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【霞ヶ関の人の生態⑩】思わず惚れてまうやろ!と思った霞が関の人のセリフ

相変わらずドラマ「空飛ぶ広報室」にはまり中です。ドラマはコンプリートしたので、次は小説を今週末読む予定です。ドラマの中でも柴田恭兵演じる航空自衛隊広報室の鷺坂さんという室長、仕事への姿勢も部下への暖かいまなざしも超絶カッコいいです!こういう人によって、自分の人生が変わるんだろうな、と思います。私も、出向で霞が関に来て2つ目に配属された課が本当にやりがいもあって、職場の同僚も尊敬する人が多くて、正式に転職することを決めました。

ということで、今回は別のところで書いた転載にはなるのですが、職場でめちゃくちゃカッコいい!と思った同僚や上司について再掲します。(以下、プロの人の編集が入っているので、書き方がいつもと違います)

(以下ほぼ過去の転載)

霞が関で働く国家公務員。いわゆる「官僚」とひとくちに言っても、実際にはいろんな人がいるもので。でも、全体的にカッコイイ人が多い気がします。(見た目ではなく、仕事の姿勢が)

さて今回は、思わず惚れてしまいそうになった同僚のエピソードを紹介します。

まず、前おきとして、わたしは霞が関で働いている女性ですが、もともとは医療職の地方公務員でした。わたしの周りにいた同僚に対するイメージはあまりポジティブなものではなく、やるべきことはきちんとやるのですが、新しいことに対する拒否感が強く、「現状維持が最大の美徳。言われたことをキチンと執行し、仕事は増やしたくない」という人が多かった気がします。まあ、本庁ではなく、上から言われたことを執行する一番末端の現場にいたからかもしれませんが。。。(※現在のコロナ対応での仕事の仕方が凄まじい状況だと認識しています…)

ということで、霞ヶ関の人になったばかりの頃は、新しい同僚にもまったく期待していませんでした。

「国で働く公務員も、基本的には同じだろう」と 。

それがいやいや、そうでもないぞと、思わず惚れてしまいそうになった霞ヶ関の人のエピソードを3つ紹介したいと思います。
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惚れたセリフ❶ 「法律がダメなら、法律を変えればいいじゃない」

これは、霞ヶ関の人になって間もない頃の話です。わたしは医療現場で働くことが長かったので、医療の現場経験を政策に活かすのが主な仕事です。新しい政策を考えたり、今ある政策が現場でどう生かされているか、どういう風にしたら適応できるか意見するのが求められている役割でした。

現場にいると、現実に即していない規則がけっこうあるんです。「こうすればもっと効率がいいのに」「何でこんなことをしなくてはいけないの?」と思うことばかり。上司や先輩からは「決まりだから」「そんなもんだから」と言われ、我慢をしなくてはならないことだらけでした。

そんな中、霞ヶ関内の打ち合わせで「法律のある制度がうまくワークしておらず形骸化している」という話をした時、課長がいともあっさりと言ったのです。

「そんなダメな法律なら、法律を変えればいいじゃない」

目から鱗というか、本当に驚きました。

「えっ、法律って変えられるんだ!」

法律は絶対で、従わないといけないと思い込んでいたのに、規制する側の国の役人はこんなに柔軟に現場に合わせようとしていたんだ!

これは衝撃でした。自ら変わることを恐れない。大変なことであっても、頑固な現状維持ではなく柔軟な最適化を目指す姿勢に、グッときた経験でした。国の役人の仕事が魅力的に感じる理由のひとつは、そういった変化をむしろ歓迎する姿勢の人がいるからかもしれません。

【カッコイイ要素】変化を恐れない柔軟な姿勢

惚れたセリフ❷ 「理由がわからないのに謝れません」

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これも、エピソード❶と同じ課長が登場します。

外部の重鎮である利害関係者との打ち合わせでのこと。わたしが資料を説明するうちに、重鎮さんが急に怒り出してしまいました。

「この資料は誰が作ったんだ! 何もわかってない! A局とはやりとりしていないのか!!」

資料を突き返し、「謝れ!!」と言い出しました。もう青天の霹靂で、怒りの意味もわからず、ただただ驚きました。そして資料を作ったのは… わたし。

何が怒りのポイントかもわからないので、尋ねても「勉強不足だ!」と言われるばかりで理由はわかりません。

みんながあたふた困惑する中で、課長が口を開きました。

「資料は、わたしが作りました」

普通で考えると、課長が資料を作るはずもありません。重鎮さんは明らかにわたしかそのもっと若手を狙って攻撃してきたので、重鎮さんも「課長が作るはずがない」と思っています。

しかし、重鎮さんも恫喝した手前、引くに引けないのか

「謝れ!!! 課長を辞めろ!」

怒り沸騰です。

たぶん、穏便に済ませるには、とりあえず「すみません。勉強不足でした。以後気をつけます」くらい言って場を納める。その辺りが大人の処世術なんだろうなと予想していたところ、違いました。

「理由が分からないのに、謝れません」

しばらく沈黙の後、また先方が「謝れ!」と何度も言ってきます。しかし、怒りの理由はわからないまま。何度か「謝れ」「理由を教えてくれ」のやり取りをくり返した後、結果的に決別したまま打ち合わせが終わりました。

その後、A局にどうしてそんなに逆鱗に触れたのか聞きに行ったところ、「重鎮さんのお気に入りの言葉を使っていなかったから」ということがわかりました。あまりにも理由にならない理由だったから、言えなかったんですね…。

課長の返答は、処世術的にはヘタなのかもしれませんが、管理職として矢面に立って部下であるわたしたちを守ってくれたこと、納得いかなければ折れないという毅然とした確固たる態度に本当に感服しました。

【カッコイイ要素】部下を守る。流されない強い信念。

惚れたセリフ❸ 「必要なことだから大丈夫です」

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これは同僚のエピソードです。急遽、アンケートをかなりの大規模で実施しなければならなくなった時のこと。集計が大変なので、どこか外部業者にお願いしようということになっていました。

職場はいつも人手不足。同僚は毎日資料に埋もれて残業三昧、ひいた風邪もなかなか治りません。そんな中、集まったアンケート結果を見たときに、予想以上に複雑で、そもそも専門用語を知らなければ分類できない、集計が難しい、ということがわかりました。これは外注するのは日程的にも技術的にも難しいかもという状況です。

どうしよう… その時、青い顔した同僚が切り出しました。

「やります。外注するのは厳しいので」

システムを組んで、集計できる技術を持っているのは、その同僚ともう一人しかいません。でも、すでに完全なるオーバーワーク。多くの公務員のメンタリティは「できるだけ仕事を増やさない」ことだと思っていたので、その返答には思わず耳を疑いました。

「ええっ、大丈夫ですか?」

「必要なことだから、大丈夫です。必要じゃないことを無駄にやるのはイヤだけど、これは大事だと思うので大丈夫です」

という返事。日ごろ青ざめて疲れている同僚の中に、こんな芯の通った思いがあるのかと驚かされました。

国の役人の残業代は、全額は出ません。予算に限りがあるという理由です。明らかにオーバーワークになっている同僚は、これ以上残業しても残業代が出ないのは本人もわかっています。

結果的にアンケート集計は期日内にできあがり、重要な資料として会議に出されました。これは「霞ヶ関の役人は、わたしが今まで見てきた公務員じゃないぞ」といよいよ思ったエピソードでした。オーバーワークがいいことではありませんが、いざとなった時に身を投げ出してでも働く姿勢はほんとカッコ良かったです。

【カッコイイ要素】目立たないことも、いざとなれば自分を投げ出して取り組む姿勢

… 以上、これらのエピソードは一般の会社でも普通にあることかもしれませんが、「公務員」に対する期待値ゼロだったわたしにとっては、とても新鮮にうつりました。

たまにガッカリする人もいますが、「知的好奇心が強くて、変化を楽しみ、目立つパフォーマンスはしないけれど芯がある」、こういう人たちと仕事ができることが楽しくて、霞ヶ関にまだいようと思うのです。

【追記】最近のコロナ対策として多くの同僚がコロナ対策に配属されていっています。自ら志願する人もいれば、引き抜かれていく人もいますが、普段はホワホワしてて大丈夫かな~と思う人も、急にシャキッとして覚悟を決める姿に、改めて敬意を感じています。いない人の穴埋めのお留守番しかできていないけれど、帰ってきたときに困らないようにやんなきゃな、、、、

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霞いちか@霞が関の国家公務員
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