嘘日記10/13

暑さも収まってきて絶好の散歩日和になったので今日は近くの山に紅葉狩りに行くことにします。久々の狩りですからね、準備は入念に行うことにします。弓矢に双眼鏡、地図にコンパス、強撃ビンと調合素材の空きビンとニトロダケ、ぬかりはありません。山を登り始めると少しずつ汗ばみはめましたがむしろ風のおかげで心地良いぐらいです。
紅葉の生えている地帯に着くと弓をとりだし矢をつがえ、どんどん打ち落としていきます。順調に狩りは進み、矢を撃ち尽くしたので帰ろうとしたそのとき、木の根元に白髪で白スーツ姿の老人が倒れているのを見つけました。
地面に倒れていながらもなお、気品と威厳あるその老人はまさしくカーネル・サンダースその人でした。

「大丈夫ですか?!」
「ああ、野盗に襲われてね。まだ近くにいるはずだ、すまないがかたきを討ってくれないかい」
「それよりも、治療を」
「なに、たいした傷ではない。少し休めばそれで十分だ。それより彼奴らが遠くへ逃げないうちに追ってはいただけないか?」
「もう矢を撃ち尽くしてしまいました、武器がないのです」
「それならこれを持っていくといい」
そういってカーネル・サンダース翁はどこからともなく120cmはあろうかという巨大なフライドチキンを取り出して私に手渡しました。
フライドチキンは受け取るとずっしりと重くそれでいて持ち手は手に馴染み、十分武器として使えそうです。
「彼奴らは滝の方へと向かっていった。もしかしたらアジトがあるのかも知れん、危険なお願いで申し訳ないがよろしく頼む」
「ええ、任せてください」

カーネルサンダース翁の指さした方へと向かうと翁のいった通り、滝の近くに小さな小屋が建っており、ちょうど三人がその小屋へ入っていくのが見えました。小屋の近くの茂みに身を潜め、機をうかがっていると小屋から一人が出てきて滝壺で棍棒についた血をを洗い落し始めました。相手はこちらに気づいていませんし滝の音に足音はかき消されるはず、今なら気取られることなく一撃を浴びせることができます。近づいて背後から後頭部を巨大フライドチキンで殴りつけます。その男は鈍い音とともに吹き飛び、大きな水音あげました。素早く小屋の出口に近づき様子を見にくるであろう残党を待ち構えます。思惑通り一人が顔を出した瞬間にフライドチキンを振り下ろし、そいつを地面に伸してしまいます。残るは一人です、いきなり知らない人が自分の部屋に巨大なフライドチキンを持って入ってきたら正常な判断などできるはずもありません。最後の一人も容赦なく壁にたたきつけられ意識を失いました。仇討ち完了です。カーネルサンダース翁の元へ報告しに戻ると大分容態も回復したようで二人で山を下りました。別れ際にお礼としてそのフライドチキンをあげようと言われましたが置く場所がないのでと断ると翁は少し残念そうな顔をしまして振り向き、去って行きました。

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