウンとボトムアップがあります。
トップダウンは、まさに急転直下降ってくるオーダーです。ボトムアップは、霞の中の人が、じっくり温めて育てて仕上げる政策です。
基本的にやっていて楽しいのはボトムアップですが、トップダウンでもこれはとても大事だと自分でも思えることは楽しいです。
長く霞が関にいる先輩方からすると、昔はボトムアップで自分たちから発信できることが多かったけれど、今は上から降ってくるので精一杯になっている…と嘆きのコメントをされることが多いです。

確かに、ボトムアップで何か事業をやった時に、
「これは誰に言われてやったの?」と国会議員や記者に聞かれることもあり、
「いえ、特に外圧があってやっていることではないです。」
というと、「へ~?」みたいな反応が来たりします。
そのたびに自分たちで考えちゃダメなん?と不思議な気持ちになります。

今回はボトムアップで作る政策のお話をしたいと思います。

政策も大きいのも小さいのもあって、お金も労力もかからないけれどインパクトのあるものから、どどん!と法律も変えなきゃいけないし、お金もたくさんかかるのもあります。
新しい政策の種をまくきっかけは色々あり、「来年度予算を考える時」「定期的な法律の見直しがある時」「来年度の研究を考える時」「世論が高まっている時」「なにか事件が起こった時」かな~と思います。でも、世論や事件はだいたいトップダウンでドドンと急に降りてくるので、ボトムアップにはなりにくいです。自分でネタを常に考えておいて、ここぞ!という門が開いた時に、エイッ!と打ち込む瞬発力とチャンスを狙うアンテナを立てておくが大事です。

ボトムアップの政策を考える時に、誰がきっかけを作るのか。
これは頑張れば誰でもできます。係員でも種まきはできます。
普段仕事をしている中で、色々な人から話を聞いたり、質問をされて考えるし、視察に行ったり勉強したりと情報は嫌というほど集まってくるので、その中で自分が思うことを周りの人にぶつけます。周りには現場から来た人もいるので、「そうだよね」という共感が得られたら、次は上司の課長補佐、課長、局長と順番に説明していきます。
その中で共感してもらったり、足りないところを指摘してもらったりしながら洗練されていきます。
もちろんうまくいかないこともいっぱいありますが、「いいね!」となると、どんどん話が進んでいきます。
私は経験者採用なので、「ここが変だよ!ここがこうだったらいいのに!」を考えるのは得意なんですが、じゃあどういうプロセスで実現するの?という霞が関のやり方は経験不足なので、周りのベテランさんに聞いたり、上にあげていく中で相談しながら決めていきます。
「これくらいだったら通知を出したら大丈夫」というものから、「これは有識者を集めて、検討会をしないと」「法律を改正するきっかけに入れ込もう」「来年、財務省からお金を取った来なきゃ」というものまで、色々です。

下々のものにチャンスがやってくるのは、課長や局長といった上司が
「こういう課題があるから、これについてみんな何か考えて!」と結構ざっくりなオーダーが降りて来た時に、今まで温めていたアイデアをぶち込めるチャンスです!
そこで、局長や課長の心に刺さるアイデアを出せたら大成功です。

要は共感してもらう力!なんだなと思います。

それは大事だな、なんとかしなきゃいけない問題だな、誰もが思う課題があって、それにフィットする、課題解決のアイデアがあって、が第一段階。


そのアイデアを実現するのに、自分たちの課でできることなのか、全くできないのか、他の部署と協力し合ったらできることなのか、どこまで実現可能か、などなど検討して、他の課にわたる話は、下っ端だけでは話が付けられないので、その時は管理職の登場です。
そして、実現できそうな案にしていき、予算案の中にぶち込んだり、第三者の会議を作ってそこで専門家に意見をもらったり、研究としてやってもらったり、モデル事業としてやる気のある自治体に試しにやってもらったりしながら、数年かけて温めて成長させていきます。その間には、専門家だけでなく、政治家や当事者団体、色んなステークホルダーに揉まれながら、現実に即した形になっていきます。そして、数年かけて花開く感じです。

わたしが霞が関に来て間もない時に種まきに関わった政策案が、専門家の検討会を経て、法律改正をし、モデル事業をやって、システム改修の予算をとって、来年の1月とうとう全国展開として花開きます。足掛け4年です。これはその課の課長がアイデアの発端だったのですが、現場にいた者として意見を言ったり、技術職として色々なデータを分析したりして、楽しかったなあ。

その時に同じ課だった人たちはもう既にバラバラの課になっているのですが、久しぶりに数人で集まってランチをしました。
しみじみと
「あ~あれついに来年だね~」
「あれから、毎年どうなっているかネットでチェックしているよ」
「いちかさん、課長にめっちゃ意見してましたよね~」
「いや、あの時は、組織ってものがあんまりよく分かってなくて…><」
「課長、忙しくてぎっくり腰になってたよね」
「あの生き字引の○○さん、あんな濃いキャラの人初めてだった」
みたいな、懐かしトークができるのも醍醐味です。
同じ課だった人とも1~2年でバラバラになっちゃう職場ですが、ふとした時に会議であったり、エレベーターで見かけたりすると、お互いあの仕事は忘れてないよ、個人的に見守り続けてるよ、って確認しあえるのは嬉しいなと思うところです。

今の課でも種まき中です。
今の課長が「10年後、50年後の未来を考えて、やっていこう」と言ってくれているので、爆弾のように案件が降ってくる毎日だけど、これは地味に着実に育てていけるといいな。